Episode 4. The dawn of the disaster
こんばんは
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
「有意義だった」
12時になる前に[テンパランス]の仕事の見学が終わった。途中で時雨さんが俺達に色々と雑務をお願いしつつ仕事内容やどういったところを意識しているのかなど、面倒な性格ではあるものの教えるのは上手な人だった。
「2人とも。この後予定はあるかい?」
嶺が俺と愛美を昼食に誘ってきた。これからこのインターンでは唐も含めた4人で行動することが多いと予想して、今のうちに交友を深めようとしているのだろう。この後の予定は俺にはないが、愛美は俺の知らないところで良く友人と買い物にいったりしていたりもする。
「私はないわ。湊もない」
「問題ない」
「ならここからちょっと離れているけど行きつけの店があるんだ。料金は俺が全て持つよ」
そう太っ腹な事を宣言した嶺。確か今回のインターンの参加者は俺達以外はそこそこ上流階級の身内がいる者達なので4人の1回の食事代ぐらい奢っても全然問題ないようだ。
電車代も帰りの分まで渡してきたが、流石にそこまでは貰えないので丁重に断ったが断り切れずに俺と愛美は電車代も渡されつつ都心の駅へと到着した。時刻は13時であり社会人なら既に午後の業務へ移る頃合いだが、夏休みに入った者が多い7月25日では未だに人通りは多く、駅から見える範囲の飲食店はどこも行列が出来ていた。
「じゃあついてきて」
嶺は駅の改札口から屋台が並ぶ駅前広場を通り過ぎる。向かう方面は高級住宅街や上流階級の者達が多く所属するゴルフやテニスクラブの施設、老舗百貨店など庶民的な俺が中々訪れない場所だった。つい最近改築が終わった国立競技場を訪れる者やその周辺で楽しむ俺達と同じ年頃の者達を横切り、段々と静寂な閑静な住宅街に変わっていく。
「こんなところに?」
「前はもっとお店があったんだけど時代の移り変わりで減っていったんだ。さて着いたぞ」
嶺が連れてきた飲食店は一言で言えば喫茶店であった。昔ながらのレトロな雰囲気で時代を感じさせる外観。ショーウィンドウにはオムライスやナポリタン、メロンフロートなど喫茶店と言えばと思わせる料理が並んでいる。
「昔は純喫茶だったらしいけど、20年ぐらいからカフェとして飲食店営業許可を貰ってるから手の込んだ料理も提供できるよ。まあ喫茶店として売りに出してるからアルコール類は提供されないし、営業時間も夜まではやっていないけどね」
俺の記憶が正しいければ「カフェ」と「喫茶店」と「純喫茶」の違いは、「カフェ」はオシャレで現代的な空間でアルコール類の提供や手の込んだ料理を提供できるもので、「喫茶店」と「純喫茶」はレトロな雰囲気な空間で、飲食店営業許可ではなく喫茶店営業許可なためアルコール類の提供はなく、料理も単純な加熱調理しか許されない。また「純喫茶」は朝から晩までコーヒーや軽食のみを提供するものなので、嶺の説明通りなら目の前の店は「カフェ」と「喫茶店」と「純喫茶」の要素を全て持ったようなものだった。
「いらっしゃい。ああ嶺さん、唐さん」
嶺は喫茶店に入ると年配の女性が出てきて、嶺と唐の2人とは顔なじみなのかすぐに名前で呼んでいた。
「今日は4人だけど空いてる?」
「ええ。空いてますとも。どうぞこちらへ」
女性は俺と愛美を一目見て確認すると奥のブースに案内した。出入口からも他の客からも仕切りで隔たっているのでちょっと内密な話はできる雰囲気であった。
「こちらがメニューですよ。どうぞごゆっくり」
水とメニューを置いて女性はカウンターに戻っていった。俺はメニューを開くとショーウィンドウに並べられていた料理の他にも色々と提供されていたが、折角なので俺は嶺にオススメを訊く。
「ナポリタン、オムライス、ハンバーグかな」
「じゃあ俺はハンバーグ」
「私はオムライスで」
嶺と唐は2人ともナポリタンを注文する。そして話題は今日ここへ誘った理由である。
「2人はどんな目的で今回のインターンを?」
「私は[ギルド連合]に興味があって。湊は私の付き添いのように昨日いきなり強制参加した」
「本当だ」
「そうか。でも2人は今日会った2人の職員とは顔見知りなのは親御さんの関係で?」
「そうだ。色々とあって小学生になる前から[ギルド連合]とは関わっていたな。お二人は?」
色々と質問してくる嶺に俺は答えつつ嶺にも同様に質問する。ボンボンな嶺がなぜ[ギルド連合]の職員を希望しているのか。唐は嶺の従者のような立ち位置なので彼についていく理由で参加しているのだろう。
「俺の家も[ギルド連合]とは関わり深くてね。実家は兄貴が継ぐから俺は叔父の跡を継いで欲しいだと」
この日本は随分前の世界大戦で皇族以外の爵位といったものは返上されているが、未だにそういった身分だった一族は国直下の組織の上層部になっている事が多い。勿論身分や血筋だけの一族は淘汰されているため、嶺の一族は戦後の混乱を生き残った者達であり、総じてそういった家は幼い頃から英才教育などを施されている。だからこそ他の参加者よりも実戦経験などがあったのだろう。
「叔父とは名字も異なっているし、俺も親戚の名前や権力を笠に着る気はない。叔父の跡を継ぐにせよそれまでは自分の実力でしっかりと[ギルド連合]の職員として働くつもりだよ」
嶺が言い切った所で料理が運ばれてきた。
「ありがとう」
「これくらいは平気だよ。明日もまた」
