キーワード①『カレンダー』
イチゴの家に来るのはこれで4度目だが、いまだに緊張する。なんとなく居心地が悪いのだ。
イチゴが「飲み物とお菓子を用意してくる」と言って部屋を出てから手持ち無沙汰だった俺は、なんとなくぼーっと壁紙やベッドの周りなんかを見渡していた。
その中で、ベッドと壁の隙間にカレンダーが挟まっているのを見つけた。俺が先々週くらいに大学であげたものだった。
そのカレンダーは福引の景品で貰ったもので、今どき紙のカレンダーなんか要らなかったのでイチゴに渡したのだ。
そこに落ちているということは、やはりイチゴもカレンダーはスマホで事足りているのだろう。
恐らくカレンダーの存在も忘れているだろうし、今のうちに回収して帰り道でコンビニにでも捨てよう。
そう思いカレンダーを手に取ると、途中のページが浮いているのに気がついた。開けてみるとそこは今月のページで、今日のところには「○○くん(俺の名前)とおうちデート♡」と書かれていた。
なんだ、使ってくれてたのか。見られるのが恥ずかしくて咄嗟にここに隠したのか? 可愛すぎるだろ。
明後日から10月だけど、もしかしたらもう次のデートの予定を書いてたりして。見てみるか⋯⋯
その時だった。
「○○く〜ん」
イチゴが戻ってきた。戸の向こうにいるようだ。
「なに?」
「ごめん、今お盆持ってて⋯⋯開けてくれる?」
「わ、分かった!」
俺はカレンダーを元の場所に戻し、戸を開けた。スルメとバナナシェイクだった。ナシよりのナシだった。
それから1週間後、俺はまたイチゴの家に来た。そして、あの時と同じ場所にあったカレンダーを、同じような流れで手に取った。
10月のページを開いた瞬間、息が止まった。
『○○くんのお通夜』
今日の日付にそう書いてあったのだ。なんだ? イチゴのやつ、俺に恨みでもあるのか?
腹が立ったので、カレンダーを持ってイチゴを問い詰めに行った。
「えっ⋯⋯なにこれ、私こんなの書いてないよ!」
しらばっくれようとするイチゴ。
「そんなわけないだろ?」
「本当に知らないの。貰った日にどっか行っちゃって、存在自体忘れてた⋯⋯」
「そんな⋯⋯じゃあ、これは一体⋯⋯」
「呪いのカレンダー⋯⋯とか?」
「何言ってるんだ、バカバカしい」
まったく、気味の悪いカレンダーだ。
せっかくの雰囲気が台無しになったので、帰ることにした。
家を出てすぐのところの歩道を歩いていると、軽トラが猛スピードで突っ込んできた。
華麗に避けて普通に帰ったよ。