第035粧 兄さまとランチしたい
お腹空いたー!
待ちに待った、お昼休み到来!
つまり、兄さまと一緒にお昼ご飯が出来る!!
……と思っていたのは最初だけでした。
「何故だ?」
「ん?」
「何故ここにガイアスとハウザーがいて、にっ……ノワールが来ないんだ!」
「神子さまと一緒だからな。しょうがないさ」
それなら確かにしょうがない。
ヒナタちゃんと距離感のある兄さまの様子が心配だったけど、しっかりと案内はしてるみたいだから安心したかな。
でもちょっとだけでも兄さま成分を補給したいなー。
我は今、飢えている……。
「僕だって、ノワールと一緒にいたいのを我慢してるのに」
私の嘆きに、ぷくーっと頬を膨らませるガイアス。
私も兄さまが神子ちゃんに取られたみたいで、寂しい。
でもこれだけは言っておこう。
「ガイアスがノワールと一緒にいるのは、却下だ」
真顔で断言する。
でも我慢しているのは偉い偉い。
その調子で我慢してくれていると嬉しいなあ。
「僕、ノワールの婚約者なのに全然交流出来てないんだよ? 本当はデートだってしてみたいよ。その、手をつないだりとか……さ」
「デッ、デート!?」
頬を染めるガイアスの様子に、思わず立ち上がってしまった。
乙女か!
ガイアスの希望する内容、可愛いんですけど!
あとなんか態度も可愛いんですけど!
私より女子力高くないですか!?
で、でも可愛いって思ったからと言って、別に惚れてないんだからね!
ツンデレでもないんだからね!!
「あっ。いまのはナシ! ナシだよ、キュリテ!!」
兄さまに……この場合私かな。
シメられるとでも思ったのか、ガイアスが慌てて手を振っている。
なしと言われても聞いちゃったものは聞いちゃったし、何なら聞いてるの本人なのですが。
「とにかく、もう少しノワールと距離を縮めたいなあ」
「ガイアスがノワールに近付くと逃げるから、難しいところだ」
「そんなんじゃ、一向に距離が縮まるわけがないさ」
「ノワールは神子さまみたいだと思う」
ウォルターよ、私は別に男性恐怖症ってわけではありません。
ヒナタちゃんと一緒にしてはいけません。
言うなれば私は、ガイアス恐怖症なのです。
あまり婚約者に近付きすぎて、その果てに婚約破棄されて、結果的に破滅を辿る! なんてことになるのが嫌なのです。
「ガイアス。君は使者になったんだろう。そうは言ってられないんじゃないか?」
「えっ?」
「そう言えば、放課後はほぼ特訓になりそうだからな。今までみたいにノワール嬢のあとを、追っかけてられないな」
「えっ、そんな……」
ガイアスが顔色を真っ青にしている。
あれ、鋼の心の持ち主かと思ったけど、案外動じる……?
「僕たちはこんなに近くにいるのに、話すこともままらないなんてー!」
え、そんなにノワールと話したいの?
今のノワールとだったらお話していいよ?
中の人は兄さまだし、問題ないよ?
でも実は、君が望む人物とは、いまここで雑談してるんだけどねー!
それを知っているハウザーが笑いを堪えているけど、堪えきれてなくて思いっきりニヤニヤしてる。
その表情、ガイアスに見られないようにしてね!
「二人はすぐ近くで食べているけど」
ウォルターの言葉に視線をずらすと、確かに近くのテーブルで兄さまとヒナタちゃんがご飯を食べている。
兄さまは相変わらず、ツンツンしていて話しかけづらい空気感が半端ない。
「ノワール嬢も不機嫌そうだね」
「きっと、キュリテと食べられないからだと思う」
「こっちに来て、一緒に食べられたら良いのにね」
本当にねー。




