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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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90.浸食される世界樹



-アーネスト視点-



「蓮華ぇぇぇっ!!」


 蓮華が、倒れた。

 心臓に手を突っ込まれて、それでも心配させないようにと、気丈にしていた蓮華が。


「どけぇぇぇ!アスモデウスゥゥ!!」


 全力で剣を振るう。

 凄まじい速度で空を斬る刃だったが、予想外のスピードだったのか、アスモデウスがよろめく。

 その隙を逃さず、駆ける。


「っ!!……仕方ないですね。ノルン、約束通り手助けはしたわよ。私は、やっぱり会長も気に入ってしまったのね……これ以上は、無理。あんな辛そうな会長、初めて見たものね……」


 蓮華の元に辿り着く。

 倒れた蓮華に触れる。

 冷たい、まるで死んでしまったかのような冷たさ。


「お前っ……蓮華に何をした!!」


 その言葉に、こちらを見ていない瞳で言葉を発する。


「ふふ、ふふふっ!あぁ、もうこれで、姉さんとずっと一緒。後は、世界樹の中で融合するだけ。姉さん、もう少しだけ、待っていてね」


 そして、その姿が消える。


「なっ!?」


 まるで、初めからそこに居なかったかのように、消えた。

 闘技場を覆っていた結界も、同時に消えた。

 ざわざわと騒ぎが大きくなる。

 だけど、そんな事は俺にはどうでも良い。


「蓮華!おい蓮華!目を覚ませよ!蓮華!!」


 必死に呼びかける。

 だけど、蓮華は目を覚まさない。

 体も死んだように冷たい。

 考えたくないけど、もしかして蓮華は、もう……。


「アーくん!蓮華さんは!?」


 アリスが話しかけてきたので、見上げる。

 アリスが息を飲むのが分かった。


「アーくん、これで涙を拭って。アーくんがそんなんじゃ、蓮華さんに笑われちゃうよ……?」


 そうか、俺は泣いていたのか。

 だけど、しょうがないじゃないか!

 こんな、こんな事になるなんて、想像もしてなかった。

 蓮華が、死ぬなんて……考えた事も無かったんだ!!


「……会長、私が言うのもなんですけど、その子はまだ死んでいませんよ」


 その言葉に振り返る。

 アリシア、いやアスモデウスが、そこに居た。


「本当か!?」


 敵でも味方でもどちらでも良い。

 今は、その事が重要だった。


「はい。ノルンが、いえイグドラシルが連れていったのは魂です。魂は、すぐには消えませんから。イグドラシルは時間をかけ、世界樹の魂と融合するつもりです。多分あの子は、今世界樹の中に居ます」


「世界樹の!?そん、な……」


 アリスが驚愕し、絶望に染まった顔をする。


「アリス、それはそんな不味い事なのか?」


「……アーくん、世界樹は、神の領域。認められた者しか足を踏み入れられないの。そしてそれは、世界樹の化身足る蓮華さんと、世界樹そのものであるイグドラシルだけ……誰も、邪魔できない……だから……」


 なんて、事だ。

 俺達は、蓮華が融合させられてしまうのを、ただ指を加えて見ているしかできないってのか!?


 ゴン!!


 床を殴る音が響く。


「チク……ショウ!俺は、守ると言っておきながら、俺はぁぁぁっ!!」


 肝心な時に、傍に居ながら、俺は蓮華をみすみす……なんで俺は兄貴に相談しなかった!

 母さんに相談しなかったんだ!

 ちょっと強くなったからって、なんでも守れると慢心していたのかっ!

 俺は……馬鹿だ、畜生!!


「会長、余計なお世話ついでにもう一つ。そこのアリスティアさんはご存知でしょうが、ノルンが(おこな)ったのは、『サリギアの儀』と呼ばれる儀式です。ご存知ですか?」


「なんだよ、それは……」


 力なく答える。

 蓮華を救えない、それが俺から力を奪っていた。


「アリスティアさんから聞いていませんでしたか。『サリギアの儀』、それは世界樹ユグドラシルの魂を生贄に、魔界の世界樹イグドラシルが、この地上を侵食する儀式です」


「……それが、なんだってんだ。俺達にはもう止められねぇんだろ。蓮華を、救えねぇんだから……」


 そう、もうどうだって良い。

 蓮華が居ない。

 そんな世界、俺にはもう色褪せて見える。

 俺は、あいつが居たから楽しかった。

 もう一人の俺だけど、もう俺じゃない。

 あいつと一緒に、この世界を楽しもうと決めた。

 あいつにはときめかないけど、傍にいると楽しかった。

 気を張らず、お互いに素で話せる、大切な家族だ。

 そんなあいつを、目の前で……。


「……この儀式の最後は、魔界の世界樹の浸食が、地上の世界樹を覆って初めて、完成となります。逆に言えば、それまでは絶対に魂は融合を完全には行えません」


「何が言いたいんだ、アスモデウス」


 まるで、俺に何か出来る事があると、教えてくれているかのような……。


「会長、いつもの聡明さはどこに行ったんですか。しっかりしてくださいよ。要は、時間は引き延ばせます。貴方は、誰なんですか?あの蓮華さんの兄、それだけなんですか?……私が言えるのはここまでです。これでも大分グレーなんですからね会長!」


