第012粧 悪役令嬢は今日から令息!
令嬢の朝は早い。
なんてったって化粧に着替え、その他諸々に時間がかかるから。
でも兄さまになりきる今の私には、そんなこと関係ない。
私は今日から令息なのである。
だから、関係ないのだ。
関係ない、のに!
「ぐう……」
寝ていたら、カーテンをシャッ! っと勢いよく開かれた。
容赦ない!
「おはようございます」
続けて、エスから朝の挨拶の攻撃!
しかし、ノワールは、まだ寝たい!
「ううん……わが眠りをさまたげるものは……」
「お嬢さま。悪役になりきるのは構いませんが、あとになさってください」
「ふぁーい」
うつらうつらしながらも何とか起きて身支度を始める。
始めると言うか、もう全部エスに我が身を任せた。
すまぬ……あとは任せた……。
……ガクッ。
そんな私が次に意識をはっきりと取り戻したのは、圧迫感を感じたときだった。
「ふぉっ、うぐぐっ!」
コルセット、お前かー!
「うっ、いつもよりっ、強めにっ……つぶされております……!」
「そんな冗談を仰られるくらいなら、まだ余裕ですね。ガンガンシメましょう」
「ぐ、ぐえ。つぶれる!! 自慢のお胸さまがつぶれちゃう!! い、命をだいじに!」
「その命令は無効です。我慢なさってください。お胸さまが無残につぶされてしまうのは、お嬢さまが男装を選んだ故。お胸さまの大きな令息などおりません。自業自得でございます」
「世の中には雄っぱいと言う単語があるじゃない!」
「それとこれは種別が別でございますので」
「うわあーーん! もしかしてこれ毎日やるのー!?」
「ええ、無論です」
何と言うことでしょう!
兄さまになりきることになっても、やることはいつもとあんまり変わらなかった!