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[超短編] 5分でキュン♪

恋をするのに ランドセルは邪魔者です!

作者: まえのそら

ランドセル は、小学生にとっての装備。

邪魔な装備を外した時、やっと好きな人との時間が始まる。


小学5年生の頃、私には日課があった。下校途中に、友達との分かれ道で宿題をするというものだ。

その分かれ道には、小さなお地蔵さんが居て、広場みたいな所があった。ど田舎の丘の上にあり、車もほとんど通らない。たとえ通るとしても、下から登ってくる様子が先に見えたので、アスファルトに並べた宿題も、すぐさま片付ける事ができた。


いつものメンバーは、6年生のお兄ちゃんとお姉ちゃん、同級生のまことと、私の4人だった。6年生のお兄ちゃんは、誠と兄弟だったから、最初は気まずかったけれど、すぐに打ち解けた。


私達は分かれ道に着くとすぐ、重いランドセルを地べたにドサっと下ろす。ランドセルを下ろす事で、何か装備が外れたみたいな、自由になった気がした。


「 タータッタ タタタタ…… 」


5時のチャイムが鳴り始めた。

誠は乱暴にノートにプリントを挟むと、そのままランドセルに詰め込んだ。

最近の誠は、なんだかぎこちなくて、わたしを避けているように感じていた。


無理もない。6年生が卒業してからは、2人きりの時間がなんだかむず痒く、私も誠との距離を計りかねていた。それでも、私が変わらずこの場所で誠を待っているのは、誠の事が好きだったからだ。


「 おい! なんか、最近きまずいな! 」


帰りがけ、ランドセルを背負うと誠が唐突に言った。


「 そうやね…… 」


私は、ボソッと答えた。


「 じゃあ、ここで宿題するの、もうやめるか?! 」


心臓がドクッと驚いた。


「え……? 私は、誠とこうやって勉強するの楽しいけど…… 」


先に立ち上がった誠を見上げながら、私は言った。誠の顔は急に真っ赤になって、そっぽを向いた。


「 俺もじゃけぇ。それなら、ええけど…… 」


そう言いながら、誠は私のランドセルを持ち上げると、立ち上がった私の肩にせおわせた。


お互い「 付き合おう 」とか、そんな言葉は交わさなかったけれど、毎日友達と別れると、決まってあの分かれ道で一緒の時間を過ごした。


「 もう寒くなってきたね 」


秋の冷たい風が吹く頃には、もう日が暮れるのが早くなっていた。


寒そうに両手を擦り合わせていた私の手を、誠が両手でギュッとおおった。同じくらいの大きさの誠の手は、私の手を全然おおいきれていなかった。それでも、すごく暖かくてドキドキした。


それからも帰り道、たとえいつもより早く出会ったとしても、誠は手を繋ごうとはしなかった。


それは決まって、ランドセルを降ろしてから。

私達の装備を外してからだった。



少しでもお楽しみいただけましたでしょうか?

よろしければ、ページ下★★★★★

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