第010粧 兄さまの膝枕タイム
女装な兄さまを思う存分堪能して母さまと侍女たちの気が済むと、部屋に残ったのは私と兄さまだけになった。
「ようやく変な会が解散した……」
疲れた様子で机に腕をのばしてべたーっとなる兄さま。
なんか猫みたいで可愛いのですが……。
いくらでもびよーんって伸びそう。
それに、そのままだと口から魂抜けそうだし。
ちなみに、私の要望によりまだ女装継続中です。
私はまだまだ堪能し足りないからね!
「これを今後、ほぼ毎日やるのか……?」
「あそこまで気合を入れたのは、もうやらないと思うんだけど……」
私の普段のおめかしはさっきのより手抜いてそうだし。
ぐぬぬ、解せぬ。
「でもこれで準備は済んだね! 破滅回避して、頑張って生き延びよう!」
「はあ……。仕方ない、腹をくくろう」
「やったー! ありがとう、兄さま! 男前!」
「どういたしまして。で、その男前が女装するんだが? どうなんだ?」
「じゃあ女前?」
「はあ。まあもう用は済んだことだし、そろそろ着替えても良いな?」
当然のように着替えようとする兄さまの発言に、私は止まる。
「え」
「えっ?」
「せっかく超気合入れておめかししたのに? もう着替えちゃうの?」
「だってこれ、いわゆるお試しだろう?」
「何をおっしゃいます、兄さま。お楽しみはこれからです」
私はソファーの上に座って、隣をぽんぽんと叩いた。
「ん!」
「いや、ん! じゃわからない。……わかりたくなかった……」
溜め息をついてしぶしぶと私の隣に座る兄さま。
私はその膝の上に、頭をダーイブ!!!
そう! 膝枕だーっ!!
「うーん、これこれ! 憧れの姉さま膝枕っ……!」
「……。姉さま言うんじゃない」
「あでっ」
ぐぬ、不機嫌そうな表情で頭を軽くつつかれた。
「男の体で膝枕やっても硬いだけだろうに」
「兄さま意外に筋肉あるので、これはこれで筋肉が堪能できて……くふふ」
「これ以上聞くと、いままで俺が知らなかった妹の変態じみた性癖が明らかになりそうで怖い。って、こら、腕を揉むな! 変態!」
「ふふふ、嫌なら頭なでてくーださいなっ!」
「まったく、仕方がないな……」
なんて言いながらも、頭をなでてくれる兄さま最高!
「素手で!」
「はいはい」
可愛いデザインの手袋を外して、そっと髪に触れてくれた。
んー!
ちょっとくすぐったいけど、だがそれが良い!
「それにしても、俺。『悪役令嬢ノワール参上』として学園に行くのか……」
「やだー! なんでいま言うのー!?」
顔を隠しながらもチラッと見ると、兄さまは苦笑いしている。
「教師内で絶対に噂になっているだろ、あれ」
「いやあ、お恥ずかしい」
「恥ずかしい思いをするのは俺になるんだけどな」
「あたっ」
撫でられていた頭を軽くチョップされた。