第049粧 駄犬くんの証は謎である
試合終了の宣言を聞き届けると、駄犬くんが膝をついた。
「俺が……負けた……?」
信じられずにいる様子で呟いているけど……。
まあ、私が言うのもなんだけど、当然の結果かな……って思う。
だって駄犬くん、まるで剣に慣れてない感じだったから。
あんななのに、どうして勝てるって思ったんだろう?
もしかして、私が変装している姿って、かなり貧弱に見えてるのかな?
「ああ、俺の勝ちだ。お前が負けたことだし、今後は大人しくしてくれるな?」
「ちっ……」
話しかけると我に返ったようで、私を睨みつけて来る。
「神子が落ち着くまでは、大人しくしておいてやる!」
時間制限ありかい!
でもしばらく静かになるなら良いかな。
「それなら良かった」
「だがな、覚えておけ! 次はお前に負けないからな!!」
そのうちリベンジする気が見え見えだった。
いえ、もう結構です!
負け犬ならぬ駄犬の遠吠えを言い放って去ろうとするところを見送っていると、駄犬くんに向かって観戦者からヤジが飛んで来た。
「お前偽物なんだろ! 一般生徒に負けた偽物め!」
「それなのに神子さまに近づこうなんて、おこがましいやつだ!!」
……あ。つい調子に乗っちゃって、決闘中に余計なこと言っちゃったかも。
でも駄犬くんが使者なのは、ちょっと疑わしいな……って思うんだよね。
「うるせえッ!!! 俺は使者だ!! 本物の使者なんだ!!」
手の甲を掲げて叫ぶ。
「証だってある! 誰にも文句は言わせねえ!」
召喚の日に見ることの出来なかった駄犬くんの証が見えた。
「……良く、見えない……?」
その証が、ぐちゃっとした落書きのようなものが霞んで見えて、思わず呟いた。
私のうっすいアザは形はハッキリしている。
けど駄犬くんの証は、にじんでいるように見えた。
それに少なくとも、乙女ゲームにある証のどれにも一致しないないのは確かで……。
初日に占い師も確認しているはずだけど、あの人は何も気づかなかったの?
それともアザの有無だけを確認していて、形を全部は把握してないとか?
え? じゃあもしかすると、駄犬くんは本当に水の使者じゃない可能性が高い?
そうすると、あれは何の使者の証なの?
そもそもあれは、使者の証なの??




