フィンの大邸宅
教会を出た後、また馬車に乗り走らせると大きな邸についた。
馬車や騎士達の馬が敷地内に入ってもまだまだ広い大邸宅だった。
「フィン?ここはどこですか?」
「俺の家だ。」
ビックリしているとフィンは、行こうと手を引き邸に入った。
ドキドキしながらフィンに連れられると使用人達が、お帰りなさいませ、と並び出迎えていた。
「今帰った。早速で悪いが玄関に近い居間を騎士達に開けてくれ。」
「こちらの方々は?」
「彼女は聖女エスカだ。騎士達はエスカの護衛にあたる、しばらく騎士が交代で来るから頼む。」
「聖女様!?」
使用人達はビックリしていた。
「エスカは聖女だが俺の大事な人だ。皆よくしてやってくれ。」
「エスカ、彼は執事のケントだ。困ったことがあればケントに頼むんだ。」
「はい、ケントさんよろしくお願いいたします。」
フィンは、では頼む、と言い足早に私を部屋に連れて行った。
フィンの部屋は青を基調としたシンプルだが豪華な部屋だった。
フィンは上の服を脱ぎ、楽な格好になると立っている私をソファーに座らせた。
「エスカ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。」
「教会ではエレナだけでなく、あのような奴らばかりだったのか?」
どう言っていいのかわからず黙ってしまった。
「エスカ、あのような侮辱を当たり前と思ってはいけないよ。」
「…違うのですか?」
「エスカが侮辱される理由もないし、侮辱は恥ずべき行為だ。受け入れる必要はない。」
「…私は侮辱されなくてよかったのでしょうか?」
「当たり前だ。」
胸の中で長年モヤモヤしたものが、溢れるように涙と共に崩れていくのを感じた。
「では、間違っているのは、エレナ様達や彼らなんですね?」
「そうだ。エスカは何も悪くない。エスカだけでなく俺もルディも団長や騎士達も皆わかっている。これからは耐える必要はない。」
「…本当は辛かったんです…」
「もう誰にもあのような態度はとらせない。あの場で叩き斬りたかった位だ。」
「フィン…」
「エスカ、君が好きだ。自信を持ってくれ。」
「はい…、でも司祭様達は、私がフィンに色仕掛けで迫ったと言っていました。」
「色仕掛け?…まぁ、少しは迫ってくれると嬉しいんだが。」
フィンの言葉に少し恥ずかしくなり笑ってしまった。
「エスカの笑顔は好きだ。俺の為に笑ってくれ。」
「私もフィンが大好きです。」
フィンが優しく抱きしめてくれ、腕の中にいると、コンコンとドアのノックの音がした。
みられるのが恥ずかしく慌ててフィンから離れた。
「顔が赤いぞ。」
「こんな顔、誰にも見せられません!」
フィンは笑いながらドアに向かって行った。
やってきたのは執事のケントさんだった。
「お茶をお持ちしたのですが、よろしいでしょうか。」
「ああ、ありがとう。エスカは疲れているからケントはここまでにしてくれ。」
「かしこまりました。」
フィンは笑顔で機嫌がいいのが駄々漏れだった。
「随分ご機嫌ですね。」
「結婚が近いからかな。」
「結婚ですか。」
「明日、聖女の儀が終わればきちんと話すよ。」
「お待ちしております。」
フィンはケントさんからお茶を受け取り、ご機嫌でお茶を出してくれた。




