Episode 14. Discussion and selection
こんばんは
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
「さてと。まだ期限まで時間はあるけど半数は《方舟》への《選別》も終わらせたようだね」
円卓の議長は各々《魔人》達がどんどん計画を進めている事を伝える。もう後戻りはできない。今までは《人類》社会に溶け込み、彼らの文化や生活と共にしていたがそういったある意味《魔人》にとっても平穏な生活には戻れない。
「まだ時間はあるとはいえ悔いの無いように過ごしておけ。それよりもようやく馬鹿を発見したぞ」
議長は話題を変えて失踪した同類を発見したと報告する。そして円卓上のスクリーンに映し出されたのは日本のとある海岸に上陸した懐かしの《魔人》の姿だった。次の映像はどこかのシェルター近くの監視カメラ、そして次は《ギルド連合》の施設付近にいる姿。
「恐らくだが奴はある程度の内容を《ギルド連合》に漏らした恐れがある」
「大した問題ではないのでは?」
右隣の喪服の女性が議長が恐れる程の事はないと断言する。例え一切合切自分達の計画や目的を話したとしても支障を来す事はない。だが議長は別の恐れを危惧していた。
「過度な《人類》への情報の吐露は《御方》に勘づかれる。何の為に派手にやったのかを奴は理解しているだろうに、それを知った上でこういった行動を取るんだ。奴がどういった考えなのか」
「彼女の軽率な行動や自由な行動は今に始まった事ではないのでは?」
ここで話をしたのは11番の席に座る細身で長身の女性。彼女はお気に入りの店の蒸しケーキを頬張っていて全く会議には参加しても声を挙げない。
「フォス。じゃあお前はあの馬鹿が何を考えているのかわかっているか?」
「簡単。政治的な思惑とかそういうのは考えずにとりあえず《ダンジョン》を攻略させるように促す。そして見つけた才能ある奴を《器》にする気だよ」
「結局我々と変わりませんな」
9番目の席に座る老人が失踪した同類の行動に呆れている。本筋は一緒だからこそ自分達と共にすれば良かったと言っている。それに彼女のやり方はある意味甘い。それで見つかれば良いが確実ではない。失敗できない事をするのに確実ではない行動は議長ら《魔人》達はあまり良しとしない。
「我々だって苦渋の決断をしている。だがこのままではいけない」
「ハミト。彼女は自分のやり方で私達とは離別した。多少の支障があれど問題ないのでは?」
「お前は甘いなフォス」
フォスの考えを議長は甘いと否定した。
「甘いのは貴方の計画では?彼女一人でどうにかできる計画だったらもはや既に破綻しているのも」
フォスが発言を終える前に議長の投擲したナイフがフォスの顔のすぐ横を通る。ナイフは彼女の座る椅子の背もたれに突き刺さっており、フォスの右頬からは血が流れていた。
「何?やる気?」
「それはこっちの台詞だ。この場において俺に勝てるとでも?」
「最強は私なのに?」
フォスは刺さったナイフを右手で抜き取ると右腕に力を込める。筋肉は隆起し血管が浮き上がりナイフはいともたやすく握り潰された。議長とフォスの間には見えない稲妻がぶつかりあい火花を散らせていたが、他の《魔人》達は二人の争いには興味なさそうにそれぞれ暇つぶしをしていた。
「報告は終わり?私、読みたい本あるから終わらせてくれない?」
ここで2番目の席に座っていた女性が争うなら早く面倒な会議を終わらせてくれと議長にお願いする。議長の許しが無い限り、誰も円卓の間からは出られない。
「いや、ここで一度はっきりさせた方が良いだろう。お前達は俺とあの馬鹿。どっちの方針に賛成だ?共通の目的があれどその方向性は違う。あの時は結局有耶無耶になったが結局各自の方針を俺は把握しきれていないからな」
「それ必要?」
「必要だヨハンナ」
議長はここでこの場にいる《魔人》に改めて問いかける。それは議長としての権限も使った問いかけ。答えないと永遠に円卓の間からは出られない。
「まずは俺は一度《人類》を絶望の淵に落とす。でなければ希望などない」
議長は今の計画をそのまま続ける方針とした。これにより議長はこの円卓の間から退出できるようになった。つまり議長の言った方針は本心であるという事だ。
「次はヨハンナ。お前の方針はどうなんだ?」
議長はヨハンナに発言を促す。ヨハンナは溜息を漏らしつつ本心を答える。
「私は正直今の《人類》には思う事は無い。でも彼らの作った文化や創作物。これには興味があるし新たな創作物も知りたい。だからこそ私は《人類》を救う為に確実な選択を取る。ジプーの方針には反対でありソロモン、貴方の方針には賛成よ」
ヨハンナは議長……ソロモンにそう答えた。これには嘘偽りもないのでヨハンナはこの円卓の間から退出できるようになった。
「もういい?」
「全員の方針を聞くつもりはないのか?」
「どうせ変わらない。この場にいる全員は様々な思惑があるとはいえソロモンの方針には賛同する」
「それは《書》が導く結果か?」
「私の直感」
ヨハンナはそう言い残すと円卓の間から出て行った。
「次は……」
ソロモンは次の3番目の席の女王様に目を向ける。だが彼女は呑気にお気に入りのワインを飲んでいた。
「ソロモン。貴方は大人げないわね。議長権限で無理矢理彼女の本心を探るなんて」
「そういうお前はどうなんだ?エ……《女帝》」
エンプレスはソロモンの問いかけにはっきりと答える。
「ソロモンの方針に賛成」
エンプレスはそのまま立ち上がり円卓の間から退出した。退出できたからにはそれが本心なのは間違いないだろう。ソロモンは彼女の態度や行動に少し苛立ちながらも次の《魔人》に問いかける。
「ソロモン。俺が言えた口ではないが確かに無理矢理だな」
「お前も言うのか《皇帝》」
「そうだ《魔術師》。まっ、ヨハンナの言う通り俺もソロモンの意見には賛成だ。俺は一応この場にいるつもりだ」
《皇帝》は一応全員の考えを把握するようで円卓の間に留まった。
「面倒だから完結に言わせてもらう。ソロモンの賛同する」
続く《教皇》は簡潔に発言して円卓の間から出て行った。
「全く。こんな事で分裂気味になるなんてね」
「エルメス。君はどうなんだ?」
愛美……エルメスはソロモンに皮肉を言うがソロモンは気にせず問いかける。
「私も困るからソロモンの意見に賛同」
「俺もだ」
エルメスの直後に《戦車》も答えるとそのまま二人は退出した。《戦車》はまた日本に行って続きをするつもりなのだろう。
「ハミトは?」
「フォスを後回しにするということはやりあうのじゃな?」
「ハミト?」
「おお怖い怖い。お前さんに賛同だ」
老人は怖がる素振りをして退出する。ソロモンの苛立ちは更に上がっていくが、後でフォスにぶつけるとして最近ようやく《選別》を終えたノスに問いかける。
「私?元から貴方に賛同」
「そうか。じゃあ」
「私も」
続く《正義》もソロモンに賛同した。ヨハンナの言う通りの展開になりつつあるが、議長権限を使った以上、あと二人にも問いかける。
「わかっているだろ。訊く必要皆無だな」
「同じね」
ディンとニュクスは言わなくてもわかっているだとして退出した。こうして最終的に残ったのはソロモン、《皇帝》、フォスだった。
「フォス。一応訊こう」
「貴方には賛成だけど貴方の彼女に対する扱いには反対」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は7/16です。
そして物語は湊と愛美の約束が加速を促す




