第025粧 悪役令嬢は婚約者ではない攻略対象と二人っきり
「今日の学園はこれで終わり。帰って良いそうだ」
「うん」
自主申告した三人が占い師に呼び出されると、召喚の儀式は無事に終了しましたとさ。
おしまい。
「……じゃなーい! なんでそんなに落ち着いてるの、ウォルターは!!」
兄さまは白の神子ちゃんと一緒だし、ガイアスもハウザーもいないので、今ここにいるのは私とウォルターだけ。
「君はどうして怒っているのだろう」
「だってほら! 使者の証あるでしょう、ほら!」
「キュリテ、君は声が大きい。もう少し小さく」
明らかに面倒くさそうにしているウォルターの左手を握ってぶんぶん振り回した。
「まずい、これは良くない。君が異性に触れると、キュリテが怒る」
「今は私がキュリテだし、兄さまは見てないから大丈夫でしょう!」
「それが、どこで見てるかわからないから怖いんだ」
「なんか言い方がホラーみたいなんだけど。って、今はそれどころじゃないって!」
「とりあえず、手を離して。話はそれから」
仕方ないので手を離した。
「ふー」
あからさまに溜め息をつかれた。
なんでや。
「それでウォルター、どうするの? 名乗らなくて良いの?」
「……どうしようもない」
「でも……」
「今から名乗りをあげたって、信じないだろう。そういうのはお断りだ。もちろん面倒ごとも」
面倒ごとに巻き込まれたくない気持ちは、分からなくもないけど……。
「それにガイアスと違って、自分は使者に興味ない。だから、意義の見いだせない役割は果たせないと思う。代わりの彼が本当に役目をこなせるなら、それが良い」
「そういう台詞が出てくるってことは、ウォルター自身は使者の自覚あるんだ?」
「自覚って程ではない。そんな気はする、その程度のこと」
ウォルターは肩をすくめて言った。
ほー。自覚があると言うことは、使者の力の使い方とか分かったりするのかな?
「名乗れない方が気が楽だ。だから、秘密にしてくれると助かる」
でも本当にそれで良いのかなあ。
「ウォルターが良いなら、それで良いんだけど」
白の神子の使者が少ないのは、黒の神子サイドとしては良いことかもしれないんだけど。
秘密にしたことが原因で、変なトラブルが起きないと良いなあ。
「面倒ごとに巻き込まれないように、今後は自分も、君たちにならって手袋をはめよう」
「え?」
「三人同じデザインで着けたら、流行すると思うだろうか?」
「え? 男女共用? ないでしょ、ないない。やっぱり女の子の手袋は可愛いのじゃないとね!」
「もう随分と地が出てる」
「あっ。危ない危ない……」
「ところで、ノワールの手袋は、なにかを隠してるのか?」
「ふぁっ!?」
おわっと!?
ウォルター選手、まさかの飛び道具ー!?
突然のことなので、ノワール選手はビックリしましてよー!?
「かかかっかくしてるってなんのこと?!」
「動揺しすぎだと思う」
「ど、動揺なんて、してないので! ので!」
はっ、そういえば兄さまが手袋のことを聞かれたときにこう言え! って言っていた!
「て、手袋は性別とか普段やっていることとかをごまかすための演出ですー! だからしてるんですー! タコとかイカとか隠しているんですー!」
「今度はムキになってる。そこまで否定するとかえって怪しい。わかってやってないだろうか?」
しかし、相手には逆効果だった!
「みゅじゅちゅ……、無実の罪で訴えてやるー!」
「……危ない。追い詰めすぎたか」
「へっ」
急にウォルターが降参ポーズを見せた。
あれ、私勝った?
ば、ばんざーい?
「ノワールをいじめると、あとでキュリテに絞められるから」
と思ったら、ここにいない兄さまの勝利でしたー!!
「兄さま、まさかのリアル絞め!? ん? 私いじめられたことあったっけ?」
「……。いじめられた自覚がないなら、気にしなくて良いんじゃないだろうか」
なんか不思議系同類と思っていたウォルターに遠回しにバカにされた気がして、わたくし少し悲しいですわよ。




