Episode 18. Clockwork Moon
こんばんは
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《隠者》は自身を束縛する《エルフ》たちが仕掛けた《封印陣》。それを構成する《魔法陣》に無色の液体が入った小瓶を落とす。小瓶が地面に落ちた衝撃で割れると中に液体が《魔法陣》に反応して真っ白に発光する。
「《封印陣》が」
真っ白に発光した液体は《魔法陣》をなぞるように地面にしみこみ、《魔法陣》を形成するときに利用した矢に到達すると、矢は派手に粉々になって破壊された。それと同時に《封印陣》も解除された。
「もう一回やるまでだ」
「もう同じ手は食らわないぞ」
《エルフ》が再度《隠者》の動きを止めようとするが、《隠者》は既に姿を消していた。囲んでいた《エルフ》たち全員が《隠者》を認識できていなかった。
「ではここで一服しようか」
《隠者》は無防備な首筋を晒していた《エルフ》の一人に、首筋に紫色の液体が入った注射器を刺す。そして紫色の液体を体内へと注入した。
「これも《人類》が生み出したものだ。それを身をもって味わうがいい」
紫色の液体を注入された《エルフ》はすぐに背後にいる《隠者》を引き剥がそうと肘打ちをするが、既に《隠者》の姿はなく、直後が苦しみだした。
「殺せ」
《エルフ》の身体全体の肌が紫色に変わりつつあるのを確認したリーダー格は異変を起こした仲間を即座に殺すように命令する。化け物に変わって仲間を襲う前にトドメを刺す。だが仲間を殺すための矢はが当たる前に変異した《エルフ》は消えてしまった。
「あれは一体」
「200年ほど前に《錬金術》によって生み出された人工的に化け物を生み出す薬剤だ。あまりにも危険性の高いために禁忌として葬られたものの一つなのだが……」
「私は《錬金術》を嗜んでおりますので、こういった禁忌となったものから未だに《人類》が発明に至っていないものまでね」
《隠者》は化け物となった《エルフ》を盾に姿を現す。敵となった《エルフ》は既に自我をなくし《隠者》の忠実な僕となっていた。
「さて。ではこれが何か《エルフ》はわかるかな?」
《隠者》は《エルフ》たちの前に出したのは真っ赤な石が入った試験管だった。石は子供の爪のような小さなサイズではあるが、《エルフ》たちはその石から放たれる濃密な《魔力》に恐怖を覚えていた。
「かつて《錬金術》を修めていた者なら誰しも一度は名前は知っておるではないか?」
「知らん。何をするかわからんがとにかく奴を殺すぞ」
《エルフ》たちはその合図で半数が存在感を薄くした。《スキル》を使用して急襲を狙っていくのだろうと《隠者》は別の試験管を取り出す。こちらも《人類》からは一度も生み出されていない《錬金術》で生み出されたアイテム。
そのアイテムを《隠者》は試験管の蓋を開けて、中に入った液体を周囲にばらまく。非常に揮発性が高いのか空気中で既に気体となって《隠者》の周りで霧散する。
「?。《魔力》を纏わせた矢を放て。奴にあてなくていい」
リーダー格は《隠者》をした行動にある懸念を覚え部下の一人にそう指示する。部下はすぐさま《魔力矢》を放つ。《魔力矢》は《隠者》から5メートルほどに迫った瞬間、突如として空中で壁が出現し《魔力矢》はその壁に埋まってしまった。
「《魔力》に反応して固まる性質の気体か。聞いたことがない。だがこれで《スキル》を発動しながらの攻撃は不可能なのか」
聞いたことがない性質の気体だが、もしこのまま《隠密》系の《スキル》を使用した部下が《隠者》に接近したら……命はなかっただろう。《スキル》の殆どは《魔力》を使って発動させているため、これでは《隠者》に接近は難しい。だが性質がわかれば対処は考えやすい。
場所は変わってカナダ。カナダには《ダンジョン》は存在しないが、既に国土の1割を《魔物》に占領されてしまっている。カナダが保有する軍隊は精強であり、《ギルド連合》も軍隊に見劣りしないレベルの高さはある。それでもなぜ現在においても連戦連敗をしているかというと、それは《魔人》の存在が起因していた。
「この波長。《魔人》の出現を確認しました」
「くそっ、もう守れない。橋を爆破しろ」
現在カナダのとある孤島は《魔物》の手によって陥落寸前であった。本土と繋がる二本の大橋のうち、一本側から《魔物》が孤島に侵攻。さらに空中や海中からも《魔物》の侵攻によって孤島の防衛はすぐさま放棄し、カナダ防衛隊は少なくても大橋から渡る《魔物》を防ぐために爆破の準備とそのための足止めをしていた。
だがカナダを苦しませる《魔人》の出現。かの《魔人》の特異能力は《魔人》を中心に発生する。なのでここで不完全ながらも大橋を爆破しなければ、爆破までの防衛で散ってしまった仲間たちが犬死になってしまう。
「しかしまだ橋には」
「やむを得ない」
未だに大橋で防衛している隊員がいるなか、カナダ軍は大橋爆破を決行する。だが爆破のスイッチが押され、爆破は確認されたがそこから大橋が崩壊することはなかった。いや、爆破した瞬間に大橋の時間の流れが止まったのだ。
「これは」
「間に合わなかったか」
《魔人》のわかってる範囲の能力。それは一時的な時間の停止。あらゆるものの時間を止めることが可能であり、おそらく止める対象も任意で選択可能。近づけば心臓だけを停止させることで即死させることができる。近づくことが困難を極める、そんな《魔人》がカナダの《魔物》の侵攻を手助けしているのだ。
「くそっ、このままでは範囲に入る。我々は撤退する」
カナダ軍は《魔人・運命》に太刀打ちできない。だからこそ唯一太刀打ちできると豪語する連中に任せるしかなかった。
「ああ。退がらせてくれ。奴は俺達がやる」
「《時間魔法》。失われた属性の《魔法》ですね。ですがその系統は《空間魔法》に類する。つまり《空間魔法》の耐性があればまだ太刀打ちできます」
《魔人・運命》の時間停止能力を分析し、万が一に備えて二人で相手をする。それがハンマーを持った大男とインテリ風の眼鏡男の考えだった。そして二人は時が止まった大橋に足を踏み入れる。
「二人だけですか」
大橋を堂々と歩く《運命》の前には二人の《冒険者》が立ちふさがる。二人だけなのか、あえて二人で来たのか、はたまた二人で十分という油断なのか。どちらにせよ現状では《運命》に勝てることはない。
「本当に見た目は人間そのままだな」
「ええ。ですが中身は全く違いますね。《人類》とは違うとはこういうことなのですね」
二人の《冒険者》は《運命》の外見に惑わされず常に攻撃に備えている。それに今《運命》の近くにいる時点で《時空属性》には多少なりの耐性を持っているようだ。
「それじゃあ死んでください」
《運命》はさっさと始めようと戦闘態勢に移る。《運命》の身体に巻き付くように具現化した鎖とその先にある巨大な懐中時計。これが《運命》の武器である。
「時間対策を怠ると即死ですね。ですが対策は完璧ですよ」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は12/10です。ではまた次回




