第040粧 白の神子と黒の神子は中庭で:2
「「……」」
どうしよう。二人して黙ってしまった。
――ぐー。
と思ったところに、再び間の抜けた音が聞こえる。
「あ」
なんかさっきっから変なタイミングで鳴るなあ、このお腹は。
「お腹、空いてますか?」
「あ、ああ。さっきあの駄犬に、昼食台無しにされたから」
「ご、ごめんなさい……やっぱり私のせいなんですね……」
「いやいや、そんなことない!」
「あの……良かったら、こちらをどうぞ……」
「飴?」
「はい」
飴をベンチの端っこに置いて、反対側の隅っこに寄るヒナタちゃん。
「ここに呼ばれる前からポケットに入っていた飴なので、もしかしたらちょっと溶けてるかも……ですが……」
「それでも良いや! 助かる!」
お礼を言いながら包みを開けて、ヒナタちゃんが心配するほど溶けていない飴を口に入れる。
「うまい、うますぎる! 空きっ腹の五臓六腑に染みわたる……」
「くすっ……。そんなにお腹が空いていたんですね」
ハウザーがいると「また変な言い回しして」とか言いそうな一言に、ヒナタちゃんが笑ってくれた。
「あ、笑ったな!」
「あっ、ごめんなさい!」
「責めたわけじゃないんだから、謝らなくて良いんだって」
こうやっていると普通に話せてるよね。なんだろう?
もしかして私が男装してるから、かな?
じゃあ少しずつ話していけば、慣れるかも?
「ヒナタ嬢。こうやって少しずつで良いから、今後俺と話してみないか?」
「えっ?」
「俺と話すのは大丈夫なんだろう?」
「は、はい……」
「少し荒療治かもしれないが。俺のことが大丈夫なら、こうして慣らしていれば使者とも普通に話すことが出来るようになるかもしれないだろう?」
「そ、そうでしょうか……」
「何もしないよりは希望的だ。それに、上手く行けばノワールの負担が少しでも減って、ノワールがヒナタ嬢のことを邪険にすることも少なくなるだろう。どうだ?」
「……そう……ですね……」
さっきみたいに曖昧な返事を返される。ダメだったかな……。
俯いていた彼女は、私のことをチラッと見たと思うと、すぐに視線を逸らしてしまった。
そう思っていた時、ヒナタちゃんはポケットからもう一つ包みを出して中身を口に放り投げた。
あのポケットの中にいくつ飴が入っているんだろう。
ポケットを叩いたら飴ちゃんが増えたりするのかな?
「おいしい……です」
「そうだな」
まあ、急かす必要はないから、結論はすぐに出さなくて良いよね。
そうやってぼーっと中庭の様子を眺めながら口の中で飴をコロコロしていると、ヒナタちゃんが私のことを呼んだ。
「キュリテくん」
「ん?」
相変わらず彼女は俯いて、くるくるとまとめた包みに目線が留まったまま。
「お願い、します」
「えっ?」
「私と、お話してください。……私のせいで、決闘に臨んでくれるキュリテくんのために。私も、出来ることを……頑張ります……!」
「!」
まだ私の目をちゃんと見ることが出来ていなくて、チラチラと様子を伺うような視線だったけど。
それでも、ヒナタちゃんなりに勇気を出したんだと思う。
「ああ! よろしく!」
私のことを、ちゃんと見ていなくても大丈夫だよ。
でも私はこの気持ちを表現したくて、彼女に精いっぱいの微笑みを返した。




