Episode 20. Judgment of War rut
こんばんは
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
「現在判明している《魔物》はオーク5000体。武装は付近の家屋から強奪したと思われる包丁といった刃物、工具、農具が主体です。ですが明らかにこの5000は囮とみていいでしょう」
湊が派遣された拠点の司令基地では作戦会議が行われている。目下の目的は後方へ浸透する《魔物》の軍勢の排除もしくは大打撃を与えること。だが《魔物》達はまるでこの拠点の存在意義がわかっているかのように、今度は後方へと向かわせる戦力の殆どをこの拠点周辺へと集結していた。
現状拠点周辺で確認される《魔物》の軍勢はオーク5000体。豚と人間のハーフのような容姿をした《魔物》は、中世では1人で倒せれば《冒険者》として一人前と呼ばれる程、一般人には脅威だが戦闘能力の高い者なら容易に倒せる雑魚敵であったが、現在集結しているオーク達は全員何かしらの武器を持っている。そして攻めることなく、まるでどうぞ狙ってくださいとばかりに存在を曝している。
決して無視できない5000という数。これを撃滅するとなるとそれなりの戦力や消耗が伴う。だが拠点へ集結している《魔物》は絶対にこれだけではなく、下手に戦力を分散するとその隙を狙ってくる。だからこそどうやって目の前の障害を乗り越えていくのか。現状は平行線を辿っている。
「武装は銃火器の前では無力だ。無視をして潜伏しているであろう他の軍勢を探すべきだ」
「衛星探知機や赤外線、魔力感知カメラ。そのどれもが反応なければ、今ここで壊滅にして少しでも今後の状況を良くするべきではないか?」
大まかにはこの二つの方針でどうすべきか論争が起こっている。どちらの方針も間違ってはいないが、だからといって無作為に争っては時間の無駄。今この時でも《魔物》達は着々と戦力を集結させているはずだ。
「1ついいか?」
ここで論争に一石を投じるのは《ギルド連合》の代表者。無駄な論争をどうにか終結させるにも、別の視点からのアプローチを提案した。
「《魔物》達に自分達の強さをアピールするというのはどうだ?奴らは心理的な圧力も有効だ。私達の強さで怯えて、指示を聞かずに放棄や脱走、無茶な行動といった状況になればこちらに優位に働く」
「ではどうすればそういった状況に?アピールするなど、それこそ攻めた瞬間に……」
「別に攻めろという訳ではない。ここから迫撃砲やミサイルといったものでこのオークの軍勢を壊滅させる。お前達の想定以上にこちらは上を行っていると知らしめる」
「失礼だが、既に奴らは我々の持つ最長射程の兵器でも狙えない距離にいるんだぞ」
判明しているオークの軍勢は、この基地拠点が保有する兵器の射程距離外で待機している。どうやってこちらの射程を把握しているかは不明であるが、こちらから相手へと向かわない限り攻撃が当たらない。かといって相手からの攻撃を待つのは危険過ぎる。だが《ギルド連合》がその状態を打破できる方法があるようだ。
「派遣された《冒険者》の中にこのオークの軍勢の位置に届く攻撃を有する者がいる。だが攻撃中は無防備で位置も把握される。そこで迎撃してくれる護衛が必要である」
「我々から個人の護衛の為の戦力を抽出してほしいと?」
つまり《ギルド連合》の確証のない攻撃のために、いくらか戦力を分けて欲しい。そう要求しているのだ。これには自衛隊からは良い返事はなかった。彼らが《ギルド連合》を信用していないとかではなく、悪戯に戦力を分けたくないといった心境が大きい。
「まあこれはあくまで1意見ですので、《ギルド連合》からはこういった案もあると念頭においていただけれ」
その時、突然司令基地に地震のような地響きが発生し激しい揺れが襲う。だが砲撃音、爆発音から何かしらの攻撃をこの拠点が受けているのは、作戦会議していた全員がすぐさま理解した。
「何があった?」
「付近から戦車による砲撃です」
「戦車!?どこからだ?映ってないぞ!」
「地面から突如として主砲だけを覗かせてました!地下道が形成されてます!」
「急報!オークの軍勢背後から戦車の部隊を発見!戦車はゴブリンといった《魔物》が操縦している模様!そのままオークの軍勢は戦車の随伴歩兵として追従する模様です!」
ここで自衛隊は《魔物》に対して甘い認識をしていた。《魔物》は平均して知能が低く、武器を扱えても兵器までは扱えないと思っていた。だが実際は戦車は扱えるし、戦車の弱点もオークが護衛として連れて行くだけである程度カバーできている。
「更に戦車の後方に大量の機動機械!ゴーレム型の《魔物》と推定!」
