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第060粧 兄さま、男の娘になりたいの?

 店内に入ってもヒナタちゃんは店内をキョロキョロと見回しているだけだった。

 何を見たら良いのか、迷っているのかな?


 ちなみに兄さまは堂々と商品を見ている。


 さっきは否定していたけど、兄さまは男の娘を目指してないんだよね?

 ノーマルだよね?

 買うつもりないよね?

 少し興味があるだけなら、私のアクセサリ貸してあげるよ?

 それとも私になりきる演技の一環?

 だとすると、兄さまのノワールなりきり演技力がしゅごいんだけど!


 でもよく見て! 私をよくごらんになって、兄さま!

 普段から兄さまも言ってるけど、私そんな女子力高くないよ……!

 なので、兄さまが目指してるノワールって何!?


 それでもって、ヒナタちゃん放置かい!


 仕方ないので私は兄さまを横目に、ヒナタちゃんに話しかけた。

 もちろん、近寄りすぎると遠ざかられてしまうので、ちょっと距離は取ってる。


「ヒナタ嬢は、ここに来る前はアクセサリはしていなかった?」

「は、はい。イヤリングは耳が痛くなって、指輪は手作業するときに邪魔になるので、殆ど縁がなかったんです」


 ピアス穴も開けてないみたいだしね。

 なんで知ってるのかと言うと、ヒナタちゃんはたまに髪を耳にかけるような仕草するから、そのときにチラッと見えたので。


「それに、私が似合うものなんて、ないと思うんです」

「そうかな? ヒナタ嬢がそう思っているなら、似合いそうなものを俺が贈ってもいいかな?」


 選ぶと言った途端、ヒナタちゃんは驚いた表情をした。


「「えっ」」

「んっ?」


 それどころか、何故か兄さまも反応してるなあ。

 と思って振り返ると、少し離れた距離にいたはずの兄さまがギュンって音がしそうなくらい超速接近してきた。


「わっ!? な、なに?」

「キュリテ、それなら私にも選んでくださるかしら?」

「え? 何で腕組んで……ちょっと今ヒナタ嬢と話してたのに!」


 突然兄さまが話に割り込んで来たと思ったら、そのままズルズルとお店の端に連行される。


「どうしたの兄さま? 本当にアクセサリに興味あるの? 女装しても兄さまは美人さんだからね、アクセサリ似合うと思うな!」


 兄さまには何を選ぼうかなーなんて思ったら、思わず顔が緩んでしまった。


「……」


 でも反対に、兄さまはむすっと不機嫌そうな顔をしている。


「うん? どうしたの?」

「はあ」

「何で溜め息をつかれるのか、分かんないよー!」

「……いくら多少は安価とは言え、異性としてアクセサリをプレゼントするとか……ないだろう? 俺の格好をしているの、忘れてないだろうな? ハウザーの格好をしているんじゃないんだぞ?」

「え? ……あっ」


 言われて気付いた!


 後々入れ替わりを戻すかどうかに関わらず、単純に好感度が少し上がるだけなら問題ないかな……なんて思っていたけど。

 さすがにアクセサリの贈り物は、予想出来ないような変なフラグが立ちそう!

 それは良くない!


「別に、兄さまとヒナタちゃんをくっつけようとか考えてないので!」

「まったく……。何も考えていなかったと言うことだけは分かった」

「ぐうっ」

「それで? ノワールはアクセサリ、いらないのか?」

「え? 今は兄さまに変装中だし……」

「……それで良いのか?」


 なんかまだむすっとしてるのは何でだろう?


「それに、一応家にはそれなりにあるからね。良いお値段のやつが」

「……そう、だな」

「なんなら、代わりに兄さまの分も選ぶ?」

「なんで俺の分を……」

「女装用に? 私のも貸せるけど、兄さまに合ったものも選んでみたいよね。でもそうしたら、貴族向けのお店が良いかなあ……」

「いや、俺は良い……」


 ため息交じりな兄さまから、やっと手を放された。


「……とにかく、白の神子に変な先走り方をするんじゃない」

「気を付けます……」


 反省をすると二人でヒナタちゃんのところに戻ると、ヒナタちゃんは慌てていた。


「も、申し訳ないので……だ、大丈夫です……!」

「そうですわね。一日に二つも、それも高価なプレゼントは、白の神子さまにとって気が重いと思いますわ」

「言われてみれば……」

「は、はい! さっきお花も頂きましたから……! そんなに沢山は頂けません!」


 そう言ってヒナタちゃんは、髪の毛の薔薇を指す。


 そう言えば、ノワール名義ですでにプレゼント済みでした……。

 さすがに断られてしまったので追撃するわけにもいかず……。


 男装しているとはいえ、折角念願の女子友ショッピング楽しめたのになあ……なんてしょんぼりしていたら、兄さまが扇子を仰いで一言。


「それなら、どのアクセサリが似合うかを言うだけでしたら、問題ありませんわね?」

「え、あ、はい」

「あ、いいなそれ。楽しそう! それなら、この後は服も見に行こう!」


 それからは、私がヒナタちゃんに似合いそうなものを見繕って、兄さまがヒナタちゃんに鏡で当てたりとショッピングを楽しんだ。


 こうしていると、私とヒナタちゃんが黒の神子と白の神子だってことを忘れそうになるくらいに日常的な感じがする。


 この調子で、敵対しなくて済めば良いのになあ。

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原作担当コミック『小さな星《ひかり》のダイニング クチーナ・ルーチェ』pixivシルフ様にて連載中!
正反対な二人が送る、ファンタジーが舞台のダイニングでの優しい時間✨
よろしくお願いします~!
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