Episode 13. Clocks tick time, and ticking life
こんばんは
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
「話を聞かせてもらおうか」
刻一刻と状況が悪くなる中、《ギルド連合》の事務所があるビルでは湊達の前に現れた謎の女性の聴取が行われていた。理由は簡単であり彼女は自ら自分は《魔人》と公表し投降したのだ。投降といっても彼女を攻撃しようものなら、彼女の周りにいる忠犬の如き狼に瀕死の重傷を負わされるのだが。
「まず私は《旅人》」
「《旅人》?」
「私達に自分達の性質を表す名前がある。そこから私達は各々名前を付けている。私の場合は今お前達《人類》を襲っている《魔人》達とは決別しているからその名前は捨てている。今の私は自己流の方法で彼らとは違った解決を図る為に旅をしている」
《旅人》は《魔人》達は共通の目的を持って《人類》を襲っていると話す。
「ではその目的は何だ?世界征服か?」
《ギルド連合》の幹部が《旅人》に《魔人》の目的は何かを問い詰める。だが《旅人》を脅すように机を叩いたので彼女の忠犬が唸り臨戦態勢を取っていた。
「落ち着いて」
《旅人》は狼を撫でて宥めるながらも幹部の質問に回答する。
「私達は《人類》の繁栄……というよりも《人類》の滅亡の回避。それが最終的な目的だ」
「《人類》を救うと?」
「一言で言えばな」
それにしてはあまりにも《人類》を滅亡させているようにしか見えない彼らの行動に、《旅人》の語った目的とはかけ離れている。
「疑問になるのもわかるが、彼らはこれが《人類》の救いとなると思って行動している。だからこそ私は別の方法があるとして彼らとは決別した」
「それはつまり近い未来にこれ以上の災厄が待っていて、それが《人類》を滅亡させるものだと?」
ここで《旅人》に鋭い指摘をしたのはビデオ通話をしている人物。その人物は《ギルド連合》の最高幹部の一人であり、映っている彼の映像は最高幹部のマークであった。
「そうだ。まあそこまで教える気は無い」
「何だと!!」
幹部は更に《旅人》に詰め寄ろうとするが狼は吠える。更に
「お前。黙ってろ。現場で指示を出してろ」
最高幹部からは邪魔だと言われ追い出される。この場においてビデオ越しとはいえ《ギルド連合》の最高幹部の指示には逆らえない。
「理由を訊かせて欲しい。君は彼らとは違った方法で《人類》を救うと言った。それは今のように私達と協力する事ではないのか?」
「いや。この際だからはっきり言う。君達は今のままでは滅亡は免れない。彼らは無理矢理極度な刺激を与えて《人類》の進化を促すか、私の場合は自分から育てるか。その違いであって君達にこれから確定した未来を教えても意味はない」
「私達を果物と例えているのですか。まあいい、それよりも私は君達《魔人》はどういった存在なのか。それについても訊きたいのだが」
「変わらない。別にケイ素を主体とした生命体とかそういう訳でもない。ただ私達はこの世界においてはイレギュラー。それだけだ」
「時の流れを感じる」
場所はスイスの首都ベルン。スイスにも《ダンジョン》が出現した事で非常事態宣言が発令され、旧市街の住民は誰もおらず無人の場所で、旧市街のランドマークを見上げつつ懐中時計を握る女性が立っていた。
「そうですな。以前に会ったのは100年以上前でしたかな」
そんな女性に話しかけてきたのは杖をついた老人だった。深く刻まれた皺は老人が長い時間苦労をしているのだとわかる。
「ええ。まさかあの子供が今では世界的な時計技師になっているなんてね」
老人は世界で一番の腕を持つとされる時計技師。世界各国で彼の時計に注文が入り、100歳を超えてもなお現役であり、今はかつて手がけた時計の修復に専念していた。そんな彼がいつかのインタビューにおいて時計技師になる経緯を話していた。それは自分に時を刻むものの魅力を教えてくれた謎の女性。いつの間にか姿を消してしまい、そんな彼女と再び会うために彼は時計技師となった。自ら作った時計で彼女を振り向かせる為に。
