SCENE-01 UNKNOWN
「──以上が今回の〝託宣〟だ。修正案への対応は各自に委ねる。好きにしたまえ」
〈プロジェクト・リブラの一部修正か。どうみる? 諸君〉
〈浮舟──いえ、あえてヒトの側に立ってパンデモニアムと呼びましょうか。あれをいとも容易く沈められたのは、〝女神〟にも想定外だったのでしょうね〉
〈GAIAの底力を量るべく、艦隊のひとつぐらいは潰すつもりでいただろうからな。思惑が外れたとは言えよう〉
〈しかし、その可能性を考えていなかったわけではあるまい。なればこそ対応が速い〉
〈同感だ。プロジェクト・リブラの修正は不測の事態ではなく、用意されていた腹案への切り替えに過ぎないとみた〉
〈しかして、その目的は?〉
〈剪定よ。言うなれば〉
〈剪定……?〉
〈具体的に言うなら、人類に収獲させる超先行技術と鹵獲素材──とくに空間子結晶の適切な管理だ〉
〈なるほど。確かに人類の成長ぶりは想定を超えている。徒長した枝葉は払わねば、むしろ害となろう〉
「その象徴的存在が、あのシグルーンなる艦だ。先の戦闘データを詳細に解析したところ、かすかな重力波を確認した。あの艦には、やはりエオシウム昇華炉が搭載されていたのだ」
〈まだ試験段階でしょうけど、我々の想定より30年ほど早いわね。先だって、プロジェクト・リブラの第3段階への移行が前倒しされたのも、それが理由?〉
「で、あろうな。見方を変えれば、その程度のスケジュールの誤差は許容範囲内ということだが──おおむね原形をとどめたまま沈んだパンデモニアムをGAIAが収獲すれば、看過できない齟齬が生じよう」
〈ああ。パンデモニアムには百キロ近いエオシウムが遺されていると思われる。全てを爆縮兵器に使えば、北米大陸の2割は削ぎ取れる量だ。今の人類に与えるには、いささか多すぎる〉
〈確かに、まだ早いな〉
「左様。いたずらに伸びた枝は落とさねば、よい実は生ならん」
〈それにしても──〉
「ん……?」
〈このところの託宣に、なんと言うか……揺らぎのようなものを感じるのは気のせいかしらね〉
〈揺らいでいるのは〝世界〟だよ。我々のな〉
〈ゆえに、高みにおわす女神が揺らいで見える。我らが女神が相対的な存在である証左よ〉
〈絶対的存在などというものは、人の概念がなさしむ空想だ。仮に存在したとて、何の価値も無い〉
〈絶対者は、それのみで完結し、自身以外に何も無い閉じた時空に棲まうものだからな。ゆえに決して他者に関わることはなく、おのれに祈りを捧ぐ小羊に気付くことすら、ありえない〉
〈祈りをきくという相対的な事象をなした瞬間、絶対の存在ではなくなる。神への祈りが神を殺めるなんて、皮肉ね〉
「哲学で遊ぶのもいいが、おのおの、なすべきことを忘れぬようにな。
されば同志よ、御機嫌よう。
約束されし再会のために──加護あれし」
〈加護あれし〉
〈加護あれし〉
〈加護あれし〉
〈加護あれし〉
────TO BE CONTINUED──
毎度おなじみ、お待たせしました。
今回は、再び謎の集団による謎のおしゃべり。
「意味不明だわ。ふざけんな」と、お叱りをうけそうですね。
でも、作品世界の空気感の演出としては〝意味不明であることに意味がある〟わけでして……
物語のキーとなる用語や概念をちりばめる伏線という思惑も込めつつ、しばしばこうしたインターミッションを挿入するかもであります。
てなわけで──
なろう界隈では異端児であろう本作ですが、「悪くはないかも」なんて思ってもらえたなら気軽に★とかブクマとか授けていただきたく存じます。
では、また。
いつか、どこかで──
<(_ _)>