更に奥から肉を持たない機械の《魔物》であるゴーレムらしき存在が確認された。その数で最低で6000。突如拠点を砲撃した戦車を隠していた地下道の存在も考えると、それ以上の数が既に拠点付近に展開されているだろう。
「遅かったか。すぐに警報を出して他拠点にも連絡を入れろ。応援が来なくても何割かは拠点を無視する恐れがある」
ここで自衛隊は一先ず戦闘態勢に移り、拠点内へ侵入する敵歩兵が出ないようにする。だがこちらの戦力を纏めると、戦車の砲撃や迫撃砲、爆撃機による絨毯爆撃などで纏めて殲滅させられたくないため、各自間隔を広くして展開していた。
「我々も等間隔に《冒険者》を配置して、《魔法》による攻撃から守るようにしつつ、攻勢時は必ず前線を押し上げるようにしろ」
《ギルド連合》も自衛隊を上手く利用して敵前線の突破を狙う。だがこの時、一部を除いて殆どの者が《魔物》と《魔人》の脅威や戦略に気づいていなかった。
「早速か」
穆成と共に湊は配給された戦闘用のボディスーツを身につけ、最低限の装備を身につけて集合地点へ駆け付ける。既に元々自衛隊員である者達は配置につき始め、徴兵された者達は不慣れながら指示に従っている。
「来たか」
湊と穆成は《ギルド連合》に元々所属していた《冒険者》2人を含めた4人パーティー。そして湊は幼少時から知る人ぞ知る戦闘経験者。つまりこのパーティーは精鋭に分類される。
「上からの指示で俺達は防衛ではなく、敵後方への侵入及び塔型の《ダンジョン》への到着だ。その為には戦車部隊やその後方にいるゴーレムの軍勢も突破するしかないようだ」
「我々だけですか?」
「いや。何パーティーかと合同だな。殆どはこの拠点の防衛に回される。自衛隊は途中までは随伴してくれるが、最終的には彼らは《ダンジョン》攻略には参加しない」
湊と穆成へこれからの方針を通達している中、彼らのいる広場の横にあるビルの中階層が爆発する。敵の砲撃が既にこの広場周辺まで届くことを指す。
「思った以上に侵攻してるか。このままだと奥から来る戦車部隊の対処ができないぞ」
「いや、反撃が開始された。2人共、この装置は絶対に作動させておけ」
自衛隊が反撃を開始したのか、拠点内から発砲音や砲撃音が轟き始め、いよいよ本格的な戦闘が開始される。それにより《ダンジョン》攻略を目的とするパーティーにはとある装置の作動が絶対とされている。
それが言うなれば自分の位置を知らせるもの。戦場にてそれなりに起きてるのは味方からの誤射。また湊達は砲撃や銃撃戦が考えられる前線を突っ切ることになる。そうなるとこちらが味方であることを伝える必要があり、作動してれば見れば味方であるとわかる緑の蛍光色、拠点内からはデータとして座標が送られ、万が一ミサイルが飛ぶと双方に位置を強く強調表示してくれる。砲撃主や観測主にもその反応がわかるため、それなりに味方からの誤射は防げる。逆に敵からもそれなりにわかってしまうため、前線突破後となり砲撃の射程外になると切らなければならない。
「《魔物》が作った地下道を通るべきだろうが、何がいるか全体像がわからないし、折角仲間が作った道を無駄にする。敵からの攻撃防ぐ以外では地下道には入るなよ」
こうして軽い報告が終わり各自必要な装備を持ち、湊は久々の大規模戦闘へ身を投じていくことになった。
「ようやく反撃してきたか。まあ侵攻速度はこのままでいいか」
遥か上空の《魔人》専用のドローンで拠点内の《人類》側のあの行動を監視していた《魔人・戦車》は、良い塩梅で攻めるように考えていた。一気に全戦力を持って拠点を確保するのは良いが、ここで少し《器》の厳選や発見をすべきだと《魔人・恋人》を中心とした同士に提案された。
「まっ、暫くは前線は膠着するだろう。なら気をつけるべきは第三勢力だな」
《戦車》の周辺に現れたのは《幽霊》だった。《地縛霊》ではなく、古くから特定の村や地域を守る《守神》や《土地神》、何かしらの《加護》による産物。土着信仰などは、技術革新に伴い非現実的な存在への信仰は廃れていたが、《戦車》のいる場所は少しながらも信仰は続いていたのだろう。
「確かに今の状況は俺達が《人類》を滅ぼすと見えるだろう?だがこれがある意味救いでもあるんだ」
《戦車》の主張を素直に認めるなどはなく、現れた《幽霊》達は《戦車》へ攻撃を仕掛ける。だが《魔物》の上位存在とされる《魔人》には、《幽霊》の通常時攻撃など意味がない。
「準備運動にはいいな。やってやろうか」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は9/24です。
ではまた次回




