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World Apocalypse  作者: miyafinder
Chapter 3. What lies beyond salvation?
33/37

Episode 9. Unplanned decay and cleanliness

こんばんは。

ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。

「私が扱う《錬金術》で生み出されたものは何も一つや二つじゃない」


《隠者》はほぼ壊滅状態の《エルフ》の集団にそう言い捨てた。《隠者》の周辺には様々な状態の《エルフ》の死体が転がり、虫の息の者も多数存在している。立っているのは片手を失ったリーダー格のみであり、そのリーダー格も切断された腕の断面はドロドロに溶けておりその汁は地面に垂らしていた。


《隠者》は襲撃した《エルフ》達が以前戦闘したことのある者よりも弱いことに違和感を覚えつつも取り出したのは緑の蛍光色の液体の入った試験管だった。《隠者》が取り出したその試験管の中身にリーダー格は見覚えがあった。


「《アニマ・ヴェゲタティーヴァ》なのか?」


「ん?ああ、《エルフ》では伝承されているものなのか。まあ君の言う《アニマ・ヴェゲタティーヴァ》とは似てるものだね」


《隠者》は試験管の口にあるコルク栓を抜くと中の緑蛍光色の液体を地面に垂らす。液体は地面に触れた瞬間、芝生が急激に成長しつつ辺りから木々が生え始めた。


「植物の急激な成長。やはり《アニマ・ヴェゲタティーヴァ》」


「自然豊かな国土であれどやはり近代化の波に呑まれたこの世界。いくら間伐が必要であれバランス的には自然が足りないらしいからな。自然愛する君達エルフが求めるものを与えよう」


急激に成長した植物や樹木。その根や枝は辺りの《エルフ》の死体や虫の息の《エルフ》を突き刺し養分としながら勢力圏を拡大させる。


(ここまでか)


自然を愛する種族である《エルフ》。彼らの固有の《スキル》には植物や樹木を読み取るものがあり、それを利用すれば襲い掛かる植物達を回避するのは可能。だがリーダー格は《スキル》を使用した結果、到底回避不能な攻撃であった。


諦めかけたその時だった。脳内に謎の声が響く。


(力は欲しいか?)


その声に驚くと時が止まっていた。何もかもその場で停止しており、それは自分の身体も同様であった。唯一意識だけが停止していなかった。


(力は欲しくないのか?)


尚も声が頭の中で響く。そしてリーダー格の前に現れたのは謎のマスクを被った白いマントを羽織った人型だった。素顔はわからず白が目立つシルクハットで髪型すらよくわからない。


(喋らずとも我は思念を読み取る。だからこそ汝に問う。力は欲しくないか?もし欲しければ強く願え。そうすれば我は汝に仮初の力を与えよう。この力を持って障害を取り除き、《塔》の試練を突破すれば仮初ではなく汝の力となろう)


《エルフ》は謎の存在とそれが語る内容を信じることはできなかった。《塔》を知っているということは、目の前の存在は何かしら《魔人》に関係している。敵ではないが味方でもない存在から怪しい力を授けると誘惑する。まるで違法薬物を何も知らない若者に勧める売人にしか見えない。


(もし、拒むと言うなら我は止めん。そのまま儚く大地へと還るがいい。だが我としては汝にはもっと抵抗してほしいと思う。《人類》の持つ秘めた力。それを見せつけてこそ彼らの目的は達する。そして我の目的も)


謎の存在は《魔人》の目的と自身の目的が合致していると語る。その時点で信用できないが、このままここで自然に還るということはできない。死んでいった仲間や部下達、そして故郷で待つ同族のためにもここで朽ち果てる気はない。


(よろしい。では授けよう。腐朽と清浄の力は《エルフ》という種族、自然の巡りを重視する君達には相応しい力となるだろう)







「ん?」


辺り一帯を大自然へと変貌させた《隠者》だったが、ただ一つリーダー格のいる位置だけ植物が腐り始めた事に気づく。《隠者》が植物の急激に成長させたように、彼のいる辺りだけ時間の流れが早くなり植物が枯れ崩れていく。しかし枯れた植物は新たな生命の養分として腐葉土となり新たな芽が出始めた。


「ほう」


「これが自然の巡り。輪廻の仕組みか」


まるで枯れさせた植物のエネルギーを吸収するかの如く力が増し若返ったリーダー格は、今まで感覚的にしか認識できなかった何かを理解した。そしてこれが大地を育て自然を育むと。


急激な変貌を遂げた《エルフ》の様子を見た《隠者》は確信した。


「《器》を見つけたな」


ようやく目的の存在を発見した。《隠者》はすぐに《念話》で他の同族に確認を取る。


「《器》だな」


「ああ、《隠者》。まだ候補だがもう《器》確定と見ていい」


同族とも意見が一致したことで《隠者》は余裕の表情から真剣な表情へと変わっていく。変貌した《エルフ》は周辺の植物を枯らしつつも自身の強化と自身の生み出した自然を育んでいた。


「《ウルティマ・マテリア》を使用するが問題ないか?」


《隠者》はどんどん力を増していく《エルフ》に対して先ほどまで使用を控えていたアイテムの使用の許可を《念話》の通話先である同族に確認する。


「せっかく特定させたんだ。壊すなよ」


「当たり前だ」


《隠者》が取り出したのは水銀のような色をした液体が入ったフラスコ。フラスコの大きさは理科の実験などで使うようなサイズではなく、見た目だけなら2リットルサイズのペットボトルと同じぐらいある。《隠者》はフラスコの栓を抜き自分の前で中の液体をまき散らす。するとまるで《隠者》を守る盾のように形成され浮遊する。


「《メルクリウス・ヴィタエ》。腐朽の相手には万物を生み出す水銀で相手しましょう」


《隠者》の前に出た水銀の盾が独りでに蠢くと中から出てきたのは水銀の身体を持つ兵士だった。小説で出てくる中世の兵士のように身軽な軽装に剣と盾。そんな兵士が水銀の盾から次々に生み出されていく。


「兵士よ。腐朽を撒く敵を打ち破れ」


水銀の兵士は《エルフ》に向けて突撃を開始する。それに呼応するかのように《エルフ》は使い方を把握した腐朽の能力を意図的に使用する。


腐朽のオーラを移動させることでオーラの範囲内に入った水銀の兵士の身体が朽ち始める。それと共に吸い取ったエネルギーが彼が育む植物を成長させる。


(吸い取ったエネルギーを自身と自身の生み出した植物へと分け与える。今のところ植物に動きはないが、おそらく一定の成長で襲い掛かるか。随分と強力な能力を授けたな)


《隠者》はまだ完全覚醒には至っていないのに対しても現時点でかなり強力な能力を行使していることに、授けた存在がそれだけ与えなければこの窮地を突破できないと判断したからだろう。そしてそれだけ授けても問題ない《器》と認識したからだろう。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回は5/6です→5/13です。

ではまた次回


・《アニマ・ヴェゲタティーヴァ》

植物の魂


・《メルクリウス・ヴィタエ》

生命の水銀


※あくまでこの作品内での意味、解釈です。

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