エスカからの初めて
フィンは一人で出て行き、まだ帰って来なかった。
朝食も来ないで一人で寂しく食べ、一人がこんなに寂しいものかと思った。
「やっぱり昨日の事を怒っているのかしら。」
昨日の事を考えると不安で一杯になった。
「エスカ、ちょっと入るぞ。」
フィンが帰って来たのかと思うとフィンではなくルディ一人がやってきた。
「ルディ、フィンはどちらに行かれたのですか?」
「…フィンが気になる?」
「嫌われたのでしょうか?」
ルディはこっちもかと頭を抱えた。
「エスカ、フィンが好きか?」
「…好きです。あんなに優しい人はいません。」
「俺も優しいと思うけど。」
「ルディも皆様も優しいのはわかってますけど、」
…そういえばそうよね。どうしてフィンの優しさに引かれるのかしら?
フィンは何だか特別に思えて…
その時、ルディが手を握ってきた。
「どうしました?」
何だかキョトンとしてしまった。
「…何も感じない?」
「何か悩みでも?」
「これがフィンならどう?」
これがフィンなら?フィンならまた動悸がしそうだわ。
「赤くなったな。」
「…フィンなら動悸がしますから。」
ルディは手をぱっと話し話し始めた。
「フィンも男だから焦ったのかも知れないけど、受け入れてやって、フィンがあんな風になるのはエスカだけだから。」
「今までなかったのですか?」
「ないな。」
ルディがきっぱり断言し、なんだか益々フィンに逢いたくなった。
「フィンを迎えに行く?」
ルディは私を見透かしたように言った。
「行きます。早く逢いたいです。」
「じゃあ行ってやって。」
ルディに連れて行ってもらいフィンのいる部屋に行くと、フィンはソファーにうつ伏せで転がっていた。
「ルディ、もう少し一人にしてくれ。エスカに嫌われたくないんだ。」
嫌う?フィンは何を言っているの、という気持ちになった。
「…フィン、私です。昨日はごめんなさい。」
私だと気付きフィンはカバッと起き上がった。
「…ルディは?」
「部屋の外にいます。」
「そうか。」
フィンはソファーに座ったまま下を向いていた。
フィンの側により、膝元に座りこみフィンに謝った。
「フィン、ごめんなさい。私のせいで、」
「エスカは悪くないよ。」
「私、わかったんです。フィンが好きだから動悸が止まらなくて…嫌いにならないで下さい。」
「嫌いになってないか?」
「なりません。」
下を向いていたフィンがやっと私をみてくれた。
「俺も焦りすぎた。悪かった。」
「フィンは悪くありません。その…フィンの為なら、焦ってもいいです…」
フィンが座り込んでいる私を抱き抱えて、フィンの顔が目の前にきた。
「そういう事を言われるとまた我慢出来ないんだが。」
「き、今日は大丈夫です。頑張ります!」
「…大丈夫?」
「許して下さいますか?」
「…エスカからキスしてくれたら許す。」
「嫌いになりませんか?」
「好きだよ。」
その時の雰囲気に流されたのか、フィンが好きで、恥ずかしさで一杯だったが、私もフィンにキスしたくなってしまっていた気がする。
そのせいか、フィンに近付いていた。
「エスカから初めてしてくれたな。」
「はしたないですか。」
恥ずかしさのあまり、フィンにしがみついていた。
「今日も一緒に寝てくれるか?キス位はするかもしれないが。」
「頑張ります。」
「悲鳴をあげない?」
「…あげないように頑張ります…」
フィンの顔をチラッとみると、耳まで赤くなっており、自分まで益々赤くなったのがわかった。
それでもフィンはずっと優しく包み込むように抱きしめてくれていた。




