第048粧 (.{3})キュリテ:5
試合の有効範囲外である安全領域で、俺たちは決闘の行方を見守っていた。
「……す、すごいですっ!」
「わあ! すごいね! キュリテったらすごいや!」
あれが実際にはノワールと言う少女が成し遂げていると言うことを、ガイアスと白の神子は知らない。
俺からは教える気はない。知る必要もないだろう。
「良かった、勝ったな……」
ハウザーの感心したような声色を聞きながら、俺は胸をなでおろした。
「正当な結果だ。彼女は別段弱くはないが、目立って強くもない」
「それでも一般的なご令嬢としては、護身以上の実力があると思うけどね」
「対して、ダーケンの武術の評判は、キュリテ。君だって聞いていただろう?」
「ああ」
駄犬の武術の腕前は、教師からの評価は最低であることを聞いていた。
「であれば、最初からこうなると分かっていたわけだ」
だが、素人の予想だにしないような攻撃が、ノワールを傷つけないとも限らない。
「それなら最初から素直に決闘に送ってあげて、仲直りしてくれれば良かったんだけどな。お前がやたらと威圧的になるから、二次災害やら三次災害やらがそれはもう酷かったよ」
そこまで俺が知ったことではない。
そもそも、駄犬が俺たちに喧嘩を売ったのが悪い。
「俺は負けるつもりだった。それに、ノワールに決闘をやらせること自体が反対だ」
「心配しすぎさ。大丈夫だったじゃないか」
「それは……結果的にはそうなったが……」
それに俺は、誰かを守ろうとするノワールを認めたくなかった。
「ノワールだって、もう子どもじゃない。お互いいつまで依存しているつもりだ?」
「……」
俺はウォルターを睨みつけたが、それでも奴は口を開いた。
「キュリテ。いい加減、三文芝居はやめるべきだ。彼女の狂言に付き合う必要なんてない」
「……付き合っているんじゃない、これは俺がやりたいことだ」
「そうであればなおさら、真面目に向き合うべきだ」
俺を演じるノワールが、俺たちに向かって笑顔を向けてくる。
気持ちの吹っ切れた表情を見ていると、迎えに行きたい気持ちがはやる。
「こんなことをして、何になると言うんだ」
「お前に何が分かる……」
「何も、分からない」
その様子を一瞥して、ウォルターは立ち上がった。
「自分には、君たちが理解できない」
歓声でかき消されるほどの小声で、俺は呟いた。
「理解出来たとしたら……お前たちは、ノワールを救ってくれるのか?」




