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第5話 テンプレに遭遇

 


「…えっと……冒険者登録でいいのかな?坊や」

「…………はい…お願いします」

「貴様!アノス様に向かって、坊やとはなに…ふぎゃ!?」

「…リリス!お前はちょっと黙ってろ!」

「うぅぅ…い、痛いですアノス様…」

「…………………」

「あ、あはは……」


 冒険者登録をするために、受付のある場所まで来たのだが、先程からのリリスの様呼びや、坊やと俺の事を呼んだ受付嬢に対しすごい剣幕で向かって行ったことにより、周りからは奇妙な者を見るような視線が俺の全身に突き刺さっており、とてつもなく気まずい…

 その上、受付のお姉さんも笑顔ではあるが、顔が引き攣っている。

 この状況で、引き攣っていたとしても笑顔を崩さないことは賞賛に値するが、今の俺からすると、逆に気まずさを引き立たせてしまっている。

 まぁ、受付のお姉さんの笑顔が引き攣っている原因は、俺がリリスの頭に拳骨を落としたのもあるだろうが……


「いいかリリス、お前は少しの間黙ってろよ」

「ん、ん!」

「よし………すぅ…はぁ……お姉さん!冒険者登録をお願いします!!」

「…………………。え、ええ…。登録は二人、ということでいいかな?」

「は、はい」


 一応、頭に拳骨を落としたとはいえ、これ以上リリスを自由にさせていると、話が進まなくなる上に、これ以上周りからの痛い視線が増えてしまうと、俺の精神がすり減ってしまう。

 だから、もう遅いかもしれないが…再度リリスに黙るように念を押す。

 すると、先程の拳骨がよほど効いたのか、その俺の言葉にリリスは慌てるように自分の手で口を塞ぎながら、大きく二度頷く。


 まぁ…これで少しの間は大丈夫かな……


 そう思った俺は、やり直すように深呼吸をしてから、目一杯の笑顔を作りながら、受付のお姉さんへと声をかける。

 そんな俺を見て…俺とリリスを見て、受付嬢は呆けた顔をしていたが、すぐにその顔を笑顔へと変え、二枚のカードとペンを出しながら説明を始めた。



「じゃあ、このカードに名前を記入してから、血を一滴このカードに垂らす。そうすれば、魔力がカードに登録されるからね。そして、そのカードは身分証明書にもなるから無くさないように。次に登録料だけど、一人100Jよ」

「おぉー!」

「ふふっ…じゃ説明を続けるね」



 ちなみにだが、金銭について…この世界の通貨は1J硬貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の6種類で、単位はJ(ジュール)と呼称する。

 1J硬貨はそのまま1Jであり、鉄貨が10J、銅貨が100J、銀貨が1000J、金貨が10000J、白金貨が100000Jとなる。

 そして、国民の…平民の一般的な一月の収入は2000Jから4000Jと言ったところ。

 つまり、前の世界…日本の時と比べてみると、1Jは100円ぐらいで、それ以下の単位は存在しないという感じであり、平民であれば、月に銀貨2~3枚、年で金貨4枚位あれば十分生活出来る…と言った感じになる。



 受付嬢のお姉さんに言われた通りに、お姉さんに一人100J、つまりリリスの分と合わせて200Jを渡してから、カードに名前を書き、指を少し切ってから血を一滴そのカードに垂らす。

 すると、カードが一瞬光ったあと、普通のカードだったものが、鉄製のカードへと変わる。

 なんとも不思議な現象だったため、思わず感嘆の声が漏れてしまう。

 そんな俺を見て、お姉さんは少し微笑ましそうに笑った後、残った説明を始める。


「まず、これはギルドカード。魔力を込めると、名前とランクが浮き上がってくる。そして、ランクが上がることによって、そのカードの素材もいいものに変わっていく。最初は誰しも(アイアン)カードのFランクからのスタートになる」

