第31話 手を繋いで
最後にお知らせがあります。
「ソフィ、着いたぞ」
「あ、ええ……」
そんなことを考えていたら、もう屋敷に着いたようだ。
ずっと眠っているレベッカを起こすと、彼女は少し慌てたように目を覚ます。
「す、すみません、眠ってしまいました……!」
「大丈夫だ、よく眠れたか?」
「は、はい」
「それならいい。ほら」
アランが馬車から降りて、レベッカに手を差し出す。
少し驚いたレベッカだが、恐る恐るその手を握って降りた。
「あ、ありがとうございます、お父様」
「ああ」
レベッカが降りた後、アランはすぐに私の方にも手を差し出してくれた。
「ソフィ」
「ええ」
私も彼の手を取って、馬車から降りる。
目の前にアランが立っていて、その隣にレベッカがいる。
「では、私達の家に入るか、二人とも」
「ええ」
「はい!」
アランの言葉に、私とレベッカが笑みを浮かべて頷いた。
三人で揃って、家に帰る。
これだけで家族な感じがする。
いえ……もう私達は、家族なのね。
レベッカと仲良くなって、アランとも仲良くなった。
私が最初にきっかけを作ったかもしれないけど、私だけの力ではこの関係を築くのは無理だった。
レベッカもアランも、家族になりたいと望んでくれた。
予知夢でレベッカが愛を求めていたことは知っていたけど、まさかアランともこんな良い関係になれるとは思わなかった。
私は家族には恵まれていなかったけど、レベッカとアランと家族になれた。
予知夢を今見たら、レベッカは将来、悪役として破滅することはないかしら?
とても気になるわね。予知夢はとても便利だけど、狙って見られないのが残念だ。
いつかレベッカの未来をまた見た時、笑っていたらいいわね。
そして、私とアランの関係は……こ、このままでいいわ、ええ。
高望みしちゃいけない、今でも期待以上に仲良くなれているのだから。
隣にいるアランの顔を見つめる。
「ん? どうした、ソフィ」
「……いえ、なんでもないわ、アラン」
あの時の夢と同じように、私を愛称で呼んで敬語なしで喋るのを許してくれたアラン。
あまり期待しないようにしたいけど……全く期待しないというのは、難しい気がする。
だけど契約で「アランを愛さないこと」とあるから、破らないようにしないと。
それを破ったら家族ではいられなくなるから。
「お父様、お母様……その、また手を繋ぎたいです」
レベッカが恥ずかしそうに言った言葉に少し驚く。
しっかりお願いごとを言えるようになって、しかもそのお願いごとが本当に可愛い。
私とアランは顔を見合わせ、微笑んでから頷いた。
「ええ、もちろんよ」
「あ、ありがとうございます……!」
「ああ、家に入るまでの短い間かもしれないが」
「それでも嬉しいです!」
レベッカが私とアランの間に入って、手を繋いだ。
レベッカが満面の笑みで喜んでいて、アランが口角を上げて優しい笑みを浮かべている。
未来で私とアランがこのままいい家族を維持しているのか、それとも深い関係になれるのかはわからないけど……。
家族だということは変わらないでしょうね。
「だがレベッカ、私もソフィと手を繋ぎたいのだが」
「ア、アラン!?」
「えっ、そうなのですか? じゃあ輪になって手を繋げば……!」
「それは妙案だな、レベッカ。家までの短い間なら問題ないだろう」
「いやいやアランも何を言って……えっ、本当にやるの?」
そして、本当に三人で輪になって玄関まで歩いた。
私達は何をしているんだろう、と思ったけど……レベッカが幸せそうに笑っていて、アランが真剣な表情で後ろ向きで歩いているのを見て。
私の頬は勝手に緩んで、笑みが零れてしまっていた。
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