星の聖女エスカ
今日は朝からバタバタしていた。
昨日の穏やかな1日と違い落ち着かなかった。
フィンはすでに騎士の正装を着ており、青い服がフィンの金髪に似合い素敵だった。
だが、いつまでも見惚れてはいられなかった。
教会へ行く為の馬車がフィンの邸に到着し、騎士団長を先頭に騎士が玄関から馬車までズラリと並んだ。
私の後ろには、ルディ達護衛騎士がおり、フィンは私の横に立ち、馬車に乗り込んだ。
「聖女エスカ殿のご出立!」
騎士団長の掛け声と共に馬車は走り出した。
朝から緊張し、かすかに手が振るえているとフィンは優しく手を握ってくれた。
「フィン…怖いです。もし聖女じゃなかったらどうしましょう。」
「エスカは聖女で間違いないよ。」
「例え聖女だとしても皆の期待に答えられなかったらどうしましょう。」
「双神様はエスカがいればいいんだと思う。だから聖女も結婚を認められているだろう。勿論俺も双神様に負けるつもりはないが。」
「フィン側にいてくれますか?」
「勿論だ。必ずエスカを守るよ。」
フィンの言葉を聞くと手の振るえが止まり温かい気持ちになった。
教会につくと、ヴィル司祭が出迎え挨拶をした。
そのまま教会に入り、控え室で清められた床までつく裾の長いマントを羽織、聖堂へ向かった。
フィンや騎士団長をはじめ、騎士達は決して私の周りを離れなかった。
聖堂の椅子には先頭に陛下が座りいかにも身分の高そうな方々が座っていたが、気にする余裕はなかった。
「これより聖女の儀を始める」
ヴィル司祭の合図に聖女の儀が始まった。
私は、豊穣と加護の双神様に祈りを捧げた。
祈りを捧げるとまばゆい光が現れ、声が聞こえた。
「我らの星の聖女よ。照らしておくれ。」
なおも祈りを続けると、光は大きくなっていった。
「祈りは届いた。我らの豊穣と加護を愛しい星の聖女に」
目を開け前を見ると光に双神様が微笑んだ気がした。
その時、何故だか今までの自分が報われた気がした。
今まで侮辱され、虐げられ、何もしない自分を恥じた。
フィンが侮辱されることを当たり前と思ってはいけないと言ったことが頭に響いた。
自分の弱さを盾に戦わなかった自分が情けなく涙が出た。
あの砦ではフィンを信じ、負けないように頑張って気持ちを強く持とうとした事をいつも持つべきだったのだ。
温かく優しい光が私を包み、心が癒されるようだった。
涙を流し双神様の光を見ていると後ろがざわついた。
ヴィル司祭も驚きの表情になっている。
ヴィル司祭の視線の先を見るとフィンに光がおりていた。
まるで二人を祝福しているようだった。
「星の聖女よ。よき生を。」
「我らの豊穣と加護を。」
そう言い残し、光は弾けとんだ。
皆が呆然とするなか、陛下が立ち上がり、皆に告げた。
「ここに星の聖女エスカを称える!」
陛下の言葉に皆は歓喜に満ちた。
フィンは近寄り手を差し出した。
私は手をとり立ち上がり、皆を見た。
そして歓喜の中、私は微笑んだ。




