第059粧 兄さまと白の神子とウィンドウショッピング
「なるほど、貴族街か」
三人でやってきたのは、貴族たちの生活区画の範囲内。
なので、私たちの家からそんなに歩いてない。
「混雑の少ないこの通りなら、白の神子さまでも歩けると思いますわ」
貴族の生活区にはお店もある。それが今私たちが歩いている通り。
もちろん、通りがかるすべてのお店のショーウィンドウが煌びやか過ぎる。
庶民が見たら目が飛び出るんじゃないかな?
「うーん、男性恐怖症とは別の気持ちの敷居が高かったようだけど」
だからなのか、ヒナタちゃんがすごく怯えている。
「あ……あわ……」
そのうちカニみたいに、泡吹き始めるんじゃ……。
男性問題とは別の意味で、ここダメだったかな?
そう言えばヒナタちゃんって、元の世界でどんな暮らししてたんだろう?
箱入り娘なのかなー。
「そもそも、ここで出来る買い物ってあるか?」
「もう少し進むと比較的安価なお店がありますわよ」
「ヒナタ嬢。見るだけならタダだから、そんなに怯えなくて大丈夫だ」
「は、はい……」
「キュリテと白の神子さまの希望に本屋がありましたから、そちらなら気おくれするようなこともないでしょう。もっとも、お二人が御覧になりたい本があるかどうかは、別ですけれども」
はいはい。いつもこの区画の本屋になさそうな、大衆向け小説ばっかり読んでいてごめんね!
「それと最後に、カフェに向かうことにしていますわ」
「カフェ!」
それは良いね!
「で、でも私、その、お金が……あまり……」
ヒナタちゃんは、国だか学園だか占い師だか分からないけど、ともかくどこからか支給を受けているみたい。
小遣い制な様子の白の神子にとっては、あんまり高いところで飲食は出来ない、と考えてるのかもしれない。
でも心配無用!
「今回、費用は私たちで支払いますので、神子さまはお気になさらずに」
「えっ? えっ??」
「楽しみだな。ヒナタ嬢は何が食べたい? もちろん、甘いもの食べるだろう? 遠慮しなくて良いよ」
「キュリテは少しくらい遠慮なさい」
「え、あの……」
「俺はチョコレート系のケーキが良いな! に……ノワールは?」
危ない危ない。
嬉しさのあまりテンション上がりすぎて、変装中なのに危うく兄さまって呼ぶところだった!
兄さまからは、もれなく睨まれました。
「キュリテ、気が早いですわ。カフェは最後ですので、楽しみに取っておきなさい」
「う、はい」
「キュ、キュリテくんは……甘いものが好きなんですか?」
「ああ! 大好き!」
甘いもの食べると幸せな気分になるもんね!
なんて思わず返事をしちゃったけど、これは私ノワールの好みの回答です!
「~~~~!!?!!??!」
何でかヒナタちゃんが言葉に詰まった上に、また兄さまの後ろに隠れちゃった……。
うーん、だからなんでかな??
実は嫌われていたりとか、しないよね?
「……変なフラグを立てないようにと言ったでしょう?」
ヒナタちゃんの盾になった兄さまが呆れ顔で呟いた。
うん? フラグなんて立ててないよね??
そんなこんなでとりあえず出発開始!
私たちは、最初はショーウィンドウを眺めながら歩いた。
どのお店もあまりにも高いので、息抜きにはなってないかも。
「「「……」」」
三人とも、無言だし。
緊張しつつもあたりをキョロキョロ見回しながらあとを着いてくるヒナタちゃん。
私は彼女の様子をちょこちょこ振り返りながら、先導する兄さまのあとを追いかける。
うん? カルガモ親子の行列みたいになってないよね?
そう思っているうちに、比較的庶民区画に近いところに到着。
意外にも、兄さまが足を止めたのは、アクセサリショップだった。
「ん? ここってヒナタ嬢の希望?」
「い、いえ」
「じゃあ?」
二人揃って兄さまを見ると、扇子で口元を隠して答えた。
「何か問題がありまして?」
んっ?? どういうこと?
澄まして答える兄さまを隅に引っ張って小声で問いつめる。
「え? これ兄さまのチョイス? どうしちゃったの? 女装しているうちに、心まで女の子になっちゃった? 要するに男の娘として目覚めちゃった?」
「そんなものに目覚めてない! ハウザーからのアドバイスだ。女子二人がいるならこういうところに行った方が良い、とな」
「あっ、なるほどー」
「なんでハウザーだと引き下がるんだ」
「こう言うの詳しそうだもん。じゃあもしかして今日のお店って殆どハウザーの?」
「……悪いか」
「悪くない悪くない。兄さまなりに頑張ったんだよね、ありがとう!」
もしかしたら一人で考えたように見せて格好つけたかったのかなー。
なんて思うと、微笑ましい気持ちになる。
「笑ってないで、神子さまを待たせていますわよ」
なでなでしようと手を伸ばしたら、扇子で牽制された。
解せぬ。




