決闘
冒険者ギルドに行くと、多数の冒険者が俺を見て哀れんでいた。マリンは連れて来なかった。
そんな事は気にせず、訓練場に着いた。
冒険者も多数、観に来ていた。この世界は娯楽少ないからな…。
デーブルはもういた。
「やっと来たか。私を待たせるなんて良い度胸だな。」
「どこかのハゲ豚と違って、忙しいものですみません。」
とりあえず、ジャブを打った。
すると、デーブルは頭の血管が浮き出て、真っ赤な顔をして、
「き、貴様。私を愚弄する気か…。」
怒鳴った。
「えっ…。私はなにもデーブル様の事を言った訳ではありませんよ。デーブル様はそんな自覚が…あっ、そういえば、デーブル様も…申し訳ありません。」
とぼけてみた。
ますます血管が浮き出て、
「私もなんだ…私もなんなんだ!!」
「うっ…もう少し離れてください。息が…うえっ。お願いします。離れてください。」
本当に臭かった。
「なんだと…。私の息は臭くなんかないっ!周りの女は良い匂いだと言うぞ。お前の鼻、おかしいんじゃないか!?」
その事を人はオベッカと言う。もう死語かな…。それじゃあ、お世辞と言います。
「そうかもしれません。では確認の為に、ここに集まりの冒険者の皆さん。誰かデーブル様の良い匂いを嗅ぎたい方、出てきて嗅いでください。」
冒険者達は自分を巻き込むな。と思ってるだろうな。
だが、お前らただで観れると思うなよ。
「……」
もちろん、誰も出て来ない。
デーブルもなぜだって顔をしていた。まぁ、例え良い匂いでも、ハゲたデブのおっさんの息なんて嗅ぎたくないな。
あっ!いい人みーつけた。
「デーブル様、誰も出て来ませんね。これじゃあデーブル様の息が臭くなってしまいますね。…あっ!あそこにルソーさんがいますよ。ルソーさんこっちに来てください。」
ルソーは逃げようとしたが、周りの冒険者が逃がさない。
こいつを逃がしたら、自分が嗅ぐ可能性が残るからな。
ルソー、あの時の恨みだ。
ルソーが出てきた。というより、デーブルとも目が合った為、仕方なく出てきてた。
きっとルソーはデーブルの臭いを知っているのだろう。顔が青くなりながら、
「デーブル様、高貴な方の息を、私なんかが嗅ぐなんて、とんでもないです。」
デーブルは機嫌が少し良くなった。
そんなデーブルを見て、ルソーはホッとしていた。だがそんな言い訳がきくか。
「デーブル様、ルソーに息を吹きかけてください。そうしなければ、デーブル様の貴い息は、臭いということになります。もし、私の鼻がおかしくて、デーブル様の息が良い匂いでしたら、謝罪します。それと良い匂いならモテますよ。」
「そうだな。ルソー遠慮はいらん。この私の貴い息を吹きかけてやろう。」
デーブルの思考は、そっちばかりだからな。
デーブルが青い顔ルソーに息を吹きかけた。さすがレベル6だな、肺活量がすごいな。
ルソー、こいつ息止めてるな。
バレない様に息を潜め、というか俺もデーブルの息を嗅ぎたくないので、息を止めてルソーの後ろに周り、驚かせた。
すると、今まで我慢していた分、一気にデーブルの息を吸い込んだ。
そして、ルソーは涙を浮かべながら吐いた。
それと、ルソーに後ろにいた冒険者も嗚咽してる。
「デーブル様、やっぱりあなたの息は、吐くほど臭いみたいですよ。離れてる冒険者も吐きそうにしてます。それくらいあなたの息は臭い。良かった。自分の鼻がおかしいのかと心配してました。」
「そんなはずはない。昨日の女も良い匂いだと言っていた。」
じたばたしていた。
「それは本当ですか!?それなら大変だ!!その女性はデブ…こほん。失礼、デーブル様に嘘をついたか、鼻がおかしいのかもしれません。急ぎ連れてきてもらえませんか?」
その女性を巻き込むのは申し訳ないが…。うまくいったら、謝礼をしよう。
「なんで私がそのような事をしないといけない。」
「それは、デーブル様しか顔がわからないからです。もしかしたら、私とルソー、そこの冒険者達の鼻がおかしいのかもしれません。デーブル様の息は良い匂いと唯一、確かめる方法です。」
「わかった。今から連れてくる。しばらく待ってろ。」
デーブルが冒険者ギルドから出ていった。
待ってる間、マリンがやってきた。遠くから、心配しているみたいだった。
しばらく待つと、デーブルが一人の女性を抱えて連れてきた。
「はっ…は、んごぉ、連れてきてやったぞ。んごぉ…はーっ私の息は良い匂いだな?」
