Episode 12. What do you see at the end of your eyes?
こんばんは
ブックマークしてくれた方々、読んでくれた方々に感謝です。
「時雨!!」
相棒であり恋人の絹田翔のいる病院を後にする立花時雨に時雨の父であり立花家当主は彼女の腕を握り引き留める。しかし時雨は父親の手を振りほどく。
「邪魔しないで。何回も言っているけぢ私は《ギルド連合》の職員。一般の人々を逃がす義務がある」
「それ以前に時雨。お前は私の娘だ。娘を危険な場所に送り出す気は無い。それが目の前だったら尚更だ」
再び親子喧嘩が勃発する直前だった。しかし今度は時雨には《ギルド連合》からの通信。立花家当主からは執事からの報告で喧嘩は起こらなかった。そして二人が聞いた内容はほぼ同一のものだった。
「将門公の首塚に《魔人》が?」
「将門の祟りの恐れか」
将門公の封印はまだ残っているが、《東京大結界》の全てをもって封印しているのが将門公なので一つでも封印が解かれれば破って復活する恐れがある。だからこそ《ギルド連合》はなるべく被害を与えない為にも大規模な計画を立てていた。そしてその影響が立花財閥といった財閥や企業などにも響いていた。
「すぐに避難してください」
時雨は父親にそう命令する。だがその命令に対して彼は娘にこう言った。
「では絹田の坊主を連れて中部に移動するとしよう」
「!?」
「このままでは坊主は絶対安静のまま戦線復帰は難しい。だったら我が財閥お抱えの医師達で治療するのだよ」
「人質って訳ね。随分と悪い事を」
「人質?何を言っている?大事な娘の婚約者だぞ?」
時雨は父親の親切を素直には受け取れない。それは過去に彼の親切が結果として時雨を傷つけたからだ。《ギルド連合》の《探索者》として引き抜かれた時に出来た溝は更に深まり、以降彼女は一切立花家に帰っていない。
「仕方ない。時雨。今の任務を終えたら一度帰ってこい。それで手を打とう」
「翔が無事になったら連れて帰るわ。それと翔を本当に認めてくれてありがとう」
これ以上引き留めるのはダメだとして今回は父親が折れた。時雨は父親にそう言い残すとすぐに救援を必要とする場へと掛けだしていった。そんな娘の後ろ姿を見た父親はかつての最愛の人物と重ねていた。
「しばらく会ってなかったが随分と娘は夕立に似てきたな」
そんな呟きに控えていた執事は応えた。
「はい。奥様に随分と似ていらして。ですが旦那様の頑固さも似ていますね」
「ふん。似て欲しくないところだな。さてと、絹田だけじゃなく病院に残っている患者も連れて行け。どうせ彼らを運ぶ程の余裕は今の日本にはない」
「貴方様は?」
インドの忘れられたとある寺院において唯一祈っていた老人の前に突如として祀られていた像が壊れた。そして現れたのは壊れた像そのままの姿の右半身が青色の肌に男性的な身体、左半身は赤色の肌に女性的な身体をした人間ではない存在だった。
「私はアルダーナーリーシュヴァラ。シヴァとパールヴァティーの合体した神である」
右手には三つ叉の槍を持ち、左手には可憐な花を持っていた。それはまさしく老人が信仰していた神その者の姿であり、老人の信仰が本物であるという証拠だとして老人は涙を流していた。
「嬉しいな。私を信じる者が一人になったとはいえ感謝されるのは」
「アルダーナーリーシュヴァラ様。今世界中で起こっている災いをどうか乗り越えられるように導いてください。そのためならこの私の命を使っても構いません!!」
老人は必死だったのには理由があった。彼の家族は大地震により被害とその後に蔓延し始めた謎の感染症により唯一生き残っている末の孫夫婦とその子供達も命の危機になっていた。そして欠かさずお祈りをしていた神へと信仰をしてどうにか切り抜けないかを真剣にお願いしていたのだ。
「少し覗かせてもらうぞ」
アルダーナーリーシュヴァラは人差し指を老人の頭に置く。人差し指はそのまま老人の頭部を貫通して脳に触れると老人の記憶を読み取る。そして老人が何故こう至ったのかを把握する。
「なるほどな。では救ってやろうではないか」
「ありがたk……」
アルダーナーリーシュヴァラが救ってくださると老人は歓喜した。次の瞬間、老人はアルダーナーリーシュヴァラの持つ三つ叉の槍により心臓を貫かれた。
「済まないな。私はアルダーナーリーシュヴァラの姿をした別の存在だ。本物はシヴァとパールヴァティーとして祀られているぞ」
命の灯火が消える中、老人が最期に見たのはアルダーナーリーシュヴァラだった姿が消え派手で奇抜な格好をした青年であった。
「さて。どんどん信仰者を抹殺しないと計画に支障を来す」
《魔人》はインド各地に点在する神々を信仰する者達を次々と抹殺していた。理由は信仰者の数に比例して神々の力は増す。《魔人》としては神々に頼るのではなく人間の力のみでこの絶望を乗り越えてくれないと困るからだ。