「ふむふむ…」


 お姉さんの説明は少し長かったが、俺は相槌を打ったり、質問をしたりして、その説明を聞き漏らさないように真剣に聞いていく。




 その説明によると……

 冒険者というのは、SランクからFランクまでの7つのランクがあり、Fランクが最低ランクになり、Sランクが最高ランクになる。

 カードはFランクは鉄【アイアン】カード、EとDランクは銅【ブロンズ】カード、CとBランクは銀【シルバー】カード、Aランクは金【ゴールド】カード、Sランクは白金【ミスリル】カードとなっている。

 パーティを組む場合はギルドにて登録する。

 そうすることにより、ギルドポイントの査定が両者に加算される。

 昇格についてはギルド独自で判断しており公表はしていない。


 依頼については、通常依頼、指名依頼、緊急依頼の三種類があり、一般的には通常依頼となる。

 緊急依頼については、過去にあるのは魔物の氾濫や他国との戦争など。

 しかし、国同士の戦争についてはギルドは中立になる。

 まぁ、ここ100年以上、他国との戦争は起こっていないため、それについては心配しなくても良さそうだ。


 通常依頼については掲示板にランク毎に張り出されており、剥がして受付まで持っていく。

 受けれるのは、自分のランクと同じランクの依頼か、その一つ上のランクの依頼しか受けられない。

 俺の場合最低ランクのFランクのため、受けられる依頼は、FランクかEランクの依頼しか受けられないということだ。

 また、通常依頼と指名依頼については、失敗し達成できなかった場合、報酬として貰えるはずだった金額の50%を賠償金として、払わなければならない。

 つまり、しっかりと自分に見合った依頼を選んでいくことが大事になってくる。


 また、三つ以外の依頼で、常時依頼と書かれているものがある。

 それは、依頼を受注せずとも納品すれば達成となる、というもので、魔物であるゴブリンの討伐やオークの討伐などが主になる。

 また、食用にできる魔物の肉などは、ギルドに買い取ってもらうことで、その場でお金にできるらしい。

 納品しなくてはいけない物以外は、取得した者の自由であり、ギルドでお金に変えてもらうも良し、その素材を使って新しい武器や防具を鍛冶屋に頼むのも良し、と言った感じである。


 冒険者同士の争いに関しては、重大な犯罪等が関わる場合以外は、基本的にギルドは関与しない。

 しかし、争いにより、ギルドや他の建物、国などに損害が出た場合は、その原因にあたる者にそれ相応の罰金が課せられる。




「これで説明は以上だよ。少し長くなったけど…大丈夫?」

「はい、大丈夫です!」

「あと、アノス君に言われた通り、二人をパーティとして申請はしたからね。だから、もう二人はパーティとして行動できるよ」

「何から何までありがとうございました!」


 確かに長かったが、なりたかった冒険者について聞けたので、俺は少し申し訳なさそうにしているお姉さんに笑顔でお礼を言い、頭を下げ、受付から離れた。


「さてと…早速依頼を受けるか!いくぞ、リリス!」

「ん!」

「………いや、もう口を塞いでいなくてもいいよ…でも、様付けはダメだからな。分かった?」

「はい!!畏まりました!アノス様!」

「いや、分かってないじゃん…」

「?」

「…はぁ……もういいや……行くか」

「はい!!」


 受付から少し離れ、リリスに再度注意を促したが、全然理解してくれないリリスに呆れつつも、気を取り直し、俺とリリスは掲示板へと向かった。




 でもこの時、俺は気づくべきだったのだ。

 冒険者と言えば、ギルドといえば、何があるのか…何が起こるのか…

 ラノベをよく読んでいたのにも関わらず、冒険者になれたということで舞い上がっていたのだろう。

 "あれ"の存在をすっかり忘れてしまっていた。





「おいおい、ガキのくせして、俺様の歩く邪魔してんじゃねーよ!」

「………………」




 そう……異世界もののラノベで必ず出てくると言ってもいい、冒険者ギルドで起こるテンプレという存在を…………









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良かったら、短編のほうも読んでもらえると嬉しいです! それでも世界は回り…それでも僕は生きていく
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