プロローグ
アクセスありがとうございます!
これからも頑張るのでよろしくお願い!
投稿頻度はそこまで早くないと思いますので、そこだけご了承ください(^^;
「……はぁ………もう疲れた……」
時刻は朝の9時。
空は青々としており、雲ひとつない快晴。
「ホント……全部に疲れたよ、母さん」
俺はーー八代 優翔は今、青々として綺麗な空を見上げながら、とあるビルの屋上に立ち、ため息を漏らしている。
朝の9時といえば、社会人ならもう働き始めている時間だろう。
かく言う俺も、今年で30歳であり、歴とした社会人だ。
では、なぜこんな所で、こんなことをしているのか……
それはーーーーー
「ここから、この高さから飛び降りれば……そうすれば楽に死ねるかな?」
自殺するためだ………
俺は母子家庭で育った。
このことから分かると思うが、もちろん裕福ではなかった。
それでも、辛いと思ったことは無かったし、そりゃ裕福なところに生まれたかった、と思ったことがないといえば嘘にはなるが……
それでも幸せだった。
『ほら優翔、今日は奮発したのよ!』
『……ねぇ母さん。これは、なに?』
『なに?って……優翔の好きなカツカレーよ?』
『……えっと、じゃあ、このごついのは……なに?』
『リンゴだけど?』
『……………う、うん。じゃ、このカレー?の上に乗ってる黒々としたものは?』
『何言ってるの優翔。さっきカツカレーって言ったでしょ?もちろんそれはカツよ!』
『いや、いやいや、いやいやいや!!なんでカレーに食べなくてもわかるぐらいの、丸々のリンゴを入れてるの!?そして、この黒々としたやつがカツ!?……なんでこの状況で、この料理の出来で、そんなに誇らしく胸張れるの!?』
『てへっ!』
『てへっ、じゃないよ!!』
母さんは料理が苦手で、それはもう酷い出来だった。
でもその事で母さんの事を嫌だと思ったことは無いし、なんと言うか……恥ずかしいけど、大好きだった。
母さんの笑顔が……
母さんの後ろ姿が……
料理の味はあれだっけど、苦手ながら俺のために作ってくれたという気持ちがとても暖かかったところが……
母さんの全てが大好きだった……
まぁ、今思えば、俺はマザコンと言うやつだったのだろう。
だからだろうか……
母さんの言葉は、母さんが俺に言ってくれた言葉は、俺にとって何よりも優先すべきことで、何よりも大切だった。
『優翔、いい?』
『うん?』
『あなたは幸せになるのよ?』
『今でも十分幸せだよ?』
『ありがとうね。でも母さんはね、優翔にはもっと幸せになって欲しいの。だから、あなたは自分の気持ちに素直になって、あなたのしたいと思ったことを、したいようにしなさい。そして、好きなように生きなさい。それが、母さんにとっての1番で、母さんの幸せだから』
『……分かった!母さんの幸せなら、僕はそうするよ!』
いつだったか……
5歳か6歳……今となってはよく覚えてないが、多分その歳ぐらいの時に母さんにそう言われ、俺はしたいことをしたいように、好きなことを好きなだけ、でも母さんには迷惑をかけないように……
そして、いつか、母さんに目一杯褒めてもらい、その上で母さんを幸せにしよう。
そう心に誓って、それを俺の生きる目標に、生きる道に、生きる糧にした。
『ねぇ、母さん……目を開けてよ……また笑ってよ……頭を撫でてよ……料理を作ってよ……僕を……一人にしないでよ…』
でも……俺が10歳になった時………
いや、母さんが自殺をして、俺が1人になった時、その生き方はこの世界では出来ないのだと、悟った……
母さんは、看護師をしていた。
人を助ける仕事だ。
だからという訳では無いが、俺は母さんのことがとても誇りだった。
でも、ある日……母さんは、いつもなら笑顔で家に帰ってくるのにその日はとても暗く……そして泣いていた。
これは後になって知ったことだが、
母さんが担当をしている患者さんに打った点滴に毒が盛られており、その患者さんは亡くなったらしい。
