Episode 13. A call that leads to Death
こんばんは
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
遅れて申し訳ありません。再開いたします。
「穆成、無理してないか?」
湊は穆成が妙に焦っていることに気づいていた。焦りは行動やちょっとしたことで思わぬミスを招く。それが一瞬の気の緩みが死を招く戦闘においては致命的である。それを湊は知っているからこそ、穆成には一旦気持ちを落ち着かせるように湊は声をかけた。
「湊。今は少しでも本部の」
「そう簡単に陥落してたらそもそも援護していない。彼らを信じて少しでも戦力差を縮める必要があるんだ。つまり生き急いでもいけないんだよ」
現状《魔物》の軍勢の総数などは一切不明ではあるが、少なくても《魔人》という存在がいる以上戦力差は相当な開きがある。それを縮めるのは敵の戦力を減らしつつ自分達の戦力を増やすか維持するしかない。なので絶対に生存することが自分達の任務でもあると湊は穆成に言い聞かせる。
「お前、少し変だぞ」
「こんな状況の中、普段と変わらない奴はそんなに多くはないと思うが」
そんな中、二人を含む部隊は突然に地響きに警戒する。地震ではなく何か重機のような巨大な機械を動かしているような音と振動。先ほどまで巡回している《魔物》の戦車とはまた違ったもの。一同はとにかく存在がばれないように息をひそめる。
(なんだあれは?)
彼らの近くに現れたのは機械などはではなかった。見た目は成体の象のようだが、その表面はレンガで角張っており、子供がブロックで作った車を再現したと言われても納得するような見た目である。《ゴーレム》を疑うが、それにしては表面のレンガには血管のような管から緑の蛍光色が流れ脈動している。
(生体ゴーレムといえばいいのか?)
無機物にしては生体的な部位がある。とにかく形容しがたい物体に部隊全員は困惑するが、とにかく何をしてくるかわからないため、そのまま待機していると突然物体が停止する。
(あれはセンサー?)
背中のような部位からレーダーのようなものが出てくると、全方位に視認できる赤いレーザーが射出される。レーザー自体にダメージなどはなく、障害物に当たるとその裏には透過しない。だがいくら息をひそめていても何本かのレーザーは部隊の数人に当たってしまう。
(こちらの存在を検知するものか。はたまた……)
だが特に変化はなかったが、突然射出していたレーザーは消えると今度はレーダーが動き出す。そしてレーダーから高出力のレーザーが湊達のいる部隊に向かって薙ぎ払うように射出する。
「全員退避!!」
すぐに検知した情報を頼りにこちらの存在を認識して攻撃しているとわかった副隊長は、全員にその場から退避を命令するが、一瞬にしてレーザーは何名かの隊員の身体を通過した。高出力のレーザーが当たった場所は赤熱して綺麗な断面を晒す。それは当たった隊員も例外ではなく、一瞬にして血と臓物をまき散らす凄惨な戦場へと変わる。
「くそっ。全員た」
副隊長はすぐに退避の命令を出そうとするがその副隊長の顔面に高出力のレーザーが貫く。謎の物体の視界がどういったものかは不明だが、視界に入った瞬間に高出力のレーザーが発射される。
(また俺は何もできないのか?)
ここで穆成は自分の力のなさに再び嘆いていた。彼がなぜ湊に指摘されるように焦っていたのか。それはいち早く強くなりたいから。だが《戦車》との戦闘によって自分の強さに疑問を持つようになった。また彼は隠しているが、《魔物》襲来の混乱で弟を一人失っているからこそ強さを求めていた。
(力が欲しいか?)
この数時間、穆成の脳内には幻聴が聴こえ始めていた。彼は自分がおかしくなったものだとして幻聴を無視していた。だが何もできない現状でもしきりに幻聴が脳内を響かせていた。
(力が欲しくないのか?)
(力があればこの現状を打破できるのではないのか?)
(己の無力が最愛の家族を失う要因ではないのか?)
(隣にいる幼馴染のように強くなりたくないのか?)
(未だ消息不明の彼女を探したくはないのか?)
幻聴は段々と鮮明にそして穆成を誘惑するようになっていく。
(己の無力を嘆き力を欲する者よ。力の一端を授けようではないか?)
まるでパンドラの箱のように幻聴が宣う力を拒絶していた穆成。だがそんな穆成の心境をまるで察していいるかのようにお試しを提案する幻聴。
(本当に力が欲しければ。《塔》を目指せ。そして番人を打ち倒した暁には相応しい力を授けようではないか)
そんな幻聴の言葉を最後に穆成は意識を現実に戻す。そこにはなぜか既に肉体を動かしており、それを察知した謎の物体が高出力レーザーで穆成の心臓を貫いているものであった。
「え?」
焦って動いたのではなく、勝手に身体が動いていた。途切れ行く意識の中、目の前で驚愕の表情を浮かべる湊の顔と流れる走馬灯。そしてより鮮明になる幻聴。
(汝に幸があらんことを)
薄れゆく視界の中、穆成が見たのは湊の背後に立つガスマスクを被るフードの人物の姿であった。
「時雨」
死都と化した東京。その池袋で避難者の護衛任務を請け負っていた時雨は、未だに意識が戻らない婚約者の安否を心配していた。そんな彼女を同僚でありかつての戦友の《冒険者》は心配していた、
「ごめんなさい。任務に集中しないといけないのに」
「そもそもお前は引退したほぼ一般人だ。それに婚約者が一大事だっていうのに駆り出している俺たちの方が問題がある」
時雨は怪我で前線から離れた身。そんな彼女を駆り出すしかないほど人員不足であるが、彼女ほどの戦力が投入しないといけないほど、現在の東京は《魔物》と怨念の巣窟になっている。
「くそっ、10キロ先に新たな《魔物》を確認した。キリがない」
「《ダンジョン》攻略ができない以上、今は民間人の避難が優先か。どう考えても後手後手に回ってる」
時雨たちは迫りくる《魔物》を撃退しているものの、その数は減るどころか増える一方である。ローテーションで休息は取っているもののここ一か月はほぼ戦場に出ている。そろそろ肉体的な疲労もピークに差し掛かっている。
「自衛隊の援護はまだか」
「民間人の完全避難。それができないと援護はできないようです」
「この状況でまだ綺麗ごとをか。全く呆れる」
披露していく肉体と精神。救ったところで戦力になるか不明な民間人の救出と避難。そしてそんな民間人の犠牲を自分達の攻撃で出したくない自衛隊。時雨の視点で見れば、そんなことをしている余裕は今の日本にはない。ある程度足切りをつけて生存者を顧みずに戦略的な攻撃をしなければ、結果的に全員共倒れとなってしまう。多数を救うには時に少数を犠牲にするしかないのだ。
(私にもっと実力があれば)
ふと時雨はそう思った時、彼女の脳内に幻聴が聴こえ始めた。
(力は欲しいか?)
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は3/4→3/11です。
ではまた次回




