第034粧 兄さまは召喚日の騒動を教えてくれなかったので
「あっ、そうか。もしかして、昨日の騒動のことを聞いたから来たくないと思ったのかい?」
「騒動って、ヒナタちゃんの男性恐怖症のことだよね? そのヒナタちゃんも訓練施設に行くの?」
「彼女はしばらく別行動だから、一緒じゃないんだ。それにしても、その様子だと騒動については聞いてないみたいだな」
「え? 恐怖症以外に他に何か問題があったの?」
「使者の一人がトラブルを起こしてさ。それをノワール嬢……ああ、ややこしいな。ノワール嬢に変装しているキュリテに止めてもらったんだよ」
「えっ? 昨日兄さまがすごく疲れた顔していたのって、男性恐怖症が原因ってだけじゃなかったの?」
ハウザーが小声で中の人呼びを始めたので、私も喋り方を戻した。
確かに中の人のこと知っていると、こんがらがるもんね。
「それも疲れている理由の一つでもあるんだろうけど……」
「けど?」
「あいつが殺意を見せるくらいの面倒を、その使者が起こしたんだよ」
「殺意って……? 兄さまが? 威嚇じゃなくて?」
兄さまがガイアスを威嚇しているのは、たまに見る光景だったりするけど……。
え、殺意?
「あれは威嚇と言うよりは、殺意だね……。目で人を殺せるような……ああ、例えだよ? 死んでないしさ。でも正直、俺は怖かったよ」
「ええと、まさかその使者って、ガイアスじゃないよね?」
「違う違う。ガイアスにいつも向けているようなものとは、比じゃなかったくらいだ」
ちなみにいつも兄さまから威嚇を受けているガイアスだけど、全く威嚇の効果がないようだ!
さすがだね、精神攻撃耐性の高さに定評のあるガイアス!
「俺とガイアス以外にももう一人、使者がいただろう?」
「あ、いたね」
ウォルターじゃない、もう一人の使者かー。
「でも兄さまが殺意ってどういうこと? 何があったの?」
「ああ。何もないのにキレたわけじゃないから、安心して良いよ。非があるのはその使者で、あいつは神子さまをかばっただけだからさ」
「うん?」
だからどういうことだってばよ。
「君、物事は結論から言いたまえ」
「ノワール嬢はたまに変な物言いをするね」
「よく言われます、ハウザーに」
そう、あなたです!
他の人は訳の分からないことを言っているな、って顔をしてスルーするんだよね。
「実は、神子さまが男性恐怖症だって分かったきっかけが、そいつが彼女に迫ったからなんだ」
「迫った? えっ、男性恐怖症だって言うヒナタちゃんに!?」
「一番近くにいたキュリテに止めてもらったんだけどね」
つまり!? 最初から、使者の好感度が最高!?
強くてニューゲームですか!
ナイトメアモードな難易度だと思ったけど、ちょろすぎでは!?
いやでも、男性恐怖症のヒナタちゃんにとっては、まさに悪夢……。
ナイトメアを通り越しているのでは。
これはシャレにならないかも……。
「当然、止めたあいつに反感を持ったようでさ。そう考えると、そのうちノワール嬢にも変な言いがかりをつけて絡んで来そうだろう? 二人は双子なんだから、ってさ」
うええ……。
変なとばっちり受けないように、気を付けないと……。
「どんな子なの? あっ、昨日最後に手を挙げた男子生徒だね? 顔は見えなかったんだけど」
「そう、そいつさ。水の使者だってことなんだけど……」
「なんだけど?」
意味ありげに言葉を濁すハウザーに向かって首を傾げた。
「……とにかく、ノワール嬢はそいつには近寄らないように。いいかい?」
ハウザーは頭をポンポンと叩いて教室の方へと戻って行った。
「えっ? えっ?? ちょ……!」
なんなんだー!! 今何を濁したんだー!!
それにしても、兄さまと言いハウザーと言い、今日釘を刺されるの、二回目だよ?
なんで?
私、子ども扱いされてない??
あとその使者の情報が分からないと、避けようがないよ!?
求む! 詳細情報!!




