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World Apocalypse  作者: miyafinder
Chapter 2. Peace is the end of despair?
16/37

Episode 16. Tower of scrolls

こんばんは

ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。

「湊」


愛美が幼馴染となり藤家の娘になって数年。小学校で低学年から高学年になる頃の夏休み。愛美がいきなり自室にやってきた。愛美とは家が隣同士の部屋も窓を伝えば隣同士。なのでいきなり入って来る事は珍しくないのだが、今日の彼女は花柄のワンピースに少し大きめのバッグを携えてきた。


「今日は何の日だ?」


「何の日って今日は海の日では?」


俺達が通う小学校は前日の時点で夏休みに入っている。だからこそ俺は昨日、つまり夏休み一日目には半分課題を終わらせており、今日と明日で課題を終わらせようと計画していた。だが朝早くお出かけする格好で前触れもなく来る愛美には正直慣れた。だからこそ俺は諦めたように愛美に何の用かと尋ねる。


「だから今日は海の日だ」


「いや、俺は学校の課題を終わらせる予定だからその後でいいか?」


「そんなもの後でいいでしょ?さあ今から行くよ!!」


「俺達以外に誰が?」


「お義母さんがね。もう湊の両親には了承してあるよ」


俺の両親と藤家の夫婦は昔からの友人。だからといって息子に何も言わずに預けるのは止めて欲しい。出来れば事前に一言くれればいいのだが、まあ両親は仕事で多忙過ぎて伝えるのを忘れてしまっているのだろう。今日も俺達が起きる前には既に家を空けている。大人には学生の夏休みはないと言っていたが、本当にそうなのだろう。


「わかったから30分待って」


「むう。お義母さんの言う通りだった」


まあ藤さん達とは生まれてすぐ面倒を看て貰っていたこともあってか俺の性質を良く理解している。愛美は待つことに少し抵抗はあるが、渋々窓を伝って自分の部屋へと戻っていった。


「こいつでいいか」


愛美は去り際に行くのはとあるプールだと言ってくれた。つまり水着を用意しておけという事だ。俺はタンスから去年から《ギルド連合》の特別講習で使用した海パンを使用する。普通の水着に見えるが、どんな衝撃にも対応できる特殊な素材が使われているらしいが、まあ学校の水着を着ていくよりはマシだろう。


更に色々と対応できるように道具などをリュックに入れ込み、家の戸締まりを確認して限界を出ると既に藤夫婦が車を自宅の前まで回しており、後部座席では愛美が手を振っていた。


「お世話になります」


「いきなりで悪いわね。また二人は湊君に何も教えていなかったかしら?」


「おばさん。いつもそう思うならおばさんから教えてくれても」


「私達も忙しいのよ。わかるでしょ?」


二人も《ギルド連合》の関連組織で働いている。うちの両親よりは時間の融通は利くが、それなりに忙しいところらしく、いつも夜遅くまで家に帰ってこない事もある。


「それでどちらへ」


「俺の親父が持っているビーチ。今は一部の人しか公開されてなくて、今日は人があまり来ないらしいから愛美も安心できるからね」


藤さんの実家は日本の色んな場所に土地を持っている地主。財閥とかではないが、上手い事不動産とかやっているらしくそれなりに裕福だそうだ。二人は駆け落ちでほぼ勘当状態だったらしいが、今は仲は修復しているらしく、親父さんが今年はどうだと誘ってくれたらしい。ただまだ実家で藤家の当主であるお爺さん。愛美からすれば曾祖父はまだ二人の結婚を認めていないらしく、今回はその話し合いを設ける場であるらしい。その間は暇なので海で遊んでこいとのことだった。


子供二人でいいのかと思われたが、しっかりとビーチの方はライフセーバーが常駐しているらしく、訪れる客は、藤さんのお父さんが認めた相手…………所謂上流階級の人達だけなので、よからぬ事を考える者はいないらしい。いや、こんなほぼプライベートビーチのような場所であっても流石にマズイだろう。いや、だからこそ俺を呼んだのかもしれない。


本来なら愛美を俺のところに預ける予定だったのかもしれない。だがおそらく愛美を呼ぶ理由があって、そのお目付役兼護衛のような立ち位置として俺が選ばれたのかもしれない。


「じゃあここから少し時間かかるから眠っててもいいよ」




「きれーい」


愛美は訪れたビーチの風景に思わずそう叫んだ。俺も叫びはしなかったは確かに綺麗な海とビーチだった。底が見えるぐらい透明度のある海、ゴミもなくサラサラな砂、雲一つない晴天に人工物のない水平線。日本にこんな場所があるとは驚きだった。


