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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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86.休憩時間

「蓮華さん、アーくん、多分私はここに戻ってこないと思う。会場で、見てるからね」


 そう言って中央へ向かうアリス姉さん。

 思わず呼んでしまう。


「アリス姉さん!?」


「アリス!?」


 でも、その声には答えず、儚げに笑って、光に包まれ、アリス姉さんは闘技場へ転送されていった。


「アリス姉さん……」


 私は、馬鹿だ。

 アリス姉さんは、私と以外戦えない、それを分かっていたのに……。

 アリス姉さんの気持ちを考えず、手加減を頑張ってねなんて言った、少し前の自分を殴ってやりたかった。

 きっと、アリス姉さんは負けるつもりなんだ。

 だって、戦えば生徒達を殺してしまうかもしれない。

 それを、私だって明先輩のお蔭で学んだのに。

 アリス姉さんが、それに気付いていないわけがない。

 馬鹿だっ……!私は、大馬鹿だっ!


「……蓮華、思いつめるな。アリスは、お前を悲しませたくてああ言ったんじゃないと思うぞ」


 そうアーネストが気遣ってくれる。

 だけど、私は……。


「それにさ、多分アリスは……分かってたんじゃないかな。それでも、お前と居たかった。だから、ギリギリまで傍に居れるように、参加したんだよ。きっとさ」


 分かってる。

 そんな事、分かってるんだ。

 アリス姉さんは、どこまでも純粋に、私を大事にしてくれるから。

 だからこそ、そんなアリス姉さんの心に気付けなかった自分に腹が立つ。


「大丈夫さ。アリスは……俺達の想像もつかないくらい、凄い奴だ。きっと、なんでもないように戻ってくるさ」


「……うん。ありがと、アーネスト」


 それから、しばらくして。

 光が現れる。

 光が解けたその先には、いつも通りのアリス姉さんが、こっちを見て笑ってくれた。

 私とアーネストが駆け寄る。


「速い、速いからねアリス姉さん!?」


「ったく、なーにが戻ってこないだよ!心配させる事言うなよなアリス!」


 二人して詰め寄る。

 そんな私達に、アリス姉さんは言ってくれる。


「ごめんね蓮華さん、アーくん」


 そうして抱きついてくるアリス姉さん。

 良かった、アリス姉さんが戻ってきてくれて。

 抱きしめ返した私は、そんな事を考えていた。

 だけど。


「よっし、これで俺の相手はアリスだな!楽しみだぜ!」


 なんて空気読まずにアーネストが言うので、横腹を抓ってやった。


「いでぇ!?蓮華!地味に痛いからなそれ!!」


「あはははっ!」


 アリス姉さんが笑う。

 それだけで、私は嬉しかった。


「ごめん、アリス姉さん。私、アリス姉さんが手加減をできないの、分かっていたのに……分かってたつもりになってた……」


 だから、謝る。

 アリス姉さんが気にしない事は分かってる。

 だけど、謝りたかった。

 ただの自己満足の為の謝罪。


「うーん、それじゃ、今度私の買い物に付き合って!それでチャラにしてあげる!」


 そんな、優しい事で許してくれるというアリス姉さんに笑う。

 あ、そうだ。


「それじゃアーネスト、その時に荷物持ちな」


「おまっ!?あれ覚えてたのかよ!?」


 忘れるものか。

 あの王覧試合の大将戦。

 お前のせいで顔が広まったんだからな。


「なになに!?何の話!?」


 なんてアリス姉さんが聞いてくる。


「それじゃ、お昼まで時間があるし、食事取りながら話そっか。アーネストもそれで良いか?」


「あー……そうだな。少しだけ待っててくれるか?」


「了解、そこでアリス姉さんと待ってるよ。出たら皆に捕まりそうだし」


