Episode 18. The moon that brings death
こんばんは。
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
タイトルの意訳は「死を謳う月」です。
「各地で強力な反応!既存の《魔物》とは全く異なる生命体反応。これは……」
「いよいよ堂々と姿を現したか、《魔人》」
各地の《ギルド連合》は、今回の天災を裏で暗躍し行動する《魔人》には気づいていた。中には国の最高機関を襲いそこを《ダンジョン》とさせた存在もいる。だが今までは隠れて何かをしているのが多く、自分達の存在を見せびらかすといった行動はなかった。
だが今は違う。各地に《魔人》の反応が確認された。もはや隠れることはしない。正々堂々とかかってこい。そういったように彼らは自らの存在を出し始めたのだ。それは彼らが我々人類に与えた安息の期限である7月31日であった。
「奴らは何か要求があったか?」
「一通のメールが。表示します」
《魔人》からの宣戦布告以降、彼らからのメッセージはなかった。しかし表立って動き始めた以上、何かしら彼らの声明はある。そう睨んだ《ギルド連合》日本支部の考えは正しく、密かに一通のメールが届いていた。
これより我らは人類への攻撃を開始する。お前達の勝利条件は世界各地にある塔全ての攻略。私達は塔全ての攻略までは容赦なく攻撃を実行する。お前達の戦略を楽しみにしているぞ。
簡単に訳すとこういった内容だった。既に世界各地に6カ所の天にまで届きそうな塔型の《ダンジョン》は確認できており、一階層ごとに試練をクリアして最上階を目指す方式なのは確認できている。そして恐らくだが6カ所全ての最上階を制覇が、《魔人》の言う人類の勝利条件であるだろう。だが問題は戦力の配分であった。
現状、世界各地に出現した《ダンジョン》。それらによって生み出された《魔物》、そして《魔人》によって封印されていた怨霊や妖怪、《魔物》。これらが人類の全戦力を塔型に集中できないでいた。そして《魔人》はこれから本気で潰しに来ると声明を出した。つまり今まで以上の攻撃の中、塔型全ての攻略をしなくてはいけない。
「あの旅人と名乗る《魔人》はこの事を指していたのか」
中立の立場を貫く協力者の《魔人》は、この事態になる前に人類の戦力を上手く切り分け、防衛部隊と攻撃部隊に大きく分けるべきだと忠告をしていた。彼女はこれを見越していたのだろうか。
「現状、《魔物》の多くは《ダンジョン》から出現しております。総数は不明ですがまだ《魔物》達の動きは想定できます。問題は日本では《将門公》と《魔人》。この二つがどう動いてくるかですね」
「後は各地の《塔》の戦力案だな。素直に協力してくれればいいが」
「じゃあね湊。次会うときは敵として、お互いに遠慮せずにね」
突如としてカウントダウンを告げたノスと呼ばれる女性。そんな彼女の背後には時計盤が浮かんでおり、既に時計盤は12時を指していた。愛美はノスの傍まで寄って俺に別れを告げる。
「逃がす」
「《タイムストップ》」
俺を監視していた《冒険者》が逃げようとする愛美達に攻撃を仕掛ける。だがノスが放った《スキル》は彼らの動きを強制的に停止させる。まさしく彼らの時を止めたかのように《冒険者》達は微動にしない。
「湊。これは忠告。これから私達と戦うって事は今彼女がやったような《スキル》なんて回避できるようにしないとね。私達はそこら辺の《魔物》なんて蟻のように思える実力を有している。だけど力が欲しくてもそれは自分達で得るんだ。他人から受け取るべきではないよ」
「!?」
何故か愛美は暗にあのガスマスクの事を話しているのかと思った。もしかしたらあのガスマスクも《魔人》の1人なのかもしれない。
「忠告はした。彼女は期待しているんだ。《人類》が自分達の力で自立していく事にね」
そうして愛美とノスは時計盤と共に姿を消した。彼女達が消えたと同時に停止していた《冒険者》達は動き始めた。
「今のは?」
「《時間魔法》。今は現存しない時空に関する《魔法》」
「ってことは《魔人》は消滅した古代の属性の《魔法》を使うのか」
《冒険者》達は《魔人》が使う古代の強力な属性の《魔法》に戸惑っていたが、すぐに湊の元まで駆け寄る。
「知っているだろうが君はこれから彼女達と敵対する。それで構わないんだな?」
「ああ」
「はっきり言ってこちらも戦力に余裕がない。だからこそここではっきりさせておこう。君はもし彼女と会った時に迷わず戦えるか?」
《冒険者》は湊の事情を聞かされている。だからこそ湊に決意に揺らぎがないか確認を取る。湊ほどの素質の持ち主を弄ぶ程、この事態に関して余裕は全くない。むしろ猫の手も借りたい程である。
