表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/21

2.速攻で婚約破棄イベントと事後処理が来ました

自称女神様が消えた次の瞬間―――

突如、周囲の人が一斉に動き出し、これまで物音一つ無かった世界に音が戻りました。



「アイオライト、聞いているのか?」

茫然とたたずむ私に向かって、鮮やかな金髪に深い青い眼の男の人が苛立ったような声を出します。



『アイオライト』


その名前を聞いた瞬間、これまでこの世界で過ごしてきた十七年分の記憶が一斉に蘇ってきました。


すみれ色の瞳と、薄っすらピンクがかったシャンパンゴールドの金髪。

やや吊り上がった大きな猫目とスラリと伸びた背が美しい、公爵令嬢にしてこの国の第一王子の婚約者。

それが異世界転生してしまった、今生のこの私です。



…………。

って、これ前世の私が好きでやってたオンラインRPGじゃない!


妹がハマってた乙女ゲームやないかーい!!



動揺のあまり、全力で関西若手お笑い芸人のようなベタなツッコミをしてしまいました。

前世でもそんなキャラじゃなかったのに。


もしかして、アイオライトの元の性格なのでしょうか。

脳内でベタベタなツッコミを入れまくる美貌の悪役令嬢……。

公爵令嬢もいろいろ大変なんですね、分かります。



私は乙女ゲームには興味がなく、このゲームはやったことはないのですが、オタな妹がいつも熱心に布教活動をしてくれたので大体のあらすじは知っていると思います。


確か……

アイオライトは十七歳の時、卒業イベントで婚約破棄された末、国外追放されたり、投獄の末処刑されたり、恨みを持ったキャラに刺殺されたり、魔物に襲われて死んだりテンプレ的な破滅を迎える事になるはず。



そのイベントが起こるのは後どのくらい先なのでしょう?

悪役令嬢転生物の小説のように(乙女ゲームはやりませんが、お気づきのようにネット小説は大好きです)、今のうちに逃走準備したり、周囲の人間に根回ししたりする時間は残っているでしょうか?!


あわてて周囲に視線を巡らせば、先程私の名を呼んだ金髪イケメンこそが、このゲームの攻略対象でありアイオライトの婚約者である第一王子、ユークレース様その人であることが分かりました。


ユークレース様の後ろでは、艶やかな黒髪にラピスラズリの様な煌めく大きな瞳が愛らしいこのゲームヒロインちゃんと思しき女の子が、固唾を呑んでこちらの様子を見守っています。



何て返事をしたら良いのでしょう?!

そう焦った時でした。

ユークレース様が小さく舌打ちをした後、冷たく言い放ちました。


「アイオライト、以上の罪によりお前は国外追放とする!」



根回しも何も、婚約破棄イベントの真最中でしたか! \(^o^)/


一瞬人生オワタかと思いましたが、どうやら国外追放エンドのようなので生存の可能性がまだ残されているようですよ。

ヤッタネ?



とりあえずユークレース様の気が変わらないうちに寛大なお心に感謝して食い下がることなく大人しくとっとと引き下がりました。



一瞬、前世の妹に

「お姉の、そうやってきちんと相手と向き合わずに何も言わずに身を引いちゃう所、良く無いと思うなぁ。……甘え下手というかなんというかさ」

そう言われた事を思い出さないでもなかったのですが、食い下がったところで日本の由緒正しき庶民として育った私に王妃が務まるともおもえませんしね?

とりあえず死亡エンドで無かっただけましと思うことにしました。





さて、いきなり追放された先でどうやって生きていこうか。

そんな事を問答無用で乗せられた馬車の中、前向きに考えていた時でした。

暗い森の中、突然馬車から引きずり降ろされました。



国境はまだ遠いはずですが……。


ゲームでは『国外追放』という事になっていましたが、王家に恨みをもったであろう人間を野放しにするようなそんなリスキーな事するはずないですよね、分かります(本日二度目)。

フードを目深に被り、騎士服を暗い色の外套で隠した男が私に向かって剣を抜きました。



自称女神様、何が『この世界ではちゃんと幸せに長生きするのよー』ですか!

速攻で死にそうなんですが!!!

そう思って思わず目を閉じた瞬間でした。



「俺の剣を避けただと?!」

騎士さんの慌てた声が聞こえました。


うん?

避ける??

公爵令嬢が、騎士の剣を???

『まさかね』

何かの間違いだと思った時、おそらく騎士さんもそう思ったのでしょう。

変に二人で見つめあい頷きあってしまいました。

照レ。


その後、気を取り直した騎士さんによって、私に向かって再び剣が振り下ろされます。



……あれ?

ホントだ!

私、避けてるぅ?!


決して相手が弱いようには見えないんですが、何故か体が勝手に余裕綽々で相手の剣を避けて見せます。


凄い!

これなら一生避けきれる気がします!!



でも剣を向けられるのは怖いから、せめてもの反撃とばかりに足元にあった小石を投げてみました。

するとそれが御者さんの右手にクリーンヒットします。

映画の銃撃戦で銃を撃ち落とされた人のように御者さんの手からスローモーションで剣が落ちました。



「クソ!魔術を使うのか」

ポカーンとしている私に、御者さんが右手を抑えながら忌々し気に言い捨てます。


……魔術、使いましたっけ??

石は投げましたけど???


でも魔術が使えれば生き残る確率がグンと上がりそうです!

アイオライトが魔術を使うなんて妹から聞いていませんでしたが、ご都合主義の何でもありのこのゲーム、もしかしたらそんな裏設定とかあっても不思議ではないのではないでしょうか?!

こっちも命かかっているんで、ダメもとでもやってみます!


vindr()

あ、パニックのあまり、癖で好きだったオンラインRPGの中の呪文唱えてしまいました。

だからゲーム違うのに……。


そう思った瞬間でした。

竜巻のような風が突然何もなかった地用から沸き起こり、あっという間に御者さんをどこかに吹っ飛ばして行ったのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