 そう微笑むアスモデウスに、俺は気付く。


「なぁアスモデウス。お前もしかして、俺の味方してくれてるのか?」


「はぁ、今更ですか。ええとですね、会長。私はノルンの味方ですけど、あの性根の腐ったイグドラシルは嫌いなんですよね。むしろ、長年ノルンを苦しめてきたアイツは個人的に許せません。だから、ぶっ殺してくれません?立場上、私手を出せないんですよねー、困った事に」


 そう笑って言うアスモデウスに、苦笑する。


「お前な、分かりにくいんだよ!でも、な。その……さんきゅな」


「うわっ!?会長がデレるとか鳥肌が立っちゃったじゃないですか!?どうしてくれるんですか、玉のお肌に!?」


「素直に礼ぐらい受け取れよ!?」


 その言葉に、クスっと笑うアスモデウス。


「そう、その調子です会長。貴方に泣いている顔なんて、似合いませんよ。私は、魔界の王の重鎮です。立場上、儀式が始まった以上、地上に敵対しなければなりません」


「……そうか」


「はい。ですから、貴方の家族に、相談を。少しだけ、魔界の悪魔達の進行を遅らせます。その間に、迎え撃つ体制を。全ての国が防衛を張らなければ、防ぎきれませんよ?」


 そう、カレンとアニスを見て言うアスモデウス。

 蓮華の傍に行きたかっただろうに、二人は駆けて行った。

 恐らく、それぞれの国へこの緊急事態を伝えに行ったのだろう。

 あの二人がこの場に居てくれて良かった。


「分かった。俺達は世界樹の麓にある家に一旦戻る。アスモデウス、敵になるなら言っとく。戻ったら説教だからな、死ぬなよ?」


 そんな言葉に、アスモデウスは一瞬きょとんとした顔をする。

 だけど、すぐに破顔して言った。


「あは!あははっ!もう会長、"色欲"の私を落とそうとするなんて、十年、いえ百年早いですよー?」


「ばっ!そんなつもりで言ったんじゃねぇよ!?」


「クス……ええ、分かっていますよ。それでは会長、ご武運を。妹さんを、取り戻してくださいね」


 そう言って、アスモデウスは消えた。

 取り戻す、か。

 アスモデウスは、アリシアの時だって、できない事は言わなかった。

 ならば、蓮華を取り戻す方法があるという事だ。

 気合を入れなおす。


「アリス、悪魔達の進行を防ぐ手段に、大精霊の皆をそのまま防衛に当たらせた方が良いか?それとも、大精霊の皆も一旦戻ってもらうか?」


「アーくん……そうだね、大精霊の皆、いつまで存在できるかも分からない。だから、一旦家に戻ろう。アーくんにはまだ伝えてなかったけど、地下があるの。そこに案内するね」


「分かった、頼む。もうこんな状況だ、母さんや兄貴に、助けを求めよう。俺達だけの力で守れるなんて、自惚れはもうしない」


「……うん、アーくん。ごめんね、私がついていながら……」


「いや、あの男の強さは俺も見てた。あの男が相手なら、俺も突破できたか分からない。やっぱアリスはすげぇよ」


「……あいつ、この世界の理の外の力を使ってた。多分、転生者だよ」


 成程、なら明と同じようにスキルを使ってたって事か。

 それは強敵だな……アスモデウスが消えたと同時に、そいつも居なくなってたし、要注意だな。


「……行こうアリス。この場は、明や先生達に任せよう。俺達には時間が無い」


「そだね、行こうアーくん。あ、その前に、絶対に呼んだ方が良い味方が居るから、先にそっちへ行くよ」


「アリスがそこまで言う奴が居るのか?」


「うん。吸血鬼の真祖、ミレニア。ミレニアなら、悪魔の大群だろうと、簡単に蹴散らせるよ」


「はは、そいつはすげぇ!よし、急ごう!」


「うん!」


 こうして、俺達は蓮華を救う為に行動を開始する事にした。

 待っててくれ蓮華。

 俺達が必ず、助けてみせるからな!



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