「しかし貴方は現れなかった。そして今この時になって現れた。何も変わらない姿で。私は《冒険者》ではなく、《ギルド連合》でもないがこれだけはわかります。貴方は《魔人》だったのですね」
「ええ。まあ貴方をここで殺すとかそういう事はしないわ」
「ええ。わかりますとも。長年生きてると何故かわかるのですよ。これは《人類》に与えられた試練なのだと」
「!」
ごく稀に、年齢や性別、出生が全く違っても本質を見抜く存在はいる。そして目の前の時計技師も今の状況の本質を見抜いていた。
「そう。じゃあ長年私を待ち続けた貴方に見せたいものがある。いいかしら?」
「ほう」
「動かないで待ってて」
老人は一瞬にして別の場所へと瞬間移動した。そこは先程の旧市街に程近い屋敷。だがこんな場所に屋敷など記憶にはなかったと老人は思っていた。
「ここは私のコレクションを飾ってるのよ」
老人は《魔人》のコレクション部屋を通された時、あまりにも驚きの光景に心が躍ったのだ。何故なら一面に様々な時計が飾られているのだ。時計技師であり誰よりも時計が好きな老人には少年のように楽しめる場所だ。
「凄い。これは」
老人は一つの置時計に見つける。それは伝説と言われ、未だに発見されていないものであり、時計コレクターなら喉から手が出る程の代物だった。
「そう。世界で5個しか製造されておらず、現存する最後の時計。他には世には出回らないものとか、価値が計り知れないものも多い」
「これ程のものをどうやって?」
「自己紹介がまだだったね。私はクロノス。《運命》を司る《魔人》」
「クロノス。それが貴方の名前でしたか。死ぬ前に聞けて良かった」
「貴方の時計は素晴らしいわね」
クロノスは一つの棚を老人に見せる。それは老人が手掛けた時計であり、中には時計技師として新人の頃の作品もあり、彼女は老人の事を覚えていたのがわかる。
「貴方を最高の時計技師としてお願いする。この頃この館にある時計達のメンテナンスが必要でね。私はできなくないけど、やるんだったら《人類》で最高の技師に頼みたかったのよ」
「貴方に認められるとは光栄です」
それから暫く時計技師はクロノスの所有する屋敷にある時計のメンテナンスを行う。どれも素晴らしく手入れがされており、クロノスが時計達を丁寧に大事にされているのがわかった。
「これで最後ね」
屋敷にある最後の時計のメンテナンスを終えクロノスは何故か悲しそうな呟きをする。彼との時間はクロノスにとっては楽しかった。互いに時計の魅力を話し合い、他の《魔人》達が理解できない時計の魅力や話。だが出会いがあれば別れもある。
「貴方はここにいる気はないのね」
「ええ。私は時計技師。今のこの状況でも私を必要とする時計はあるでしょう」
「そうね」
「ですがそんな私でも貴方の持つその懐中時計。それだけは気になるますな」
クロノスはいつも持つ懐中時計。それだけは彼女は時計技師にも触れさせていない。時計技師はそんな彼女の持つ懐中時計が他のとは全く違うものだと見抜いていた。
時を刻む速度なおかしい。秒針が進んだり戻ったりと壊れているように見えるが、一部スケルトンとなっている時計の駆動部はしっかりと動いている。
「これは貴方に見せるものではないのよ。でも少しだけなら見せてあげる」
クロノスはその懐中時計を時計技師に見せる。時計技師は懐中時計の動力部がまるで宇宙のように煌めく石に不思議な感覚を覚える。
「もうお終い。今までありがとうね」
クロノスはここで新たな懐中時計を出す。今まで時計技師も見た事ないものであり、その時計の針は11時30分と指していた。そしてクロノスが懐中時計の上部にあるスイッチを押すと針は一気に12時に進もうとする。
「!?」
すると時計技師は突如発生した心臓の痛みに倒れ込む。
「楽しかったわ。だから貴方には少しだけ眠ってもらいます」
クロノスが言い終えるのと同時に懐中時計は12時を指す。そして時計技師の心臓の鼓動はなくなってしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は7/2です。ではまた次回




