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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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89.蓮華、敗北

 静まり返った闘技場に、また剣撃の音が響き渡る。

 私とノルンの剣が弾き合う。


「このっ!!」


 ギィィン!!


 渾身の力を入れて放つソウルを、軽く凌ぐノルン。

 この腕前は、アリス姉さんに匹敵するかもしれない。

 いや、怯むな。

 もしアリス姉さん程の腕前があるなら、私はすでに負けているはずだ。


「でぇやぁぁぁっ!!」


 続けざまに斬り続ける。

 ノルンがまるで踊るように闘技場を移動するので、追いかけるのも一苦労だ。


「ふふ、姉さん。飾りと言う意味での華が足りない会場だけど、こうして姉さんと踊るのは楽しいわ」


「私は、踊ってるつもりは、ないけど、ね!」


 言葉を発しながら斬るも、全て防がれる。

 明先輩のように受け流されているんだ。


「いつまでもこうしていたいけれど……でもダメ。このままこの世界に縛られているのは、ダメ」


「この世界に、縛られてる……?」


 ノルンは何を言っているんだろうか。

 何か、変身を解いたあの瞬間から、ノルンがおかしくなったように感じる。

 まるで、別人になったかのような不思議な感じがする。


「さぁ、遊びはここまでにしましょうか。大好きな姉さん、ずっとずっと、今度こそ一緒。もう、離れ離れは耐えられないの……!」


 その瞬間、闘技場が闇に包まれる。


 ヂヂヂヂヂヂヂヂッ!!


「蓮華っ!!」


 アーネストの声が聞こえる。


「蓮華さん!"ソレ"はダメなの!"ソレ"からは、逃げてぇ!!」


 アリス姉さんがこちらへ来ようと飛び出すが、ドーム状の紫色の結界のようなものが阻み、弾き飛ばされているのが見えた。


「あぐっ!!」


「アリス姉さん!大丈夫だから、無茶はしないで!」


 そう叫ぶ。

 アリス姉さんが傷つく所なんて、見たくない。


「ダメなの蓮華さん!その魔法は、ダメなの!!」


 アリス姉さんが叫ぶ。

 ダメとは、何がだろうと一瞬思考したのが不味かったのか、黒い闇が手足に纏わりつき、拘束された。


「!?このっ!!」


 魔法で解こうとするが、弾かれる。

 身動きが取れない。

 ノルンがこちらへゆっくり歩いてくる。


「さぁ姉さん、今からその魂を、抜き取ってあげる。その後ゆっくりと、一つになろうね」


 ズボッ!


「ぐっ……ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 肉体を貫通し、心臓に手を突っ込まれる。

 あまりの激痛に、叫んでしまう。


「蓮華ぇぇぇぇっ!!」


 アーネストが叫び、こちらへ向かってくるのが分かる。

 でも、アリス姉さんですら弾かれたんだ。

 いくらアーネストでも、無理だろうな……そう思っていたら。


「おおおぉぉぉぉっ!!」


 ヂヂヂヂヂヂッ!!


 なんと、一部分を斬り取り、闘技場の中に入ってきた。


「蓮華を、離しやがれぇぇっ!!」


 凄まじい速度で駆け寄ってくるアーネスト。

 アリス姉さんも続いているのが見えた。


「へぇ、流石ね。魔力を弾けさせるなんて、魔力が無い貴方ならではよね会長。でも、まだ姉さんの魂を抜き取るには時間がかかるの。手伝って貰っても良いかしら?」


 その言葉と同時に、アーネストとアリス姉さんの前に、二人が立ち塞がる。

 アーネストが開けた穴は、すでに閉じている。

 どうやってこの二人は入ってきたのか……。


「ノルン、いや今はイグドラシルか?ノルンは無事なんだろうな?」


 一人の男が問いかける。


「ええ、でも心外だわ。ノルンも私なのに」


「言っていろ。ノルンの頼みだからな、手伝ってやるさ」


 そうして姿が変わる。

 凄まじい魔力を感じる。

 でも、これはそれだけじゃない。

 明先輩のような、魔力とは違う力を感じる。


「さて会長、妹さんの所には行かせませんよ?」


 そしてもう1人は、いつもアーネストの傍に控えていた、生徒会副会長。


「アリシア、てめぇ……」


 その言葉に、妖艶な笑みを零す彼女。

 そして、姿が変わる。

 艶めかしい服装をした、妙に色気のあるその姿は、先程までのアリシア副会長の見た目とは程遠い。


「私は"色欲"のアスモデウス。以後お見知りおきを、会長」


 そう、告げた。


「大罪の悪魔かよ」


「あら、流石は会長、博識ですね」


「いや、この世界にも居るとは思わなかったけどな」


「この世界にも……?」


 不思議そうな顔をする彼女に、アーネストは言う。


「お前とゆっくり話をしてる時間はねぇんだ。押し通らせて貰うぞ!」


「あら、もっと会話を楽しみましょう会長。いつもそうしてきたじゃないですか」


「ああ、これが終わったらじっくり説教してやるぜ!」


 アーネストが私の方へ駆ける。

 けれど、それをアスモデウスと名乗った彼女が遮る。

 その瞬間、凄まじい戦いが始まった。

 アーネストの二刀流を、踊るような舞で避ける彼女。

 そのくせ、アーネストが私の方に行こうとすると、必ず防ぐ。

 あれでは、アーネストでもすぐにこちらには来れないだろう。

 アリス姉さんの方を見る。


「どいて。別にどかなくても、どかせるけど」


「そうはいかない。お前に大切な存在がいるのと同じように、俺にもいるんだよ」


 睨みあう二人。

 でも、すぐにアリス姉さんが動いた。


「邪魔ぁぁっ!!」


 物凄い速さで繰り出す剣技。

 だけど、それを全て防ぐあの男。

 目を疑った。

 あの剣撃、アリス姉さんは手加減をしていない。

 私と戦う時にさえ見せなかった力。

 それをあの男は全て防ぎ、アリス姉さんを弾き飛ばした。

 後方に吹き飛ばされたアリス姉さんは、綺麗に着地した後、まるで弾丸のように私の元へ来ようとする。

 だけど、それをあの男は見逃さない。


「行かせないと言ったはずだ!」


「このっ!!邪魔するなぁぁっ!!」


 アリス姉さんとあの男はほぼ互角。

 これでは、私の元へはこれないだろう。

 前を見ると、ノルンが私の心臓を掴んだまま、何かブツブツと言っている。


「ノ、ルン……一体、君は、ゴホッ……何が、したいんだい?」


 口から血が零れる。

 心臓を鷲掴みにされたままなので、継続的な痛みが襲う。

 今にも意識を失いそうだけれど、聞かなくてはならない。

 どうして、こんな事をするのかを。


「最後に交わした、姉さんとの約束。私と姉さんは、二人で一人。そう、二人で一人なの。だから、ね?一つに、なろうね」


 そう微笑んだノルンから、闇が零れ出す。

 そして、その闇が私を包んだ。

 アーネストとアリス姉さんの悲痛な叫び声と表情が、脳裏に焼き付いて離れない。

 なんとか振り払おうとするが、身動きもとれず、あらがう術も無かった。

 抵抗空しく、私の意識は闇に溶けた。

 

 


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