「じゃあ二人はここでしばらく遊んでて。俺達は挨拶と話し合いがある。昼までには終わると思うからそれまで怪我しないようにね」


そういって藤夫婦は関係者以外立入禁止の看板の先へと向かっていった。そして残された俺達は空いているスペースに荷物を置き、一先ず水着に着替える事にした。


「どう?」


俺と愛美はほぼ同時に控え室から出てきた。男である俺は着替えるのが早いのは当然だが、愛美も花柄のワンピースの下に既に水着を着ていたのだろう。彼女が着ていた水着は大人っぽく白色の上に真っ赤な薔薇がちりばめられたビキニであった。


まだ小学生ながら女性らしく成長している愛美。そんな彼女が大人っぽい水着を着ると目に毒であった。それにしても


「いいのか?」


「そこまで人はいないでしょ?それに刺青している人もいるから平気だよ」


実は愛美は背中に大きな傷があった。俺が彼女を見つけた以前の記憶がないので、どういった経緯でついた傷なのかは不明。だが大きく時計のような模様の傷痕は女の子ならかなり気にするものだろう。だからこそ普段彼女は他人に肌を見せない。学校のプールでも背中が隠れている水着なのだが、俺や藤夫婦には見せられ、かつ刺青という傷をしている人もいる人が少ないビーチだからこそ、彼女は普段着ないような水着を着ていたのだろう。


「見惚れた?」


「そうだな。日差しが眩しい」


「もう。だったら湊の眼に焼き付けてやる」













「はぁ」


《魔人》による宣戦布告から数日経った7月30日。この頃愛美との思い出をよく夢に見る。彼女とはそれなりの思い出を築いていた。藤夫婦が亡くなった後もそれなりに接してきていた。だがそんな彼女が《魔人》であり、俺達《人類》を滅ぼす存在だったとは思いたくない心情の表れなのだろうか。それとも明日が愛美が言っていた期限だからなのか。


「明日か」


明日。愛美が俺が愛美と共に生きるか。それとも《魔人》として敵対するのか。それを選択する運命の日である。俺はまだ決めかねていた。まだ《魔人》達が単純に《人類》に対する反逆が目的なのか、それとも別の意図があるのか。協力してくれる《魔人》もいるが、彼女も肝心の目的を教えてくれない。曰く彼女は彼らとは別の方法でその目的を達成したいらしく、その目的は知られてしまうと意味がなくなってしまうのだとか。一体どういった目的なのか。ただ彼らは《人類》を滅ぼすのではなく《人類》に試練を与えるのだとか。まるで神にでもなったかのような物言いだが、実際に彼らは人とは別の存在。世界各地で現れた《魔人》達に、《人類》は一切太刀打ちできなかったのだとか。


「ん?」


俺はふと横に気配があるのを感じた。そして気配の方に視線を向けるとそこには見知らぬ人が立っていた。夏なのに全身ローブを羽織るガスマスクを装着した性別不明の人型。俺は思わず身構えたが、相手はやっと気づいたかとばかりに言葉を発する。


「我は《救世主》。汝に我の祝福を与えにきた」


「生憎いきなり他人の家に入り込む人を信用できないのだがな」


「それでいいのか?汝は大事な存在に手も足も出ない。彼女と対等に話し合える機会は欲しくないか?」


「お前が何者で何を目的にして何を知っているのか知らないが、お前から貰ったもので解決すべき事ではないんだよ。これは俺自身の問題だ」


俺の決断にガスマスクは感心したように頷いた。


「そなたのような存在が一般的であればこのような事はなかっただろう。だが《人類》は愚かな愚者だ。だからこそ愚者を正しく導く《先導者》が必要だ。そして《先導者》こそ今のこの世界に必要とする《救世主》。それが私だ」


「だったら大々的に自分は《救世主》と公言すればいいだろう?」


「そうだな。だが早い。羊が7つの塔を解くとき、その時こそ我の出番だ」


「羊?7つの塔?6つじゃないのか?」


現在世界には《魔人》や彼らが引き連れた《魔物》と《ダンジョン》によって大きく地形や都市構造が変化しているが、その中で世界各地に6つの天高く伸びる塔が出現していた。どうやらどれも相当強力な《魔物》が現れる《ダンジョン》らしく、現在同時並行で攻略をしているのだとか。


「一つは既に《人類》の手の中に。かの者達は愚か」


ガスマスクは意味深なことを言い残して霧のようにその場から消滅していった。


「どういう事だ?まだ6つの塔のどれもが攻略完了していないぞ?それにかの者?どういう事だ?」







「おい。奴が自ら動いたぞ。早い」


「仕方ないです。止めようとすれば我々の計画に勘づかれてしまう。多少の犠牲はやむを得ない。まだ私達が従順であると思い込ませないといけない」



ここまで読んでいただきありがとうございます。

次回は7/31です。


いよいよ次回から「停滞」していた物語が進み始めます。そう「停滞」している《人類》を大きく「前進」させるための。それは《人類》の進化の前進か、はたまた《人類》の破滅への前進か。


ではまた次回

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