第039粧 白の神子と黒の神子は中庭で:1
食堂を飛び出して辺りを見回す。
すると、曲がり角でスカートの裾が翻ったのが見えた。
タイミング的にあれがヒナタちゃん、だと良いんだけど。
追いかけて少し距離を詰めてみると、髪色や後姿が一致するので一安心。
だけど、今の私は男装しているので、女子トイレに逃げ込まれると厄介だなあ。
なんて考えているうちに、中庭に辿り着いたのでセーフ!
お昼休みなので、ベンチに座ってお弁当を食べている生徒がぽつぽつといるのを発見!
いいなあ。ご飯食べ足りないんだよねえ……。
いやいや、今はそれどころじゃない。思わずお弁当に目が吸い寄せられてしまったよ。
ヒナタちゃんは、誰も座っていなかった木陰近くのベンチに走り寄って座り込んでいた。
私はこっそり彼女の死角になる場所から近づいて、木の陰に隠れる。
そうしていると、彼女のか細い泣き声が聞こえてきた。
「うう……どうしてこんなことに……。戻りたいよ……」
もしかしたらどこかで一人静かに泣きたかったのかもしれないのに、聞いていてごめんね……。
うーん、それにしても……。
放っておけなかったからつい追いかけちゃったけど、そのあとどうするかは何も考えていなかったんだよね。
変に声をかけると絶対に怖がらせちゃうし、どうしよう。
何か良い案を考えないと。
閃け! 私の頭脳!
と脳内で唱えた途端。
――きゅー……。
「えっ!?」
静かに様子を見守っていたはずが、お腹が鳴った。
え? 誰の!? 私のだよ!
なんでこんな時にー!! 動くべきなのはお腹じゃないよ! 頭を動かしてよー!!
「あっ、えっと……キュリテ……くん?」
こっちを振り向いたヒナタちゃんに、隠れていたのがバレてしまった。
「あ、そ、そう。キュリテです」
動揺して思わず名乗っちゃったー!
いやいや、こんなの兄さまのキャラじゃない!
しっかりしろノワール! 私は今はキュリテ!
「後をつけて悪い。でも、心配だったんだ」
「い、いえ……。私こそごめんなさい……。巻き込んで、しまって……」
心配していることを伝えると、ヒナタちゃんがしょんぼりしてしまう。
よくよく考えてみると、私も渦中の人間だった。
ヒナタちゃんからすると、決闘に巻き込まれてしまった私がそばにいることで、彼女を追い詰める原因に繋がるかも……。
でも……。
「巻き込んだも何も、あの男が勝手に喧嘩を吹っ掛けて来たんだ。君が気にする必要なんてない」
「でも……ノワールさんは迷惑そうでした……」
うっ! そこは否定出来ないんだよね。
頼りにしていた兄さまから露骨に邪険にされたのを気にしているみたい。
「大丈夫、安心してくれ。俺が勝って、ノワールに案内を続けるように説得するから」
何なら変装やめて、私がやるもんね!
「ごめん……なさい……。私……何も出来ないのに……」
「いいんだ。だって君は、この世界に来たばかりだから。誰かに頼って良いんだよ」
「……でも、白の神子としてやって行けって言われているのに……使者の男の子にも、怖くて近寄れないんです……」
実はノワールの正体は男でしたー!
なんて暴露したら、ヒナタちゃんどうなっちゃうんだろうな……。
さすがにショック強そうだからやらないけど。
きっと気絶して、数日くらいは寝込むんじゃないかな?
「会話は? こうやって俺と出来るだろう?」
「本当は……会話するのも怖いんです……」
「それじゃあ、今も無理してるのか?」
「……?」
問いかけると、言われてみれば、みたいな表情をして首を傾げていた。
「い、いえ、そんなことは、ありません。そう言えば、なんで、でしょう? 他の人よりか、少しだけ……大丈夫な気が、します」
「じゃあもしかして……」
近寄ろうとすると、座っていたヒナタちゃんが立ち上がろうとした。
「あっ、ダメだな。試すようなことして悪い」
「い、いえ……。でもお話しても少し平気なのは、もしかしたらノワールさんに似ているから……かもしれません」
「そうか。すると、少しずつ慣らせば、俺が近寄っても平気になる可能性が……」
「どう、でしょう……」




