祈りの間に行きたい
目が覚めると、部屋の天井に見覚えがあった。
フィンが修理してくれた天井だ。
顔を横にするとフィンが心配そうに見ていた。
「エスカ、目が覚めたか?」
「フィン?本当にフィンですか?」
フィンはエスカの手をしっかり握っていた。
「もう大丈夫だよ。エスカはずっと眠っていたんだ。」
「眠って?…どのくらいたちました?ルディやオリビアさんは?」
「二人とも大丈夫だ。」
「よかった…」
フィンの優しい顔と二人の無事を知り、緊張の糸が切れたのかなんだか涙が出てしまった。
「エスカ、よく頑張ったね。オリビアから聞いたよ。俺を信じて待っててくれたと、」
「はい、信じていました。」
フィンは、エスカと私の名前を呼びながらまた抱き締めてくれた。
「双神様が助けて下さいました。」
「ああ、驚いたな。」
「双神様にお礼を言いたいのですが、祈りの間に行かせて下さい。」
「今からか?もう夜だが、」
「どうしても行きたいのです。お願いします。」
「…わかった。一緒に行こう。」
二人で祈りの間に行く為立とうとすると挫いた足が痛くて上手く立てなかった。
「エスカ、大丈夫か、俺が抱えて行こう。」
「え、大丈夫です。頑張って歩きます。」
「ダメだ。無理はさせられない。」
フィンはそういうと、私を抱き上げ外に出た。
ちょっと積極的すぎなんじゃと思うと家の外に出てもっと驚いた。
騎士団長や騎士の方々が夜営をしていたのである。
フィンに抱き抱えられている姿を見られるなんて恥ずかしすぎる!?
「フィン!おろして下さい!」
フィンの耳元で言うと、何故だかフィンは少し照れた。
「エスカ、耳元は今はやめてくれ。俺にも理性というものがある。」
フィン!?何を言っているんですか??
なんだか益々恥ずかしくなり顔をフィンの胸元に埋めた。
「エスカは大丈夫そうだな。」
聞き覚えのある声に振り向くとルディがいた。
「ルディ!大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。気絶していただけだったから。守りきれず、すまなかった。」
「そんなことありません。ルディが無事で嬉しいです。」
ルディが無事でよかったと本当に安堵した。
「フィン、エスカ殿をどこへ連れていくんだ?」
騎士団長が会話を見計らって、聞いてきた。
「祈りの間にいきます。」
フィンはキリッと言った。
「祈り?このような時でも務めをされるとは、そのお心に感服致します。」
騎士団長は頭を下げ、礼をとった。
そのような態度をとられるとどうしていいのか全くわからなくまたフィンの胸元に顔を埋めてしまった。
「団長、エスカは控えめな娘でもあり、このような対応に慣れていません。どうかもう少し肩の力を抜いてあげて下さい。」
フィンの言葉に騎士団長はわかった、と言ってくれた。
だが、祈りの間には何故か騎士団長にルディや騎士達が護衛についてきた。
フィンは私を抱き抱えたまま、祈りの間に歩いて行った。
なんだかまた、益々恥ずかしくなり早く祈りの間について欲しくなった。




