第042粧 兄さまが調査の結果おかしを持っていると聞いて/おまキュ
タイトルに記載の「おまけキュリテ」略して「おまキュ」は後書きに記載。
「おやつをくれないと、膝枕の刑だよ!」
私は兄さまの部屋のドアを開けて早速おやつを要求した!
「ああ、ちょっと座って待ってくれ」
兄さまの指示に従ってソファーで待機!
すると兄さまは左手を後ろに隠して、右の手のひらを私の方に差し出した。
むむ。もしかして、左手に噂のおやつが隠されている!?
「ノワール、お手」
はっ! これをクリアすればおやつをくれるんだね!
ええ、受けて立ちますとも!
「はい!」
と言うわけで兄さまの手のひらに私の手を載せた。
「おかわり」
「えっ? おかわりってなんだっけ? 反対の手?? って、私は犬かー!」
エスと揃って、二人とも私をなんだと思ってるんだー!
「動物みたいなものだろう。良く考えもせずに決闘を受けて……まったく。お前はイノシシか?」
兄さまはそう言って左手を開いたけど、そこには何もなかった!
だ、だまされた! 謀ったなー!!
「そう言う兄さまだって、私の格好で扇子振り回して壁壊したり、やりたい放題じゃないの」
「仕方ないだろう。ああでもしないと、あの駄犬はお前の胸倉掴みそうだったんだからな。変装がバレたらどうするつもりだったんだ?」
「あれくらいで衣装脱げたりしないでしょう?」
ラッキースケベ展開のラノベでもあるまいし!
「まったく、お前は警戒心がなさすぎる。少しは今回の件を反省するように。でなければ、おやつは俺がこの場で食う。そう、見せしめとしてな」
ガッ、ガーン!
「やめてっ! おやつは私に食べられたがっているの! おやつに罪はないのに! 食べないで!!」
「俺は悪役令嬢の代理のようなものようだからな? 悪役であるからには、悪役っぽくしても構わないだろう?」
「まさに悪役……! そのためだけに、おやつを用意したと言うの!? そのおやつが可哀想っ!」
「普段おやつを食べない俺が、無意味に用意するとでも思ったか?」
「たし……かに!」
蟹のポーズ!
なんてふざけていたら、兄さまが続けたのは衝撃的な発言だった。
「ノワール、決闘は俺がやる。だから、俺に任せてくれ」
「かにっ!?」
「その日だけ変装をやめよう」
「どうして!? あ、ヒナタちゃんのためだね!」
「お前、白の神子のことを名前で呼ぶのか」
そう言えば、皆ヒナタちゃんのことを名前で呼んでない……なんでだろう?
好感度の問題? まあ今は放っておいても良いかな?
それはさておき、決闘の話題をせねば!
「兄さまが決闘に出れば、きっと絶対に勝てるもんね!」
「お前、なんでそんなにあの神子のことを……」
「全力であの駄犬くんを懲らしめるんだよね!」
「……」
話が噛みあってない、みたいな顔をされた。
いや、私だってそう思ってるよ。
もしかして兄さま、わざと負けるつもり? 勝つ気ないの?
「まさか、決闘をやって負ける気なの?」
「むしろ何故お前は勝つ気なんだ? 白の神子に関わりたいのか? お前は黒の神子なんだろう」
「それは、そうなんだけど……」
「この決闘は白の神子から手を引くのに良い機会だろう。このままでは、いつまで経っても解放される気がしないからな」
「でもそんなことしたら、ヒナタちゃんが可哀そうだよ」
「それは俺たちが責任を持つべきことじゃない。白の神子自身と、使者たちの問題だろう?」
「でもノワールが案内役を任されたのに、途中で責任を投げ出しているじゃないの!!」
やっぱり変装をやめて、兄さまの負担を減らすべきだったんだ!
でも今はそんなこと言ってる場合じゃない。
決闘に勝たないと、ヒナタちゃんが孤立しちゃう!
こっちの都合で勝手に召喚されたのに、そんなのってないよ!
「ノ、ノワール……? なんで……泣いて……?」
兄さまが目を見開いて、私のことを見ていた。
動揺する兄さまを見るのはすごく珍しいと思う。
「な、泣いてなんかないもん!」
確かに涙目にはなってるかもしれないけど、泣いているつもりなんて全然ない!
「私は……私は絶対にキュリテになって! 決闘を受けて! 駄犬くんに勝つんだからね!!」
「ッ! ダメだ! 決闘なんて危険な真似させられるか!」
「変装を続けようって兄さま言ったじゃない! 決闘の日に兄さまがノワールじゃなかったら、絶対に許さないんだから!!」
「その時とは事情が違うんだ、ノワール!」
静止しようとする兄さまの部屋から飛び出して、私は叫んだ。
なんで分かってくれないんだろう。
「ヒナタちゃんは、私が一人ぼっちにさせないんだから!」
「ノワール!!」
兄さまの悲痛な叫びが、ちくりと心に刺さった。
◇おまけキュリテ◇
「あらあら、キュリテさま。ご夕食前ですのに、ドーナツをお召し上がりですか?」
「……」
「それにそのドーナツ、チョコレートがたっぷりとかかっていて、ノワールさまがお好きな味ですね」
「……うるさい」
「本当は半分こして一緒に食べたかったんですよね、キュリテさま」
「黙っていろ」
「ふふふ、失礼しました」




