第072粧 兄さまの膝枕サービスタイム
ノワールの中の人が実は男の子だったことを知ったヒナタちゃんは、目が覚めると今度は終始私の後ろに隠れっぱなしになってしまった。
なんか小動物に懐かれてる感じがするなー。リスかな?
対して兄さまは、不機嫌そうな表情をしていた。
兄さまってば、ヒナタちゃんから離れたいって散々言ってたけど、結局離れると寂しいのかな。
寂しがる兄さま、可愛いね!
……なんてウォルターに話したら。
「君は能天気だな、ノワール」
と言われた。解せぬ!
それはさておき。
こうして囲まれていると、なんだかちっちゃい子たちの面倒見てるみたいで、楽しい気分になる。
そう言えば、小さい頃は兄さまやガイアスに引っ付かれていたような気がするなあ。
今では頼りがいのある兄さまだけど、たまに思い出すと少し微笑ましくなる。
オプスはあの後どっかに行っちゃったみたいで、いくら探して名前を呼んでも姿を見せてこない。
念じてみれば来るかも? と思ったけど、なんの成果も得られませんでした。
黒の神子の使い魔みたいだし私はまだ力に目覚めてる気配がないので、ピンチのとき以外は具現化しないのかな?
残念ながら騒ぎがあったことで、今日のお出かけは即終了。
すぐに解散することになってしまった。
駄犬くんは本来の使者であるウォルターに任せて、私たちはヒナタちゃんを寮に送り届けた。
ハウザーオススメのカフェで、今日頑張った自分へのご褒美に甘いものを沢山食べようと思っていたのにー。
甘いもの食べられないなら、だいぶ動き回って疲れたし今日はもう寝るんだ!
本日の営業は終了しました!!
なんて思っていたけど……。
普段は令嬢らしくと言う兄さまに、怪我を見せろとしつこく迫られております。
「ほら! なんともないでしょ!」
「……ああ」
部屋で服の破れた部分を見せて、やっと兄さまを安心させる。
「擦り傷もないんだよ! 服が破けただけで、ギリギリセーフ! 私すごく頑張ったんだから!」
「お前に怪我がなくて良かった……」
「兄さまったらずーっとそればっかり。心配し過ぎだよ」
「し過ぎて当然だ。今日だけで、何回冷や冷やさせられたと思っているんだ……」
「そう言う私も、今日だけで何度くらい死ぬかと思ったかなー」
……って、うん? 今、兄さま何て言った? 何回冷や冷やした?
「え? 兄さまの前でそんなに失態したっけ?」
ヒナタちゃんにプレゼントすることになった薔薇のアクセサリーのこと?
「いや、何でもない」
「そう?」
兄さまは溜め息を付いて、ソファーに深く座った。
「とにかく、無事で良かった……」
「うん、心配かけてごめんね?」
この雰囲気だと、ヒナタちゃんと一緒に私のことを待っている間、ずっと心配かけたんだろうなあ……。
「ノワール、疲れただろう?」
「うん?」
――ポンポン。
突然、兄さまが自分の膝を叩いた。
はっ、誘われている!?
「膝枕、するか?」
「いいの!? あ、でも兄さまも疲れてるんじゃないの?」
今は普段通りに見えるけど、霧が晴れた直後の表情はあまり良くなかった。
「たまには、私が兄さまを膝枕するよ?」
「っ! 良いんだ、俺がしたいんだから」
両手を広げて甘えさせてあげるー! ってポーズをしたけど、目を逸らされてお断りされた。
ちょっとガッカリ。
「じゃあ、お言葉に甘えてー」
兄さまの膝に頭をダイブ!
そうすると兄さまは私の頭を撫でてくれる。
「ふっふふー」
「嬉しそうだな」
「幸せなので!」
「そうか、それなら良かった」
こうしているとすごく幸せ。
死なずに済んだってことをすごく実感する。
このまま黒の神子の力になんて目覚めないで、兄さまと一緒に平和に暮らしたいなあ……。
黒の神子と言えば、手のアザがどうなったのか確認しないと。
もし大変なことになっていたら、兄さまに見せると大騒ぎしそう。これ以上は心配かけたくないし、あとでこっそり見よう。
「眠そうだな。お休み、ノワール」
「おやふみぃ……」
兄さまの膝枕が心地良くて、私はすぐに眠りについた。
良い夢が見れますように!




