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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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85.闘技大会予選Dブロック



-アリスティア視点-



 アーくんはまるで、買い物にでも行ってきたかのような気軽さで戻ってきた。

 うん、それでこそ蓮華さんを守るって豪語するだけの事はあると思う。

 生半可な実力者に、蓮華さんを守るなんて言えない、言わせない。

 私は、生を諦めてた。

 もう、このまま外に出る事はないと、思っていた。

 だけど、蓮華さんが救ってくれた。

 最初に会った時に、男性の姿なのに、私が男に見えてるの?なんて聞いてくるので、内心ビックリしていた。

 でも、話を聞いて、すぐに分かった。

 ああ、ユーちゃんの生まれ変わりなんだ、と。

 ユーちゃん事、ユグドラシル。

 それは、世界樹に成る前の私達の親友。

 心優しい、穏やかな女性だった。

 この世界の為に、その身を犠牲にした親友。

 私は、私達は拒絶した。

 ユグドラシルを生贄になんてしない、と。

 でも、彼女は寂しそうな表情をして、こう言った。


「ありがとう、私の事を想ってくれて。ありがとう、私の為に悲しんでくれて。私は、生贄なんて思ってないよ?私は、皆と永遠に生きれるの。姿が、記憶が、無くなっても。私の魂は、皆と一緒。ずっと、一緒。だからね、泣かないで?」


 私は零れ出る涙を止められなかった。

 そんな私を優しく抱きしめてくれた。

 それが、私とユーちゃんの最後の記憶。

 マーガリンにロキ、ミレニアにリンスレットが、ユーちゃんと最後に何を話したかは知らない。

 ユーちゃんの事を本当に慕っていたイグドラシルは、ユーちゃんの負担を少しでも減らす為に、自身もそう成る事を告げる。

 地上のユグドラシル、魔界のイグドラシル、その形をとると告げた。

 はじめ、全世界を覆うつもりだったユグドラシルは、その言葉を聞いてから、微笑んでありがとうと伝えていた。

 意外だった。

 てっきり、貴女は生きなさいとか言うと思っていたから。

 でも、違ったんだと今の私は分かる。

 ユーちゃんは分かっていたんだ。

 例え自分が断っても、ダメだと言っても。

 イグドラシルは、聞かない事を。

 ならせめて、最後の想いを認めてあげようとしてあげたんだと思う。

 あきれるくらい、妹の事が大好きなお姉ちゃんだったから。

 あきれるくらい、姉の事が大好きな妹だったから。

 今なら、分かる。

 私も、お姉ちゃんになったから。

 ユーちゃん、今度は私が守るよ。

 親友としてじゃなく、お姉ちゃんとして。

 蓮華さん、守るから。

 だから、見守っていてね。

 私は絶対、蓮華さんを守るから。


「アリス姉さんなら余裕だと思うけど、手加減を頑張ってね?」


 ふいに、そんな事を言ってくる蓮華さんを見る。

 ユーちゃんとは髪の色が違うけど、目の色は同じエメラルドグリーンの瞳。

 腰まで届く黒髪は、風に揺れて綺麗だ。

 優しい雰囲気はそのままに、温かい気持ちにさせてくれる蓮華さん。

 今も首を傾げて、どうしたの?という態度が可愛らしすぎて、抱きしめたくなる。


「むぅ、私も手加減くらい余裕なんだからね蓮華さん!」


 嘘だ。

 実を言うと、私は蓮華さん以外に手加減が未だにできない。

 日常生活は問題ない。

 だけど、いざ力を使うという事になると、本当に力を出しすぎてしまう。

 ブレーキが壊れているという表現が正しいのかもしれない。

 アクセルを踏んで、スピードを出しすぎたかな?とブレーキで緩める行為、それができない。

 アクセルを踏みっぱなしになってしまう。

 なら、アクセルを踏むのをゆっくりするのはどうか。

 それもできない。

 アクセルを踏んだら、いきなり最高速度近くまで出してしまう感じというか。

 私にとって手加減とは、刃で出来たピンセットで、小さな柔らかい物を切らずに挟む行為に近い。


「なぁ蓮華、お前と戦ってる時のアリスは手加減出来てたじゃねぇか。何がそんなに不安なんだ?」


 アーくんの疑問はもっともだろう。

 でもその言葉に、蓮華さんは気まずそうに目を逸らす。


「その、アリス姉さんの手加減って、私限定なんだよ……」


 その一言で察したアーくん。


「あー……。その、殺さないでくれよ?」


「失礼なー!!」


 苦笑する蓮華さんとアーくんに私はそう言うけれど、正直自信が無い。

 なので、私は決めていた。

 私は負ける。

 戦わない。

 蓮華さんの横に居れたらそれで良いから。

 だから、笑顔で言う。


「蓮華さん、アーくん、多分私はここに戻ってこないと思う。会場で、見てるからね」


 そう言って中央へ向かう。


「アリス姉さん!?」


「アリス!?」


 二人が呼びかけるけど、それには応えない。

 だって、私が戦うわけにはいかないから。

 私の力に耐えられる人なんて、きっとこの学園には居ないから。

 そして、中央に辿り着いた私は、笑顔で二人を見て、光に包まれた。

 二人は驚いた顔をしていたけど、ごめんね。



 ワァァァァァァッ!!


