泣きました。
情けなくて、悔しくて、ひたすら子供みたいに泣いた。
もう泣き疲れて頭痛がする位。こんなに泣いたのはいつだったかな。
なんで、涼介に振られた時にすがり付いて泣かなかったんだろ。
なんで、めんどくさい事ばかり気になったんだろう。
なんで、涼介だけを思って泣けなかったんだろう。一緒に生きていきたいって思うくらいは好きだったはずなのに。
他に好きな人がいる。って気が付いた時に覚めてしまったのかな。私って薄情だな。ハハ。
部屋を出る前に、テンがハンカチを置いていってくれたから、それで目を押さえてたら、目が腫れたっぽい。
ああそうだ、泣くときは拭いちゃいけないんだった。
はー、なんかスッキリしたかな。
何か飲み物が欲しくなって、声をかけてみた。
「あの、誰か、居ませんか?」
返事がないので、襖を開けて、廊下に出てみた。
「すみません。」
やっぱり返事はない。忙しいのかな。
廊下のすぐ横は日本庭園みたいな感じだった。色々な草花と木が植えてあって、大きな綺麗な石が置いてある。池もあった。
平安時代のお屋敷って、四方に部屋があって、季節の花や植物をそれぞれの庭で楽しめるようになってたはず。ここはどの季節なんだろ。
やっぱりフワッと光ってるような気がする。
ぼんやり庭を眺めていると、人の気配がした。
「あっ失礼しました。誰かいると思わなくて。」
背の高い、赤いモサモサくせっ毛の、羽織を着た男の人が立っていた。モサモサで、こちらからは目が良く見えない。時代劇とかで見る番頭さんっぽい。ここの人だと思って丁寧に挨拶する。
「こちらこそすみません。私はここに招かれて、今夜だけお邪魔してるんです。気にしないで下さい。」
と言うと、男の人は不思議そうに
「今夜だけのお客さん?……こんな時間にどうかしましたか?」
「喉が渇いてしまって。」
目が腫れてるのがちょっと気になったけど、少し笑いながら話せた。落ち着いたのかな。
この人の柔らかい雰囲気でホッとしたのかも。ぽかぽかと温かい感じがする。
今日会ったのは狼とか烏とか、怖いのばっかりだったからなぁ。
「そうですか。ふむ、お酒とか飲めますか?酒ならすぐ用意できるかと思いますよ?」
「あー、飲めますけど……。」
そうだ、家でビール飲みかけだった。ちょっと飲み足りないかも。でも図々しくないかな。
「そんな事無いですよ。じゃあ、持ってきますので、ここの桜の間ですよね。部屋で待ってて下さい。フラフラしてると変なの出てきますので。」
あー、やっぱり心読めるのね。と苦笑しつつ
「お兄さんは変なのじゃないの?」
と、聞いてみる。
「あー!そうですね。変ですよね。会ったばかりの変なのと部屋に二人は怖いですよね。んー、でも、俺も眠れなくって、お姉さんとちょっと話したいかな。」
「分かりました。大丈夫です。ここの襖開けちゃえば怖くないです。」
「じゃあ、ちょっと待ってて。」
とニっと笑った。
笑うと両方に八重歯があって、凄く可愛らしい。ちょっといいなと思ってしまった。
振られたばっかりなのに、私って節操無いのかな。やっぱり薄情なのか。一人でクスクス笑ってみる。
うん、もう大丈夫かな。
明日、テンに言って帰ろう。若様に会う前ならテンも怒られないだろう。
読んでくれて嬉しいです。
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