第017粧 兄さまとそれなんてエ口ゲ(※健全)
これから入学式なので、みんなで一緒に講堂に向かうことにした。
「ねえ、みんなは噂聞いた?」
「噂?」
ガイアスが嬉しそうに話しだすと、ウォルターが首を傾げた。
このメンバーはどうやらすごく目立っているみたいで、じろじろとこっちを見られているのを感じる。
まあ三人は攻略対象だけあって、みんな美形ですしおすし。
注目を浴びてもおかしくないかな。
でも美少年っぷりだったら、うちの兄さまだって負けてないもんね。
って思ったけど、でも今の兄さまは女装中だった!
つまり私の自慢の兄さまが美少女過ぎて、みんなの目が釘付けに違いない!!
良いのよ、もっと美少女兄さまを堪能しても!
なんて考えながら一人でニヤニヤしている間にも、四人は話を進めていた。
「白の神子と三人の使者の噂だよ!」
「あー、はいはい」
「ガイアスはそういうの好きだな。正義のヒーロー、か」
「もちろんだよ!」
パアッと表情を明るくして頷くガイアスを眺めてから、ちらっと兄さまの顔を見る。
扇子で顔を隠しているし、表情に出ていないけど……。
私にはわかる!
地味に嫌そうな雰囲気を感じる……!
それに黒の神子な私は、この話題は混ざりにくいー!
「今度学園で神子召喚の儀式をするんだよね? どんな人かな、楽しみだねー!」
「確か……女の子って話だったね」
むむっ。
ハウザーはともかく、婚約者が白の神子ちゃんを気にしている!
浮気の波動……!
これは危険です!
「使者の手にはアザが表れるんだってね。使者は誰になるんだろう」
ちなみに、まだ使者は明らかにされていない。
知っているのは乙女ゲームで事前知識のある私と、予習済みの兄さま!
それと、予言をした占い師も知っているはず。
「手はないよね。見えるところだから、なおさらな」
「かといって、変なところにアザができるのは、勘弁願いたい」
ですよねー。
もしアザが手じゃなくてお胸さまに出来てたら、どうなっちゃうんだろう。
……こうなっちゃうのかな……。
『お前が黒の神子だな! 正体を見せろ!』
――バリっ!
『きゃあ、ヘンタイ!』
みたいな?
それなんてエロゲ?
乙女ゲームがR指定になっちゃう!
そう考えると、アザが手でよかったかも……?
考えすぎ?
そんな風に再び妄想の世界に入り込んでいたところ、ガイアスの気になる呟きが聞こえてきた。
「僕が使者だったら、ノワールを守るために力を使いたいな」
「だが断る」
「ん?」
あっ、妄想……じゃなくて考えごとをしていたら、つい口が滑ってお断りを口に出しちゃった。
いやいやいや、これは不自然でしょ!
現実の世界に舞い戻った私は、不思議そうに首を傾げるガイアスに向かって慌てて自己フォローをする。
「の、ノワールは俺が守るので!」
「そうですわ。私のことは、キュリテが守ってくださいます」
「キュリテは相変わらずシスコンだな!」
あとに続いてフォローしてくれた兄さまとハウザー、ぐっじょーぶ!
ありがとう!
「ですから、ガイアスのことなどお呼びではありません」
どさくさに紛れて兄さまが酷い!
私そこまでトゲトゲしてない!
「そっか。キュリテとノワールは仲が良くて羨ましいなー」
それでもやっぱりガイアスはめげず、羨ましそうな目でこちらを見てくる。
ガイアスはメンタル異常耐性でも持ってるのかな。
鈍感と言うより、もはや鈍器!
もしかして距離を置いてることにすら、気付かれてないのかな?
さすがにそんなことはないよね?
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