 物凄い歓声が聞こえる。

 二人もここで戦ってきたんだね。

 ふふ、私も二人とここで戦ってみたかったなぁ。

 審判のカレンちゃんの話を聞いてから、一番端へ移動する。

 すぐに場外へ落ちれるように。

 そうすると、意外そうな顔をされた。


「アリスティア様は、端へ行かれるのですね……?」


 その顔は、単純に不思議だったのだろう。

 だから、教えてあげる事にした。


「うん、私は負けるつもりだからね」


 小声で言ったのだけれど、意外と響いてしまったようだ。


「どうして、ですか?」


「……私はね、戦えないから」


 その言葉に、反応した者がいた。


「なんだよ、あの蓮華様にアーネスト生徒会長と親しくしてるから、どれ程の方かと思ったら……ただの小心者かよ」


 私が何かを言う前に、カレンちゃんが口を開いた。


「お黙りなさい。この方を侮辱する者は、程度が知れますわよ。貴方ごときが侮辱して良い方ではありませんわ」


 わぁーお。

 審判なのに、私に肩入れしちゃって良いの。

 カレンちゃんから言われたそいつは、震えながらも続けた。


「事実じゃないですかカレン様!戦えないとか、弱いって事でしょう!?」


 その言葉を聞いたカレンちゃんの表情が、刃のように鋭くなり、相手を睨む。

 あれー、私に言ってるのに、なんでカレンちゃんが怒るんだろう。


「無礼な。このお方は、あの蓮華お姉様の姉上様ですよ。そして、蓮華お姉様の敬愛するお方です。そんなお方に、よくそのような口を……貴方ごとき、今すぐここで私が片づけても良いのですけれど……それではアリスティア様の汚名が晴れませんわね」


 そう言って、一つの腕輪を取り出した。


「この腕輪は、魔道具です。凶悪犯を無力化する為だけに作られた、『殺さずの腕輪』というアーティファクト。アリスティア様、ご無礼をお許しください。この腕輪を一時身につけ、戦う事はできませんか?」


 そう優しい表情で言ってくれたカレンちゃんに、頭が下がる思いだ。


「しょうがないなぁ……。良いよ、カレンちゃん。つけてくれる?」


 そう笑顔で言ったら、はい、かしこまりましたって可愛い笑顔で言って、つけてくれた。

 そして……分かる。

 この腕輪は、マーガリンが創ったものだ。

 どうして、これを……。


「私がここに臨時講師として来る事が決まった時に、王宮にマーガリン様がいらっしゃられたのです。その時に、必要になるかもしれないからと、受け取っておりました。お渡しする機会を逃し、今になってしまった事をお詫び致しますわ」


 先ほどとは違い、小声で私にだけ聞こえるように言ってくれる。

 そっか、私は蓮華さんの修練にずっと付き合っていたし、初めて会ったあの時は、準備できていなかったんだろうね。


「ありがとう、助かったよカレンちゃん」


 そうニッコリと笑ってから、さっきの奴に向き直る。


「それじゃ、遊んであげるね!」


 先程までとは違い、打って変わってやる気の漲っている私に、皆驚いているのが分かる。


「会場の皆様、お待たせ致しました。これより、予選の最終戦Dブロックの試合を開始致しますわ!」


 カレンちゃんが、そう告げた。

 ふふ、力を出しても殺さないで済むなら、やっちゃうかー!

 剣に風の魔力を込めて、一薙ぎする。

 巨大な風の刃が、平行に飛んでいく。

 そう、闘技場に集まった生徒達を吹き飛ばしながら。

 あ、あれぇ。

 しゃがんでギリギリ避けた生徒達が数名、残った以外、ほとんど居なくなってしまった。

 開始数秒でこんな事態になっちゃって、困惑する。


「う、嘘だろ……」


「あんな、なんでもないように剣を振るっただけで、あんな巨大な風の刃を放出する事ができるの……!?」


 あちゃー。

 もっと遊ぶつもりだったのに、ほとんど居なくなっちゃった。

 なら、残った人で試しちゃおうかな!

 そう思って残りの人を見て笑う。

 うん、それがダメだったのかなー。


「し、審判!降参します!!」


「お、俺も!」


「私もです!!」


 残った数名が、全員降参してしまった。

 なんでー!?


「ふふ、仕方ありませんわね。残った選手達の降参により、予選Dブロック通過者、アリスティア=フォン=ユグドラシル!」


 ワァァァァァァッ!!


 凄い声に耳を塞ぎたくなるけど、我慢する。


「アリスティア様、アーネスト様との戦いでは、外しても構わないと思いますわ」


 そう告げて、私から離れる。

 良い子だね、蓮華さんが認めただけの事はあるよ。

 そして、体が光に包まれて、地下に戻る。

 そうしたら、二人が駆け寄ってきた。


「速い、速いからねアリス姉さん!?」


「ったく、なーにが戻ってこないだよ!心配させる事言うなよなアリス!」


 二人の言葉や態度が、嬉しかった。


「ごめんね蓮華さん、アーくん」


 それだけ言って、蓮華さんに抱きつく。

 これで、予選はおしまい。

 お昼からは、いよいよ準決勝第一試合が始まる。

 そう、蓮華さんとノルン、運命の対決が、始まるんだ。




-アリスティア視点・了-



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