湊は真っ直ぐと問いかけた《冒険者》に答える。
「ええ。彼女は目的は知らないが我々は自分達の生存を掛けて彼ら《魔人》と戦う」
「いいだろう。基本は4人1組のパーティーで動いてもらう。すぐに編成にかかるぞ」
ノスに所定の場所まで送り届けて貰った後、エルメスは自分の役割を果たすべくとある空間にいた。そしてその空間には巨大な大木が聳え立ち、その枝からぶら下がる男に声を掛ける。
「オーディン。実は?」
「熟しつつあるが収穫ではないな」
大木には青々とした実がいくつか実っていた。だがどれも2人からすれば未完成であり、収穫には程遠いという見立てであった。
「いや一つだけ、完璧な実はあった。だが御方が収穫され《器》へ与えるところだったぞ」
「ええ。でも口には付けなかったみたいで助かった。でも」
「ああ、その時はお前の役目でありお前が志願した役割だ。そしてそれが唯一にして無二なる俺達の希望である。その意味、まさか忘れた訳ではないよな?」
「ええ」
《吊された男・オーディン》の言葉に《恋人・エルメス》は頷く。《人類》側にもそれなりの覚悟と決心はあるだろうが、自分達《魔人》もそれなりの覚悟と決心をしている。そしてここに至るまでにそれなりの苦悩はあった。1番の苦悩は紛れもない《恋人・エルメス》であった。
「!」
ここでオーディン、少し遅れてエルメスが今居る空間に現れた存在に勘づく。2人はその存在に視線を向けるとそこにはガスマスクを被るローブを羽織る人物だった。ローブから伸びる腕には黄金の林檎を持っていた。
「《恋人》、《吊された男》。直接会うのはいつぶりだ?」
「そうだな。俺はざっと1000年は会ってなかったな」
「私もそれくらいですかね」
「まあそれはどうでも良い。それよりも実は?」
エルメスと同様にガスマスクは大木の実がどういった状態かを管理人でもあるオーディンとエルメスに尋ねる。ここはオーディンが答える。
「そうですね。全くといって不完全ですね。貴方様が持つその実以外は」
「これを2人に託します。もし他の《器》がいるなら。《洗礼》をするのでそれまでは」
「ええ。心得ていますとも」
ガスマスクから黄金の林檎を受け取ったエルメス。すぐに《スキル》で保管する。
「では私は実が熟すまで《洗礼者》が誰が相応しいか観察しましょう」
ガスマスクはすぐに姿を消した。ガスマスクの気配が完全になくなったのを確認した2人は、受け取った黄金の林檎を確認する。
「本物だな?」
「ええ。まさしく《洗礼の実》。《救世主》を迎えるべく己の実を浄化し使徒へと至る巡礼者の求める至宝。オーディン、任せたわよ」
「さて。エルメスが見せたんだ。俺もいっちょ派手にやるか」
《皇帝・オシリス》はエルメスの覚悟が本物だとわかるとすぐに自分の持ち場に戻る。彼は北欧からユーラシア大陸に掛けての寒い地方。ここにある塔型の主には既に話を通してある。そして既にロシアの《ギルド連合》は精鋭を送り込んでいた。
「真っ先に攻略する心意気。気に入ったが少しばかり守るが薄いな!!」
オシリスの目の前にはロシアの最重要施設が見えていた。厳戒態勢の中、誰もがオシリスの存在に未だに気づいていなかった。
「さて《エリゴール》!!俺達の覇道を見せつけてやれ」
オシリスの背後にはこの現代にはいない真っ赤な甲冑を纏う騎馬兵が佇んでいた。そしてオシリスの合図と共に持っていた槍を天に掲げた。するとロシアの最重要施設付近の温度が急激に上昇を始める。それは熱帯地方や砂漠地方を越え始め50度を超え始めた頃には、屋外に出ていた者達がその暑さで次々と倒れ始める。だがこれで終わる事は無くどんどん気温は上昇していく。しばらくすると周辺の建物が砂塵のように朽ち始めていき、中にいた存在全ては外気に晒されると共に苦しみ始める。
5分もしない間に辺り一帯は砂漠の化してしまい、そこにいた生物全て朽ち果て骸となっていた。
「次は北欧。それらが終わったら南下していくか」
一瞬にして大国のトップ達を守る要所が崩壊した。《魔人》にとって滅ぼすのはたやすいことなのだ。だがそれを各地ですぐに行わないのは、《魔人》にとってまだ見込みがあり希望があるからであった。逆に言えばこれから彼らが攻撃を仕掛ける場所は、彼らにとって希望がないという事に等しい。
それは7月31日になる前に占拠されたホワイトハウスでも同様であり、彼らは今のホワイトハウスという存在自体が希望を摘み取る象徴と認識していたのだ。
彼らにとって国家や主義主張などは判断材料であるが、1番は現在においてそれらを指導する者達の素質。それが大事であるのだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は8/27です。
ではまた次回




