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第063粧 黒猫は雨でアイスのように溶ける

 歩いているうちに、暴れていた黒猫は大人しくなってきた。


 なんで暴れていたんだろう?

 もしかしてお腹が空いていて、今はピークが過ぎたのかな?

 今は食べ物持ってないから、兄さまと合流したときにおやつを上げないとね。


「確かこのあたりに……何かが……」


 何かが見えたあたりまで近づいて辺りを見回したものの、誰も見あたらない。


「うーん、気のせいだったのかな」

「にゃあ」


 首を傾げていると、黒猫が肉球でふにふにと私の腕を押した。

 うん、良い圧です……!


「何もないね。戻ろうか?」

「にゃー」


 気が済んだし、諦めてさっきの場所まで戻ろうと振り返ったとき。


「あれっ、雨……?」


 黒い霧がかかっている中、雨が降り始めた。


 と言っても、小雨程度だったのだけど……。


「ニャッ!」

「いつっ! なにこれ!?」


 肌がその雨に当たると、何故かピリッとした刺激を感じた。


 少し不快だったけど、痺れる程度なので放っておいても大丈夫だろう、と思っていたら……。


「フギャーーーーッ!!」

「えっ?」


 黒猫が絶叫し始めた。


 どうしたのかと思って黒猫の様子を見ると……。


「ええええ!??!? と、溶けてる!?」


 アイスの食べ頃がちょっと過ぎたような感じに、黒猫がとろーんと溶けかけていた。


 いやもう本当に、文字通り! 溶けてる!!

 耳なんか、ちょっと小さくなってるし!


「なんで? 猫って溶けるもんだっけ?? って、うひょっ!?」

「ニャア!!」


 雨を避けようとしているのか、黒猫が私の上着の胸元に入り込もうとする。


「いやいや、そこには入らないから! 例え男装してないときの私の自慢のお胸さまの谷間であっても、猫ははまらないから!」


 慌てて上着を脱いで黒猫にかぶせると、そのまま体を震わせて縮こまってしまった。


「ニー……」

「あっ、溶けなくなった」


 と言うことは、もしかしてこの雨が原因?


「私もピリッとするし、害のあるやつかな? いや、でも私は黒猫ちゃんみたいに溶けてないし……なんで?」


 この雨、ホラーすぎる!


 雨脚が強くなったら困るし、落ち着くまでは雨宿りも兼ねて一旦どこかの建物に入って避難した方が良いのかもしれない。


 そう思って顔を上げると、いつの間にか黒い霧の濃度が薄くなっていた。


 よく見てみると周囲がさっきよりも、いくらか見通しやすくなっている。


「うん?」


 一体、何があったんだろう。


 少しは状況が良くなったと思ったけど、他の人の姿が見当たらないのは変わらない。


「にゃあにゃあ」


 上着で雨よけが出来て満足したのか、黒猫が秘技肉球押し付け攻撃を再開する。

 この至福の時間、もっと続けば良いのに……!


 そう思ったとき、今度こそはっきりと視界に何かが映った。


 それは、誰かの後姿で……。


「あれは……駄犬くん?」


 うん、そうだ。あの髪、後姿は駄犬くんだ。


 なんだろう……少しふらついていて、具合悪そう。


 よくよく思い出してみると、駄犬くんにはすごく迷惑をかけられた。


 決闘のせいで兄さまと喧嘩したし、あの日はお昼ご飯を食べ損ねたし、関わって良いことは全くない。


 だけど、こんな不思議な状況の中で様子のおかしい駄犬くんを見かけてしまったからには、放って置けない。私は駄犬くんの後を追いかけることにした。


「ニャア!!」


 進むたびに雨が強くなって来ている気がする。


「っ……!」


 なんでだろう。

 皮膚が痛いんじゃなくて、左手が痛い……熱いような、気がする。


 黒猫を抱きしめる力が、自然とこもった。


 駄犬くんの尾行を続けていくと、彼は見知らぬ建物に入って行った。


 これ、入っても大丈夫かな。


 なんて考えながらも入ろうとしたところ、包んでいた上着から黒猫がするりと飛び出す。


 そして、建物の入り口の中央に着地すると、私を見上げて一声。


「にゃあ……」


 なんと!


 ノワールは黒猫に、通せんぼされてしまった!


 どうする?


 もちろん、抱きしめる!


「ぎゅーっ!」

「……」


 黒猫をぎゅーっと抱きしめたら、意外にも無抵抗だった。

 諦めの境地、みたいな表情をしているように見えないこともない。なんでや。


「雨も強くなってきたし、しばらくここで雨宿りしようか?」


 黒猫を抱っこしたまま直接地面に座る。

 男装していて良かった。令嬢の格好でもするけど!


「駄犬くんは、ここに何か用があったのかな? うーん、さすがに勝手に中に入るのは良くないよね……。でも駄犬くんの様子も気になるし……少し待っていよう」


 あんなにふらついていたから、誰も見ていないところで一人で倒れてたら危ないし。


 そう思った直後。


――ガラガラガラ、ガシャーーーーン!!


 建物の中から、すさまじい音が響いてきた。


「にゃ!」

「えっ?!」


 もしかして、駄犬くん倒れちゃったんじゃ!?


 そう思った私は慌てて立ち上がり、黒猫を抱っこしたまま建物の中に突入をした。

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原作担当コミック『小さな星《ひかり》のダイニング クチーナ・ルーチェ』pixivシルフ様にて連載中!
正反対な二人が送る、ファンタジーが舞台のダイニングでの優しい時間✨
よろしくお願いします~!
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