息を切らしながら、女性に言った。本当に豚みたいだ。
マリンの存在すら目に入ってない。どんだけ必死なんだ…。
「はい。デーブル様の匂いは良い匂いです。」
スゲーな、絶対臭いはずなのに…。本当に鼻が悪いのか?と思い、さすがに全部鑑定するのは、悪いので状態だけ鑑定すると、状態に異常はなかった。
なかったが、アクセサリーに、偽装をかけた【無臭の指輪】を付けていた。
臭いがしなくなる指輪だ。
それを指摘する事はしなかった。作戦は俺が思った以上にうまくいった。
だいぶデーブルのスタミナを削れた。
「すまんな。俺達の鼻がおかしいみたいだ。さぁ、今から決闘をしてやる。さっさとかかって来い。ハゲ豚。」
約束だったので一応謝罪した。
デーブルは一瞬なにを言われたか、わからなかったが理解した瞬間、
「…きっさまー!」
激昂して、かかってきた。単純で良かった。
ブータンの攻撃は、余裕でかわせた。体感では、マリンと初めて、迷宮に潜った時のゴブリンリーダーよりかわしやすかった。
これがレベル6だと…。弱すぎないか…。昨日の特訓の成果か。
デーブルが休もうとしたら、悪口を言い、デーブルは単純なので、激昂して攻撃してくる。かわしてスタミナを削ろう。
向こうもなにか言っていたが、全然聞いてなかった。
今まで聞いてきた悪口より、幼稚だった。
だが、油断を狙っているのかもな。一撃でも食らえば俺は立てなくなり、そのまま止めを刺されて死ぬだろう。
そんな事を考えながら、油断なく戦いが進んでいった。
結局、デーブルは攻撃を当てる事ができずに決闘が終わった。
バテてきたとき、鼻の穴におもいっきり、指を差し入れ、えぐった。すると鼻血を出して、ますます息があがって、手が下がったところで、片目をえぐった。手を顔に挙げた瞬間、股間を蹴った。なにかが潰れたところで、泡を吹き気絶した。
泡も臭かった。結構離れてるのに…
殺すこともできたが、俺は優しいので、息を我慢して、もう一つを潰して終わりにした。
その後治癒師が臭いを我慢して、デーブルを治療していた。
後の謝礼が目的かな?
なぜか周りはドン引きだった。マリンも含めてだ…。不思議に思い、
「優し過ぎたか、最後の一本も折っとけば良かったかな?」
マリンに言ったら、
「も、もう十分です。ありがとうございました。」
もっと引かれた。それを見て、やり過ぎの方で引かれたのかと理解した。
理解はしたが、命を賭けた決闘なのに、俺がおかしいのか?と納得はできなかった。
実は結構ギリギリだった。俺のスタミナもなくなりそうだった。作戦がうまくいって良かった。
あの女性に感謝だな。お礼を言うために女性を探したが、いなかった。
そんな事考えながら、ブータンが賭けてた指輪を持って、マリンと一緒に冒険者ギルドを出ていった。
冒険者ギルドを出ると、あの女性の背中が見えた気がしたので、走って追ったがいなかった。が、女将さんがいた。なので、
「女将さん!勝ちました。女将さんが渇を入れてくれたおかげです。」
報告をした。今回女将さんがいなければ、諦めて俺は死んで、マリンは生き地獄で暮らしていただろう。
師匠や街長のおかげでもあるが、女将さんがいなければ、そもそも師匠達に手伝ってもらう事もなかった。
「そうかい。良かったね。お礼なら街長やボルドーに言いな。それとお前の努力の結果でもある。それを自分で褒めて、誇りに思いな。」
相変わらず無愛想な女将さんが珍しく、俺を褒めてくれた。ちょっと泣きそうになったが、我慢した。
「はい!…うっ…そ、それで…女将さん、なんか臭いますけど、溝にも落ちたんですか?」
大声で返事をした後に息を吸ったら、なんかゲロみたいな臭いがした。
すると女将さんが顔を赤くして「うるさい!」と言って、宿屋に走って行った。
さすがに女性に失礼だったか…と反省した。マリンからも俺が思ったとおりに怒られた。マリンは女将さんの事大好きだからな。
マリンに怒られながら宿屋に着き、女将さんに謝った。
女将さんは着替えていた。その後、女将さんがあの服を着ることはなかった。
ちなみに、デーブルから奪った指輪は、かなり良い指輪だった。なんとアクセサリー枠を1つ増やせる指輪だった。しかも装備品じゃないので、俺にも効果がある。
これで、マリンの問題はなくなったはずだ。
そして幸せな時間がしばらくの間、続くのであった。
※一章終わりです。
お読み頂きありがとうございました。




