これはとある国のお話
とある国の断罪の話。 @短編その20
ほぼ毎日うpしてます。いつまで続くか。
卒業記念パーティーは騒然とする。
話が見えない者達は、近くの人に聞いている。
ザワザワとしていた会場は、王子が喋り始めると『ピタ』と止まって・・
し・・ん
誰も言葉を発しなくなった。
今から話す王子の言葉を聞き逃すまいと黙ったのだ。
王子は王族用の椅子が置かれた壇上で、凛とした声で叫ぶ。隣には聖女が寄り添っている。
「ヴェリュス。私の寵愛が得られぬからと、この国にとって大切な聖女の命を狙うなど!今この場を持ってお前との婚約を破棄、そして国外へ追放を命令する!」
この言葉に、会場中がザワッと空気が揺れた。
お姉さまはそんな事しません!まさかそこまではしない!
無実だ!!あのヴェリュス様が?ちゃんと調べたのか!
誰も彼女がそのような事などしないと、口々に言います。
王子は手で制し、黙らせました。
「この事件の証拠、証言は既に父である王も確認している!恐ろしい所業だ、ヴェリュス。既に公爵には報告している。即刻此処から出て行くのだ」
今まで呆然として、黙っていたヴェリュスは震える声で叫んだ。
「アルジール様!私には何の弁解もさせてはもらえないのですか!」
大粒の涙がポロポロ落ちるのを、周りの人々は痛ましい表情で見つめるしかなかった。
「私は、私は・・貴方だけを・・・愛して・・」
「言うな!さあ、もう行け」
彼女は一度目を閉じ、深呼吸をして・・手に短刀を出現させた。
警備と護衛の兵が彼女に駆け寄ろうとしますが、
「さようなら。私のアルジール様」
カラン・・
鞘を落とし、短刀の刃先を自分に向け、一気に押し込みました。
嫌な音がして、数秒。ゆっくりとヴェリュスは床に崩れ落ちました。
兵達はそれを見て足が止まってしまいました。誰もが唖然としています。
「ヴェリュス?何を・・」
王子はよろよろと段を降り、彼女に近寄ります。
「ヴェリュス。ヴェリュス・・」
彼女を起こすと、あばらの窪んだ部分に柄まで刺さって・・絶命していました。
血が王子の服を、手を染めていきます。そして床に血がゆっくりと広がります。
王子の目から、何かきらりと光るものが落ちました。
「ああ、君を傷付けて・・苦しめた・・言いたくなかったのに・・君の涙・・ああ」
この国は神殿の力が大きい。聖女の権力も絶大です。
彼女は王子と婚姻を要求していました。
邪魔なヴェリュスに冤罪を被せて国外に追放・・これは神殿の策謀だったのです。
王子や国王、他協力者は受け入れたフリをし、国外に彼女を追放して保護、その身を守る予定でした。
あの聖女は嫉妬深い。追い出したくらいでは納得しない、きっと彼女を殺すだろう。
既に協力者も手筈を整えていました。直様ヴェリュスを国外へ・・・
そしてその後も画策していたのです。ヴェリュスを取り戻すための計画でした。
この計画の唯一の欠点、それはヴェリュスに計画を伝えられなかった事。
王子とヴェリュスには見張りが付き、傍に寄れなかった。王子と協力者は何とか伝え合えたが、ヴェリュスの監視は尋常で無い数だった。せめて一言でも伝わっていたら・・でももう何もかもが無駄となったのだ。公爵令嬢の誇り、矜恃、そして彼への思い。
『貴方がいない人生は生きる価値は無い』と。誇り高い彼女の最期に、王子は心掻き立てられる。
「ヴェリュス・・君がいなかったら、この計画は・・無意味だ・・・なぜ逃げてくれなかった」
王子は彼女を抱き起こし、抱きしめた。君の愛に、報いる。
「愛している。愛したのは、君だけだよ。ヴェリュス」
彼も腰のブロードソードを素早く抜き、胸に突き刺した。
「待って、て・・」
王子は彼女と抱き合ったまま、息を引き取ったのです。
その後、国民は王子と公爵令嬢の悲恋を嘆き、神殿に押し寄せて。
国王も跡継ぎの死に怒り、公爵も娘の死を嘆き、兵で神殿を取り囲みます。
兵からは槍を投げられ、弓で狙われ、国民からは神殿の石を砕いたものを投げられ。
聖女の企みの残酷さに、全てから恨まれて八つ裂きにされ、神官たちも同じ目に合ったのでした。
これはとある王国の悲恋のお話。
ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。
どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。
pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。
https://www.pixiv.net/users/476191




