1.乙女ゲームの悪役令嬢に異世界転生?したみたいです
子どものころからゲーム大好きっ子でした。
オンラインRPGで無双するのだけをささやかな趣味として慎ましく生きていた筈なのに……。
気が付いたら知らない場所に居ました。
何故でしょう。
確か職場からの帰り道を歩いていた筈なのに、いつの間にかテレビで見た中世のお城の中のような場所にいます。
周りには人がいるのですが、皆さんやはり日本人とは異なるヨーロピアン的顔立ちに、金やこげ茶の髪をしていて、何故か一時停止をしているかのようにピタリと動きを止めています。
一時期はやったフラッシュモブとかいうヤツでしょうか?
……とりあえず空気を読んで一緒に止まってみました。
集団行動の輪を乱さない、コレ大事です。
私は昔から空気が読める子です。
とりあえずじっとしていると、
「こんにちはー」
突然背後から陽キャっぽい女の人の声がしました。
自分に声を掛けられているのかがいまいち分からなかったので、なるべく動かないように気を付けながらゆっくり振り返ります。
見ると、白い髪(ネット小説風に言うならシルバーブロンドですね!)にギリシャ神話の挿絵で見るような服装をした、めちゃくちゃ美人なお姉さんが、親し気にこちらに向かって手を振っていました。
ギャル怖いとか偏見はないですが、これまでの人生の中で事務連絡以外係わりのないタイプです。
ばっちり目が合っているようには思うのですが、念のため周囲と後ろを確認します。
やっぱり他の誰でもなく、私と目が合っているようです。
とりあえず、動いたようにも動かなかったようにも見えるくらいの微妙な揺れ具合で軽く会釈で返しました。
私じゃなかったら恥ずかしいですし、フラッシュモブぶち壊したら大変です。
そんな私の気遣いに構うことなく、陽キャな美女さんは声を潜めることなく楽し気に話始めました。
「初めまして、女神でーす。あなた、車に轢かれて死にそうだったから、あなたの好きだったゲームのステータスそのままで、あなたの好きなゲームに転生させてあげたのー」
うん?
コレ……まさか、ネット小説業界において既に飽和状態ともいわれている異世界転生というやつでしょうか??!!
今度こそフラッシュモブ関係なく固まった私を無視して、美人で陽キャそうな自称女神様は言葉を続けます。
「ううん、いいのよ、お礼なんて。人助けが仕事であり趣味みたいなもんだから」
大輪の花がほころぶような、それはそれは美しい女神スマイルで微笑みかけられ一瞬呆けそうになりましたが……
「まぁ、昔からおっちょこちょいで時々クレームつくんだけど。エヘ☆」
って言葉が小さく聞こえ、ここに来る直前のことがパッと思い起こされました。
確か、短い横断歩道の手前で信号待ちをしていた時でした。
信号を渡り切った先にある大きな交差点を青信号で渡っていくサラリーマン風の男性に向かって信号無視のトラックが迫っていて
『危ない!!』
そう思ったのです。
……うん???
いや、私……
全然大丈夫だったはずですけど?!! Σ( ̄□ ̄;)
仮にトラックがサラリーマンに気づいて急ハンドル切ったとしても、ガードレールがいくつもあったし、絶対大丈夫なくらい離れてましたけど?!?!
……え????
おっちょこちょい????
何から切り出していいのか分からず、まだ固まったままの私に、自称女神様は
「とりあえず、十七歳までこの世界で生きてきた記憶をあなたの中に入れておくから何も心配することはないわぁ」
と、大変慈悲深く微笑まれました。
いや、待ってください!
何か流されて一瞬お礼言っちゃいそうになりましたが、多分前提の部分間違えてます!!
おっちょこちょい、やらかしてます!!!
自称女神様の間違いを指摘しようと口を開こうとした瞬間でした。
「それじゃあ、この世界ではちゃんと幸せに長生きするのよー」
そう言って自称女神様は一度強く光ったかと思うと、光と共にスッとどこかに消えてしまったのでした。
読んでくださり本当にありがとうございました。
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