「はは、分かった。できるだけ急いで戻ってくるよ」


 そう言って、走って行ってしまった。


「それじゃアリス姉さん、いつの間にか腕につけてる腕輪の事も含めて、聞いても良いよね?」


 と笑って言ったら、笑みを引きつらせるアリス姉さん。


「あは、は。なんか笑顔が怖いよー蓮華さん?」


 そんな事ないよ?と思いながら、少し移動して、話を聞く。

 そっか、母さんが……。

 それに、カレンに対する好感度が爆上げ中だ。

 今度何かお礼をしよう。

 そんな事を考えていたら、アーネストが戻ってきた。


「お待たせ蓮華、アリス」


「大丈夫、あんま待ってないよ」


「だねー、早かったけど、何か新情報とかあるー?」


 アリス姉さんの問いに、意外な答えが返ってきた。


「ああ。なんでも、いつもに比べて予選が早く終わりすぎたらしくてさ。昼からの戦いの前に、予選敗退の奴らでまた戦いをする事になったみたいだぜ」


 私もアリス姉さんも、滅茶苦茶早かったもんね。

 そういえば忘れてたけど、ユリィ君って誰と一緒のブロックだったんだろう。

 私とだったら、ごめんね。

 と心の中で謝っておく。


「ま、俺達は気にしてもしょーがねーし、地下のレストランに行こうぜ。そこなら、選手しかこれねーから落ち着いて食えるだろ」


 その提案に是非もなく頷く。

 そして着いたその場所は、校舎にあるレストランと何も変わらなかった。

 ここの施設、お金かけすぎじゃなかろうか。

 適当に選んで、席へ座る。

 アリス姉さんはいつも通り私の+αで、アーネストはラーメンにしていた。


「お前、昼から戦いなのに、ラーメンて……」


「良いじゃねぇか、美味いんだからさ」


 そう笑うアーネストに、もう何も言うまい。


「アーくん、ちょっと頂戴?」


「おぅ、良いぜー。小皿それで良いか?」


「うん、大丈夫だよー」


 なんて微笑ましいやりとりをしてる二人。

 なんか悔しいから、アリス姉さんのお皿から、また卵焼きをフォークで刺す。


「にゃー!?蓮華さん、また卵焼きぃ!?」


 実は、アリス姉さんは卵焼きが大好物なのだ。

 うん、それを知ってて取る私は極悪非道だろう。

 でも、アリス姉さんはこんな事をしても、笑って許してくれる。


「しょうがないなぁ蓮華さんは。でも、ウインナー貰うからね!」


 ぎゃー!私の好物を取られてしまった。

 訂正しよう、ただでは転ばない、それがアリス姉さんだ。

 そんな私達を見て、アーネストが笑う。


「ははっ!お前らホントお子様な!」


 なんて言うので、ラーメンの中に入っているチャーシューをフォークで突き刺して取る。


「ぬぁぁっ!?蓮華、お前!?」


「ふふん、お子様ですから」


「ならお前のウインナーを」


 と言わせ終わる前に、防御する。


「くぁー!取れねぇ!!」


 なんてアホなやり取りをしながら、昼食を取る私達。

 周りには誰も居ないから、貸しきりだ。

 きっと今頃、予選で負けた人達は戦っているんだろう。


「蓮華、昼一でお前とノルンの戦いだ。勝敗云々はとりあえず置いておくけど、もし危険だと思ったら、迷わず逃げろ、良いな?」


 急に真面目な事を言いだすアーネストに苦笑する。


「うん、分かってる。まぁ、大丈夫だと思うよ?」


「蓮華さんはもぅ……。危機感が足りないんだからー!」


 なんてアリス姉さんが怒ってくるけど、私はそんなに危ない事になるとは思っていない。

 ノルンとだって、話せば分かるはずだ。

 そう、思っていた。

 でも、相手はノルンじゃなかったのだ。

 私はこの違いに、その時になるまで気付けなかった。

 闘技大会準決勝第一試合、ノルンとの戦いまで、あと少し……。

 私は、アーネストにアリス姉さんとの穏やかなこの時間が、とても心地良かった。



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