第053粧 悪役令嬢は「あーん」への抵抗力が弱い!
さてさて。
始まるまでに色々あったけど、ただいま絶賛お茶会中。
ちなみに女子友いないのでね。
私以外は全員男の子。そう、招待しているのはいつもの信号機カラーメンバー!
この時期はいつも、ぼっちを自覚するひとときです。しょぼーん……。
兄さまとその友だちがいるから、深くは気にしてないけども。
「わー! ほわほわっとした雰囲気だね!」
「今年はイエローがベース、サブカラーが白なのか」
「うん」
「花のように穏やかな色合いだな。君の性格にピッタリだと思うよ」
「うん? ありがとう?」
ハウザーからお褒めの言葉、頂きました。
私じゃなくて、ヒナタちゃんイメージなんだけどね?
さてさて。
お茶も淹れたし、待望のケーキを切り分けてみんなにお裾分けターイム!
「オレンジのショートケーキか」
ウォルターよ! マイペースだね!
しかし、淡々と食べてないで感想を! 感想をうぇるかむ!
作ったの私じゃないけど!
「オレンジの他にも、中にはピーチとかが入ってるらしいんだよ!」
「見栄えも良いし、夏に似合うケーキだね」
「そうでしょう!」
「だが今は冬だ」
ちなみにケーキの見た目はレースのワンピースに黄色いコサージュ付けました! みたいなのがイメージです。
毎回適当に、こういう感じの! って雑に言ってるんだけど、それを叶えて作ってくれるシェフの存在がありがたいよー!
「早いけど来年のシーズンに使えそうだな。良かったら、レシピを貰っても良いかい? 代わりに、我が家のシェフにケーキのレシピを手配させようか」
ハウザーが貴族っぽい取り引きをしかけてきた!
たまに忘れるけど私も貴族だった!!
「えっ、ハウザーのとこのケーキ! じゃあエスよろしく!」
「では厨房へ連絡致しましょう」
私はたらい回しをした!
「美味しいね、ノワール」
ガイアスよ、味に言及してくれてありがとう。
でも私、まだ食べてないんだけどね!
「まだ食べてなくてよ」
「あっ、そうだね。じゃあ召し上がれ」
謎のタイミングでお嬢さま口調が発動!
そんな私に、ガイアスの攻撃!
「うっ、うん?」
フォークの上に乗せたケーキを差し出してきた!
「はい、あーん」
「えっ」
追い打ち攻撃が発動! 上目遣いであーんのポーズされてしまったよ……?
「あーん?」
「う……頂きます……」
なんか今日はいつも以上にグイグイ来ますな……。
しょ、しょうがないので頂きましょう!
「んーっ! 美味しい!!」
「ね、ノワール」
「クリームはそんなに甘くないし」
「お嬢さまは普段甘味を食べ過ぎていますから、甘さ控えめに調整いたしました」
「そんな甘さに、オレンジの甘酸っぱさが丁度良くて」
「お嬢さまとガイアスさまの関係も、早く甘酸っぱくなって頂きたいものです」
「スポンジはふわっふわっだし」
「お嬢さまのお胸さまの弾力には負けます。そろそろ脂肪のこともお考えになられた方が……」
「ええーい! うるしゃーい! ケーキが堪能出来ないじゃないのー!」
そばに控えてお茶を淹れているエスの相づちのような一言が、鬱陶しいわー!!
あとこのタイミングで噛んだー!!
「あっ、ノワール」
「ひょっ!?」
「クリーム付いてるよ」
「えっ? どこどこ?」
「ここだよ。ほら、ほっぺに。僕が取ってあげるね」
良かった! 髪の毛にオレンジ付いてるよ、カリッ。みたいな展開じゃなくて。
いやオレンジはそんな音しないけどね!
「ほら、取れた!」
「あ、う、うん、ありがとう」
ううん、あーんのときと言い、距離感近いとドキドキするなあ。
なんて思っていると、ガイアスとの間に兄さまが割り込んで来る。
正直助かった!
「ガイアス。手が汚れているな。拭いてやろう」
「え? そこまでしなくても大丈夫だよ。クリームだから舐めれば良いし」
「させるかッ!」
「ううん、こっちこそさせない!!」
「いくら婚約者だからって、やって良いことと悪いことがあるだろう!」
「そんなキュリテだって、ノワールにずっとべったりじゃない! 僕だってノワールと一緒にいたいのにー!」
えーと?
「何か言い争いが始まっちゃったんだけど?」
「大丈夫だから、そっとしておこう。それよりノワール嬢。この紅茶の産地は、どこだろう? 風味がまろやかで飲みやすいね」
「さすがハウザー! オメガ高い!」
「今の発音変じゃなかったかい?」
「ソンナコトナイヨ」
テーブルの片隅から、ずずずーっとウォルターが紅茶をすする音が聞こえる。
あの、緑茶じゃないんだけど……。
相変わらずマイペースだね……。
「一部で変態同士の程度の低い争いが勃発しているが、今回のノワール会もいつも通りだ」




