共感するもの
朝のお祈りを済ませ、早めにソールの所に行った。
今朝はフィンが一緒に来てくれる。
朝早いせいかあまり人もおらず、フィンと手を繋ぎゆっくり歩いた。
「おはようございます、ソール。」
「おはよう、エスカ。」
ソールの牢につくと、昨日と同じように格子越しにステラヒールを唱えた。
「どうですか?」
「楽になってる。ありがとう、エスカ。」
「明日はこれないかも知れませんが大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。無理せずゆっくり癒してくれ。それに今からエスペラに行くんだろ。気をつけてな。」
ソールは私に優しくそういうと、フィンにも感謝を言った。
「フィン様、感謝してます。エスカのおかげで呪いが徐々に消えてます。」
「…。様は要らない。フィンでいい。お前が言うと皮肉に聞こえる。」
ソールは少し笑ったように見えた。
「エスカ、次に来てくれるのを待ってるよ。エスカ、フィン、お気をつけて。」
ソールが挨拶すると、フィンは、行こう、と手を握り立ち去った。
「フィンはソールが嫌いですか?」
「嫌い…ではないが、逆に何故エスカはソールを気にするんだ?」
「…似てると思いました。」
「似てる?エスカは可愛いがソールは可愛くないぞ。」
「そ、そういう事ではありません。」
何故急にさらっとそんな事を言うの!?
「じゃあ何だ?」
「孤児かどうかはわかりませんが、幼い頃から虐げられて、恐らく昔から魔術の才能があったのではないでしょうか。私も回復魔法が昔からあって、幼い頃は人と違うと気味悪がられたことがあります。私の場合は人に害をなすものではありませんでしたが。」
「共感するものがあるのか?」
「上手く言えませんが、なんとなく。」
力の性質が違うのはわかっているけど、フィンには上手く説明できない。
「エスカはソールに気はないのか?」
「気?何の気ですか?」
フィンは立ち止まってじっと私を見た。
「…ルディが、フィンが嫉妬すると言っていました。もしかして私を疑ってますか?」
「…エスカは疑ってないが…」
「ソールはルディと同じように友達になれると思っただけです。」
「ルディと同じか?」
「そんな感じです。」
フィンは少し横を向いて、耳が赤くなっていた。
「エスカ、少し目をつむってくれないか?」
目をつむる?見られたくないのかしら?
「わかりました。」
目をつむるとフィンが抱き締めてきたのがわかった。
「フィン!そ、外です!」
「気にしない。」
いやいや、少しずつ、出勤してる人達がいますよ!
「フィン?」
「エスカのことになると俺は嫉妬するようだ。すまない。」
「私に嫉妬するんですか?」
「…ちょっと違う。エスカに男が近づくのが嫌なんだ。」
そりゃそうだよね。私に嫉妬はおかしかった。
って、フィンも私と同じように思っていたということ?
「私もフィンにマリーベル様のように抱きつかれたら困ります。」
「エスカ以外に心は動かないよ。」
「私も同じです。」
その言葉にフィンはやっと離してくれた。
「ドレスが完成したらすぐに結婚式をあげよう。」
「私も早くしたいです。」
フィンの笑顔を見ながら二人で手を繋ぎ邸に帰った。
これからエスペラ国に出発だが、今この二人の時間を大事にしたいと思った。