絶品の料理を堪能し俺と愛美は嶺と唐と別れた。俺はこのまま帰宅するつもりだが、ここで愛美が寄りたい所があると誘ってきた。愛美にしては珍しいと思いつつ、俺は愛美が行きたいという場所を目指す。そして見覚えのある路線とバス亭を見て彼女が行きたい場所の検討がついた。
「花を買っていくか?」
「命日じゃないから別にいいよ。近かったから寄るだけ」
バスで最寄りのバス亭に降りるとそこは先ほどの高級住宅街とは違う河川敷の公園。河川を見下ろせる高い位置に建てられ夕日が美しく見える事で有名だが、そこは愛美の育ての親が亡くなった事故現場だった。2人は仕事でこの場所を訪れた時に運悪く……
「湊。込み入った話があるから座ろっか」
愛美はブランコに座り込んだので俺も横の空いてるブランコに座る。夕日が愛美を美しく照らす中、彼女は俺に込み入った話を始めた。
「湊は本当に将来の事は考えていないの?」
「いきなり何を。仕事となりたい職業は別だろ」
昨日の続きを思わせるものだった。本当は好きなゲームで生計を立てられればいいが現実はそう甘くはない。特にゲームはまだ日本では悪い子がやるという偏見が強い。だからこそ俺は色んな職業の選択肢を増やす為にあえて今は将来の職業を絞り込まないようにしている。だが大学受験となればある程度絞り込まないといけないのも事実。
「どうした?最近少し変わって……」
俺は愛美の心境の変化を感じ取りそこを訊こうとした時だった。俺の目の前に見知らぬ美女が立っていた。歩いてきたのではなく目の前に急に現れたのである。
「時間です」
美女は手に持つ懐中時計を愛美に見せる。愛美は美女の事を知っているのか驚いた様子もなくただ「そう」と返す。そしていきなり俺や愛美の携帯端末に同時にメールの着信が届く。差出人は「Demons」と怪しさ満点のメール。そしてメールの件名は「Declaration of war」。つまり宣戦布告であった。開いたらウィルス感染するものと俺は思って削除しようとしたが、愛美がそのメールの内容を俺に見せて来た。内容はこうだった。
Hello, Humanity.
(やあ、[人類]達。)
How are you doing after kicking out the monster?
([魔物]を追い出してから元気にしているかい?)
I wonder if magic and science have developed and become much stronger than those days?
([魔法]も科学も発展してあの頃に比べて随分強くなったのかな?)
But you guys are always fighting without becoming one because of trivial things.
(でも君達はつまらない事でずっと一つに成らずに争っているよね。)
If that's the case, I'd rather control your continent once again.
(だったらいっそのこと今一度君達の大陸を支配してみようと思うよ。)
It's more powerful and intelligent than before, so it's not comparable to the monsters on this continent.
(以前なんかよりも強大で知恵があるから、この大陸にいる魔物とは比べない事だね。)
This is a declaration of war against humanity by us demons. Let's see how far we can resist.
(これは僕達[魔人]が君達[人類]に対する宣戦布告だ。どこまで抗うか見物だね。)
See you later, stupid human begins. Your victory condition is to show us our power.
(じゃあまたね、愚かな人類達。君達の勝利条件は僕達に力を示す事だよ。)
和訳するとこういった内容だろうか。冗談めいた内容に俺は困惑していると突然地面が大きく揺れる。
「なっ!?何だ?」
「始まちゃったか」
俺は地面に伏せて地震を耐えているが愛美は何事もないように美女の横まで歩いていた。
「この国はどこに?」
「一先ずは首都と大阪、名古屋、宮城、福岡」
「ふーん」
話している内容が気になるが地震は以前の大地震よりも大きくなる。だが途端に影になったのを確認した俺は顔を上げるとそこには巨大な化け物が河川から現れたのであった。映画のゴジラのような周辺の高層ビルと同じサイズをしたカエルが河川から現れ周辺の橋や道路や建物を破壊していた。
「湊。貴方は私に付いていく?それとも……私を見捨てる?」
「何の話をしている?」
街は[魔物]出現のサイレンがけたたましく鳴り響く。周辺では車や人々の声も響いておりパニック状態になっている。そんな状況で愛美は何を言っているのだろう。そんな事よりまずは避難場所へ行かないとと俺は愛美の腕を掴もうとした。しかし愛美は俺の腕を振り払う。
「私は行かない。私は[魔人]、[魔人・エルメス]。貴方達[人類]に恐怖を与える存在」
「愛美。冗談を言う暇があるなら早く」
「これなら冗談じゃないでしょ?」
愛美は腕を振るうと俺の横の地面に亀裂が入った。[魔法]を使った形跡はない。
「エルメス。今すぐに判断は無理だと思いますよ。期限を設けて時間を与えて整理させましょう」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は2/26です。ではまた次回




