エスカは婚約者です
隣国につき、ソフィア様と夫となるディーノ様に挨拶をした後は好きにしていいということで、フィンが庭に散歩に連れて行ってくれた。
庭にはソフィア様の結婚式の為にきた方々もおり、フィンは軽く会釈し、私もフィンの真似をして会釈した。
フィンに会釈した方々をみると皆綺麗な格好をしており、私はこれがいいからといつもの白いマントだったので今さらながら失敗だったかと思った。
その時、フィンの側に人が近付いてきた。
「フィン様お久しぶりです。」
「あなたは、確かマリーベル様でしたね。」
フィンの知り合いだったらしく頭を下げた。
「今日は婚約者の方といらっしゃるかとお聞きしましたが、お一人でいらしたのですか。」
マリーベル様と呼ばれた方は私が使用人か何かと思っているのか私が見えていないようだった。
「彼女が俺の大事な人です。婚約者のエスカですよ。」
フィンが腰に手を当て、グイッとフィンに寄せた。
「まあ、失礼致しました。」
失礼致しましたというわりには淡々としているな、と思ってしまった。
「では彼女が聖女様で?」
「そうです。聖女ですが俺の大事な人なんですよ。」
「まあうらやましいですわね。初めてまして、エスカ様、私マリーベルといいます。」
マリーベル様は今更ながら、ドレスを持ち腰を少し落として挨拶をしてきた。
「初めてまして、エスカです。」
「エスカ、彼女は属国のエスペラ国の王妃だよ。」
「属国と言ってもただの領主みたいなものですわ。」
「今日はヘクトル様はどうされました?」
「ヘクトルならあとで来ますわ。聖女様にお会いしたがっていましたから。」
「そうですか、お会いできるのを楽しみにしております。」
フィンはそういうと、さぁ行こう、とマリーベル様と別れた。
「フィン、すみません。私がこんな格好してるから婚約者とわからなかったみたいですね。」
フィンに恥をかかせたかと思い不安になった。
「気にするな、あんな風に着飾るよりエスカらしいのがいい。」
確かにマリーベル様はきらびやかだった。というより派手だったわ。
「ヘクトル様というのは、マリーベル様のご主人様ですか?」
「そうなんだが一緒に来てないみたいだな。」
同じ所に来るのに何故別々なのかしらと思った。
部屋に帰るとその理由はすぐにわかった。
「ヘクトル様とマリーベル様は不仲らしいですよ。」
ルディが教えてくれた。
「最近鉱山の発掘も色々あるみたいでヘクトル様はお忙しく、マリーベル様は金使いが荒く国民の批判を浴びていた筈です。」
「エスカに会いたがっているみたいなんだが、聞いているか?」
「さぁ?でもマリーベル様にはあまり近付かない方がいいと思うけど、」
フィンもルディに賛成の様子だった。
「どんな方なのですか?」
「エレナみたいな感じでしたね。」
エレナ様みたいな感じ?
「…近付かないようにします」
「それがいい。いつも側にいてくれ。」
そんな風に話していたが、夜にヘクトル様が到着するとすぐに私に会いにきた。
ヘクトル様と一緒に来なかったのにこの時ヘクトル様にはついてきたみたいだ。
「フィン様、夜分失礼します。どうしても聖女様にお話がありまして。」
フィンより少し年上でキリッとした感じの方だった。
「フィン様、ヘクトルは聖女様にお話があるみたいです。私達は外に行きませんか?」
どうやらフィンと二人で出たい様子に見えた。
「エスカと離れるつもりはないですし、エスカと同席しない理由もありません、気にせずお話下さい。」
「その通りです。マリーベル、君は部屋で休んでなさい。」
ヘクトル様に言われたからか、フィンに断られたからなのか、マリーベル様は不貞腐れた様子で部屋から出ていった。
ヘクトル様は、申し訳ないと謝っていた。