もちろん母さんはそんな事をしていないと否定はしたが、誰もそれを認めてくれず、仕事をクビになった上に、上の人から警察に突き出すと……そう言われ、逃げて家に帰ってきた、ということだった。
そしてその日……母さんは……自殺をした……
『ごめんね、優翔。こんな母さんで、ごめんね。愛してるよ』
その、書き置きだけを残して……
『母さんは……母さんはそんな事しない!!』
『………』
『なんでそんな目で見るんだ!なんで誰も信じてくれないだ!母さんは、僕の母さんは……そんな人じゃないのに……みんなも……知ってるはずなのに……』
『……どう言おうと、あんたの母親は人殺しだよ。病院でも、何人もの人がそう証言しているんだから。そして、あんたは、人殺しの子だよ』
『………………』
その時だった。
母さんにとっての実の家族である母さんの妹。
その人にそう言われた瞬間……俺は本当の意味で1人になり、
そして……気づき、絶望した。
家族であっても、多数の意見を尊重する。
その多数の意見が間違っているのかどうかさえ、分からないというのに……
正義も悪も、多数決で決まる世界……
1人の意見なんて関係ない。
自分の意見も関係ない。
正しいのは多い方で、悪なのは少ない方……
これが、この社会の……世界の常識であり、生きていく上で自分が喰われないために、最も重要視しないといけないこと、
『そっか……したいことをしたいようになんて、出来ないなんだ……好きなように生きるなんて、出来ないんだ…』
10歳ながらにして、俺はそう悟った。
それからは無難に生きてきた……
テストも、点数が高いのが良い。
みんなそう思っているから、勉強は苦手だったが無難にやってきた。
仕事はしなくちゃいけない……したいことを、したい仕事をできる人なんて、ひと握りで、凡人はそんなこと言ってられない。
みんなそう思っているから……そう言われたから、今まで何も思わず、仕事の毎日を無難に生きてきた。
でもーーーーー
「もう無理だよ……母さん。疲れたんだ、俺……」
気づいてしまった。
今の自分には、誇れるようなことが一つもない。
母さんにとっての、誇りになりたかった自分は、もうとうの昔に死んでしまったんだと。
いや気づいたのではなく、目が覚めたと言うべきか……
その瞬間、この社会が……この世界が俺にとって、とてつもなく息苦しいと感じた。
生きるのが……辛くなった。
「だから、もうすぐそっちに行くよ、母さん。自慢出来ることは何もないし……母さんには怒られるかもしれないけど……でも、今から会いに行くよ……」
そして俺は、最後に空に笑顔を向け……飛び降りた。
目を開けると、あたりは真っ暗だった。
それはもう、文字通りの真っ暗な世界だった。
俺は……死んだのか?
まぁ、どうでもいいか……
【どうしたいですか?】
真っ暗の中じゃ目を開けていても仕方がない。
だから、母さんに会えるまで目を閉じておこう。
そう思い目を閉じていると、どこからか……いや、頭の中からそんな声が聞こえてきた。
【あなたはどうしたいですか?】
どうしたいって……母さんに会いたい
【あなたは何がしたいですか?】
何がって……さっきも言ったろ?
母さんに会いたいだけだ
【あなたはどうなりたいですか?】
はぁ?
どうなりたいって……そんなの、分からないよ……
『優翔、あなたは自分の気持ちに素直になるのよ。そして……』
母さん………
【あなたはどうしたいですか?】
『したいことを、したいようにしなさい』
………したいことを、したいように
【あなたは何がしたいですか?】
『好き勝手に生きなさい』
………好き勝手に生きてみたい
【あなたはどうなりたいですか?】
『幸せになりなさい』
………幸せになりたい……母さんに誇れるように
【ならば、その機会を与えましょう。その力を与えましょう。そして、いつか私を、私たちーーをーーしてくださいね。私はいつでもあなたの事を見守っています。あなたが辿り着くその時まで。私の可愛い優翔……いえ、アノス】