Episode 6. Emptiness and empty rotation
こんばんは
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
しばらく投稿空けて申し訳ない。
「湊」
湊と穆成は穆成の覚醒を理由に部隊が別れてしまった。湊は穆成の残敵処理の部隊に配属され、現在はローテーションにて急造の前線基地の警戒任務を行っていた。
前線基地といっても1メートルに満たない塹壕と蛸壷、土嚢と鉄条網だけの簡素なものだが、現在後方にて諸々の物資を積んだ部隊が移動中であり、彼らが到着次第順次整備を進めていく。
湊はそんな警戒任務の中でも巡回の任務を任されており、4人1組の小隊にて付近に敵が潜んでないか巡回していた。そんな時に懐かしの声が湊を呼ぶ。
「!?」
湊含む小隊は声のした方向を向くと、そこには《魔人》であるエルメスこと愛美が優雅に立っていた。すぐさま小隊全員は彼女に銃器を向ける。湊に限らず既に判明している《魔人》の素性などは志願、徴兵に限らず公開されているため、愛美が《魔人》であり敵対しているとすぐに引き金を引けるようにしていた。
「愛美。いや、《魔人》。何のようだ?」
「別に今は戦おうとは思っていない。良き友人として貴方に忠告をしに来た」
「今更何を。何が目的だ?お前達の能力なら簡単に世界征服などできる筈。どうして《魔物》を引き連れてけしかけるだけけしかけて傍観する?何がしたいんだ?」
「私達が最初から全力を持って介入したら意味がない。拮抗した、いや逆境こそ覚醒のスイッチが入りやすいのよ」
「穆成みたいな覚醒を誘発させたいってことか?尚更お前達は何が狙いなんだ?」
「話したら貴方は退いてくれる?」
「内容によってだな。少なくても《魔物》を引き上げさせることだ」
「無理よ。ああ、外に連絡しても無駄よ」
湊とエルメスの会話をよそに、他の小隊は無線をオープンにして会話を公開しようとするが、無線は一切繋がらずノイズだけが響いていた。
「ここは隔絶した。私が解かない限りは中からは抜けられないよ」
「《魔人》。やはりお前達は悪だ。退屈だから遊んでいるだけ。すぐに終わるのも呆気ないから長期化させているだけだろ」
湊は《魔人》が特別な目的はなく、ただただ自分達の暇潰しに世界を巻き込んでいるだけと決めつけた。湊はもうかつての幼馴染として接するのは完全に切り捨てた。少なくても目的も話さず、《魔物》を引き上げさせる気はないとエルメスが言い切った段階でそう判断した。
「湊。これ以上この戦いに関与すると穆成のように後戻りできなくなるわ。貴方は辛うじて拒否し続けているけど、いつかは貴方も穆成のようになる。そうなると私としては救えない。良き友人として湊だけでも引き返してほしい」
「お前は何を知っているんだ?あのマスクは何者なんだ?」
覚醒した者やその前段階である者達からは、各々共通してマスクを被った存在に力を一時的に授かったもしくは縋れとお告げがあったと語る。そして湊はそのマスクを被った存在と話したことはあるが、湊はその存在からの提案を断っている。
「御方は《人類》を《救済》する存在。だけど我々とは《救済》のベクトルが違う。私が変な言い回ししてる理由わかる?」
「お前達《魔人》はあのマスクの配下ってことか?」
湊は今までの《魔人》側からの発言などを全て本当だとして状況を整理した。
まず《魔人》とマスクは双方共《人類》の《救済》を目的としている。しかしエルメスが言うことが本当なら双方の《救済》の意味合いが異なっている。だがそれをはっきりとは断言しないとなると、それは《魔人》がマスクを警戒、もしくはマスクの意向に逆らえない立場の可能性がある。よって《魔人》はマスクの配下の可能性が高いと湊は考えた。
「我々はできる限りで自分達なりに貴方達を救おうとは思っている。けどそれには少数の犠牲がどうしても出てしまう」
「少数?これが少数か?」
「ええ。全人類の総数と比較したら少数でしょうね」
「人の命を比べるものじゃ……」
「じゃあ退いてくれる?貴方は今私達の計画を邪魔するのか、はたまた協力してくれるのかその狭間にいるのよ。邪魔するなら今ここで消す」
「わかったよ。じゃあ力づくでお前から情報を吐かせてやるよ」
湊は密かに背後にいた小隊にハンドサインで攻撃を指示しており、本来なら既に小隊が発砲していた。しかし一向に攻撃どころか反応もない。
「そう?既に仲間は吐く前に死んでるけど?」
湊はエルメスの言う事を確認することなく、《魔力剣》を出現させエルメスへと斬りかかる。しかし湊の斬撃はエルメスが取り出した様々な花と蔓が巻き付くレイピアによって弾かれた。
「くっ?!」
「我が主人に刃を向ける者一切の慈悲なし」
華奢な見た目からは想像できない力で弾かれ、エルメスと距離を離されてしまった湊は、上空から影が下りると共に上から斬撃が降りかかる。湊はサイドステップで避けると、攻撃したきたのが全身にアーマーを着込んだ天使の羽と輪っかがある剣を持つ騎士であった。
「ラファエル。貴方は湊を監視する不届者を始末しなさい」
「仰せのままに」
エルメスは自らの《使い魔》にそう指示を出す。
「監視?」
「貴方を穆成とあえて別れさせれば、私がアクションしてくると踏んでたみたいね。まあそれよりも湊、足元お留守ですよ」
いつの間にか湊の足元から蔓が生えるとそのまま湊の両足を縛る。湊はすぐさま足元の蔓を《魔力剣》で切り裂き、エルメスに向けて《ウィンドアロー》を放つ。だがエルメスの前に放った風の矢は全て掻き消された。
「力が欲しいか?」
ここで湊の脳内にあの存在の声が響く。だが湊はその声を無視して目の前の戦闘に集中していた。湊はイカ墨のように黒い球状の液体をいくつか生成すると、エルメスに向けて放ちその少し後に自身もエルメスに向けて接近する。
まず最初に放たれた黒い球体は、先程掻き消された距離に達する前に破裂し黒い壁を隔てる。それがどの黒い球体も同様のため、エルメスは黒い壁に前方の視界が制限されていた。これでは接近してくる湊がどの方向から攻撃を仕掛けてくるか目視では確認できない。
「見たことない」
今まで長く湊と共に愛美として行動していた愛美だったが、そんな愛美ですら見たことがない湊の技に単純に関心を持つが、全てを把握しているわけではない。
「面白いけど甘い」
エルメスはレイピアを地面に突き刺す。するとエルメスを守るように無数の蔓が周辺に生え始めると、蔓はエルメスの身体に巻き付こうとする。そして接近していた湊はその蔓に巻き込まれる寸前だった。
「何?」
だが蔓は湊を巻き込む前に消失した。その現象はマスクの誘惑に負け覚醒した者のように捉えられるが、エルメスはそれとは違うと断言できた。
「貴方は」
「止めなさい《恋人》。彼は必要な存在。いくら私に従って行動していてもやりすぎよ」
湊を守るようにして現れたのは何度も見てきたマスクを被った存在その者であった。しかしいつもと違うのは幻影などではなく目の前にいるのは実体であったことだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
もしかしたら何個か続いて投稿あるかもです。




