ヘクトルの告白
目が覚めると、どこかの地下牢のような一室だった。
まだ頭も重く、わけがわからずパニックになりそうだった。
「ここはどこなの…、フィン会いたいわ…」
一人呟くと、後ろに気配を感じた。
後ろを振り向くと、ヘクトル様が倒れていた。
「…ヘクトル様?」
ヘクトル様をみると、まだぐったりしており、顔色が悪い。
こんな時だが、心配になりヘクトル様を癒した。
「ステラヒール!」
中々顔色が変わらず、やはり呪いなのでは、と思い、益々癒しに力を入れた。
その時、ヘクトル様から黒いモヤがブワッと溢れ出ていき、光に包まれ消えた。
やっぱり呪いがあったんだ、と思ったが今ので消えたのがわかった。
ヘクトル様は、うーんと言いながら目を覚ました。
「ヘクトル様、大丈夫ですか?」
「!?、聖女様?」
「エスカです。お加減はいかがですか?」
ヘクトル様は体を触りながら、ダルさがない、と独り言のように言った。
そして辺りを見回して、私と同じように驚いていた。
「ここはどこですか?」
「わかりません、気がついたらここに…」
「…エスカ様が癒してくれたんですか?」
「はい、マリーベル様がヘクトル様のお体を気遣ってまして…」
ヘクトル様が馬車でぐったりしていた事やマリーベル様に回復を頼まれた事等、目が覚める前の事を話した。
話を聞くうちにヘクトル様は青ざめていった。
「なんて事をっ…、」
ヘクトル様は歯を食い縛り胸を痛めたように謝ってきた。
「どうかお許し下さい。必ずフィン様の元にお連れします。」
「ヘクトル様、これはマリーベル様の仕業なのですか?」
「…恐らく間違いありません。」
「何故?そんなに鉱山は困窮しているのですか?」
私を拐ってまで鉱山は困窮しているのか不思議だった。
「…俺のせいです。」
「あの…聞いてもいい話ですか?」
「こんな事になってしまいました。お話します。」
本当に私が聞いてもいいのか不安になる程ヘクトル様は項垂れていた。
フィンも側にいない不安と、告解等聞いたこともない自分にヘクトル様の悩みを受け止める自信が正直なかった。
私にできるのは祈りと癒しだけだったからだ。
でも、ヘクトル様は私の不安に気付かず話始めた。
「…昨夜、マリーベルに離縁の話をしました。」
「…離縁ですか?」
「金使いが荒く、最初は妻となったのだから苦労させてはいけないと思い、主産業の鉱山の発掘量を増やしました。だか、それが間違いでした。マリーベルはもっと贅沢ができると思い、益々鉱山の発掘を進めました。何度も止めさせたのですが、すぐに介入してきて止まりませんでした。派手に遊び、別邸を立て男達取り巻きと籠るようになったが俺にはもうマリーベルに寄り添えなかった。そのまま放置し、発掘に事故がおこらないように必死で鉱山を周りました。そして、段々発掘の質も下がり、採りすぎたのか量も減りとうとう事故が起こりました。それが結婚式前日です。」
遅くきたのはそのためだったのか、と頷きながら聞いた。
「結婚式には聖女様もいらっしゃると聞きつけすぐに参りました。聖女様が来られたら恵みを授けて下さるし、王国が介入してくれると思いました。…さすがに王国が介入するとマリーベルも止まると思いました。」
「…止まらなかったのですか?」
ヘクトル様は、すみません、とまた謝った。
「あろう事か聖女の祈りで発掘が増えるならずっと祈らせばいい、と言い、その…フィン様と一夜を共にすると宣言しました。」
「!?」
薄々思っていたけど、フィンがやっぱり気になっていたんだわ。
「勿論反対しました。聖女様の祈りは欲しいがずっとは無理だと。ましてやフィン様と一夜を共にしたい等正気ではないと叱責し、離縁の話をしました。」
「勢いで離縁の話を?」
「前から考えていました。夫婦仲良くいたかったがマリーベルでは無理だと思うようになって…」
「マリーベル様と仲良くなりたかったのですね…」
その時ヘクトル様は、一瞬固まったように私を見た。
「あの…ヘクトル様どうなさいました?」
何か変な事を言ったかしら?
「マリーベルと仲良く?いや、俺は仲睦まじい夫婦でいたくて…」
「マリーベル様と仲良くなりたかったのではないのですか?」
「…隣にいるマリーベルの想像はなかった…」
よくわからないけど、ヘクトル様はマリーベル様と夫婦でいるつもりが最初からなかったのではと思った。
その時、マリーベル様と男が一人やってきた。
「呪いを消したな。間違いなく本物の聖女だ。」
男がマリーベル様に話すとマリーベル様は牢に近付いてきた。
「ならいいわ。ずっと鉱山で祈って下さいな。フィン様は私がお慰めしますから。」
フィンと!?それは困るわ!
「ダ、ダメです!」
「マリーベル!聖女様にこんな事をしたら国の反逆罪だ。すぐにフィン様の元へ帰すんだ!」
ヘクトル様はさっきの弱々しい姿と違い、マリーベル様を力強く叱責した。
「ヘクトルは黙ってて!あなたがつまらない男だからいけないのよ!大体こんな小娘の相手をするのよ。フィン様は私とも一夜を共にして下さるわ。」
マリーベル様、ふん、と言いながら話した。
「マリーベル、聖女様とフィン様は俺達のような薄弱な夫婦ではない。」
ヘクトル様の言葉にマリーベル様はヘクトル様を冷たい目で見た。
「もう一度呪いをかけ話せないようにしましょうか。ソール、ヘクトルを黙らせて!」
ソールと呼ばれた、この男の人が呪いをかけたんだ!
「豊穣と加護の双神様、どうぞお守り下さい!」
ヘクトル様をお守りせねば、と私はとっさに祈っていた。