「ようやく見つけたぞ」
《魔人》の青年は次の場所へと向かおうとするといきなり《転移》が封じられた。そして周囲を見ると外套を纏う集団に囲まれていた。話から察すると《魔人》の青年を追い掛けていたのは間違いない。そして《魔人》を追い掛ける程の実力を持つ集団は絞られる。
「《ギルド連合》か」
「貴様が各地の信仰者を殺しているのはわかっている。それでシヴァ様とパールヴァティー様の復活を止めようとしている事もな」
「勘違いしてるな。俺は別に二人が出るのが嫌だがそれが目的ではない。お前達が自分の力で乗り越えようとしないからこうしている」
「何を言っている。そもそもお前達は何が目的だ!世界征服か?」
「『人類に希望を』。ただそれだけだ」
「は?」
「じきにわかる筈だ。だが今はその時ではない。今は私よりも《ダンジョン》を攻略する事を推奨しておく」
《魔人》の青年は杖を掲げると周囲に張った《転移妨害陣》が破壊され一瞬にして《魔人》の青年は姿を眩ませた。
「くそ!やっと捕捉したのに」
「まさか結界ごと破るとは。想定以上だ」
「それよりも奴の言った事が気になる。ここに《ダンジョン》なんて存在……」
《ギルド連合》の戦闘員達はインドで確認されている《ダンジョン》を思い浮かべる。しかし出現した《ダンジョン》は確認できていなかった。だが二つだけこの《魔人》による宣戦布告よりも以前、インドの歴史が確認された時点で既に存在している遺跡があった。その最奥部は未だに《ダンジョン》として残っており攻略されていない。
「とにかく今は一刻も早く捕らえて奴らの計画を」
「おい。それよりもここ崩れているぞ」
「やれやれ。仕方ない。面倒だがインド政府に《ダンジョン》に専念するように動くか」
《魔人・魔術師》は崩れていく寺院を眺めつつ、想定よりも自分の存在を捕捉し始めた事で少々計画を早めたり追加で色々とする羽目になっていた。《魔人・魔術師》は自分の端末を取り出すと慣れたように文字を打っていく。
「お兄さん。何してるの?」
そんな中、一人の少女が《魔人・魔術師》の後ろから声を掛けた。《魔人・魔術師》は全く気配を感じなかった事に驚きつつも冷静に少女の姿を確認する。
少女は薄汚れたワンピース一枚という簡素な姿。サンダルも経年劣化が激しく、彼女の長い髪はこれまた汚れた紐で滅茶苦茶に結ばれていた。
「うーん。誰かに伝言を送っていてね。そういうお嬢さんは?こんな場所に一人とはね」
「気づいたらこの街で住んでる。毎日色んな人の残した物を貰ってるの」
少女はどうやら《魔人・魔術師》が今居る場所の近くにある街のスラム出身らしい。毎日物乞いをしているのだろうが、普段からそんな生活をしているので常識がズレているみたいだ。
「それって嫌な人に送るものなの?」
「?、どうしてそう思ったんだい?」
少女は《魔人・魔術師》が嘘ではないが本当の事実を述べた伝言の相手が嫌な相手だと認識している。確かに《魔人・魔術師》にとって今から送る相手は嫌な相手となる。ではどうやってそれがわかったのか。自分が少女の気配に気づかなかった事もあって彼は質問する。
「だってその物から黒い煙が出ているんだもん。黒いものは嫌なものだもん」
「黒い煙?」
「やっぱりお兄さんも見えないのか。私にしか見えないけど誰かが誰かに向ける気持ち?を私は色で見えちゃうんだけどね」
《魔人・魔術師》は驚いた。時たま色んな感覚が同一視してしまう障害がある。音が色や形で認識したり、触った感触が文字として浮かび上がったり。彼女の場合は相手の感情を色として判断できるというものだろう。
「じゃあ今までその黒い煙を避けて生きていた訳か」
「そうだね」
「じゃあお兄さんを避けるべきじゃないかな?」
今《魔人》達は《人類》を絶望の淵へ陥れようとしている。相手の感情がわかるなら避けるべきだろう。
「え?だってお兄さんからは綺麗な白色の煙をあえて真っ黒な煙で覆っているだけじゃん。その伝言の相手にあえて真っ黒にしているのかな?あれ?でもその黒さとは少し違うみたいだけど?」
少女は真実を見極めている。それにより《魔人・魔術師》は少女に興味を持った。
「君はこのままの生活を過ごしたいかい?」
「?」
「これ以上の暮らしを求めたりはしないのかい?」
「だってこれが私の日常」
「君の眼は正しく物事を見極められる。だから暫くお兄さんと一緒に行動しないかい?そしてお兄さんやお兄さんの仲間達が行う事について何を思うのか。それを見てくれないかい?勿論、その間は君の世話はお兄さんが引き受けるよ」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回は6/18です。
ではまた次回




