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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第三章 学園編

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84.闘技大会予選Cブロック



-アーネスト視点-



 口を開き、声こそ発しなかったが、蓮華の顔を見るに伝わったのだろう。

 しっかりとした足取りで去っていくノルンの後ろ姿を見る。

 あいつが何を考えているかは分からない。

 だけど、蓮華に何かするつもりなら、誰が許そうとも、俺は許さねぇ。

 蓮華は俺の一番の親友だ。

 この世界を共に生きると誓った。

 俺がこの世界に召喚されて、戸惑っている時に出会えたもう一人の俺。

 あいつは、俺が俺である事を認めてくれた。

 きっと、あいつだって不安だったはずだ。

 なんせ、女の子になってるんだ。

 なのに、不安を感じさせないように気遣ってくれた。

 こんな俺でも、守ろうとしてくれたんだ。

 だから、その気持ちに応えたい。

 蓮華は俺を守ろうとするだろう。

 だから、俺は蓮華を守る。

 共に、生きていく為に。


「それではCブロック参加の方々、中央へお寄りください!」


 声が聞こえる。

 そうか、次は俺だな。


「アーネスト、てきとーに頑張れよ」


「アーくん、おもいっきりやっちゃえ!」


 二人のセリフに笑ってしまう。

 蓮華、俺のセリフの逆を言いやがって。

 アリスまで便乗してやがる。

 全く、息ぴったりだな、この美少女共め。


「ああ、見せてやれないのが残念だけど、行ってくるぜ!」


 俺の言葉に、二人は笑顔で応えてくれる。

 ったく、果報者だな俺は。

 中央へ歩き始めると、視線が集まるのを感じる。


「アーネスト生徒会長……!」


「今回こそ、一太刀いれてみせますよ!」


 ああ、前回も見た奴らが居るな。

 そいつらを見据えて、一言。


「おう、思いっきりきな!全員叩き潰してやるからよ!」


 そう笑って言ってやると、皆良い顔をする。

 良いね、俺はこういうやる気に満ちた奴らは大好きだ。

 どうせ俺は狙われる。

 なら、前回と違って、中央に立っててやるか。

 そう考えていたら、体が光に包まれ、闘技場に転送される。


 ワァァァァァァッ!!


 この空気、良いよな。

 前の世界では、味わえなかった。

 きっと、オリンピックや何かの大会に出てる人達は、この空気を味わいたくて努力してたんだろうな。

 そして、勝つ為に。

 自分こそが最強だと、皆に知らしめる為に。

 俺は自分が最強だなんて思っちゃいない。

 上には上がいる、兄貴の存在が、俺を戒めてくれた。

 兄貴は強い。

 母さんも強いが、多分……兄貴はもっと。

 母さんの弟子だと聞いていたが、きっとあれは嘘だろう。

 だけど、兄貴は俺や蓮華にとても優しい。

 俺は兄貴の事が大好きだ。

 いつか、兄貴のようになりたい、そう思って修練してきた。

 俺は、もっと強くなりたい。

 どんな存在からも、蓮華を……大切な仲間を守れるくらいに強く!


「アーネスト様、御機嫌よう。クス、蓮華お姉様と同じく、アーネスト様も”ソコ”なのですね」


「ああ、カレンか。って、蓮華と同じ?」


 首を傾げる。

 そういえば、蓮華は竜巻の魔法を使ったんだっけか?

 成程、そういう事か。

 あの魔法を例えば端で使ったなら、反対側は届かないかもしれない。

 けど、中心地なら。

 全体に届くだろうな。


「ええ、本当にご兄妹揃って、考える事は同じなのですね」


 そう言って微笑むカレンに一瞬見惚れてしまう。

 結構美人には見慣れたのに、このカレンという少女の微笑みは綺麗だと感じた。

 作られた綺麗さではなく、蓮華のような自然な美とでも言うのだろうか。


「ま、でもここからは俺は違うぜ?蓮華のように楽な勝ち方は趣味じゃねぇ。俺は一対一を繰り返すからな、良く見ときな!」


 そう笑って言ったら、驚いた顔を見せてくれた。


「まぁ……。流石は蓮華お姉様のお兄様ですわ。楽しみに、させて頂きますわ」


 そう声を掛けてから、俺から離れる。


「さて、会場の皆様には3度目となる説明ですが、選手達の為にご説明致しますわね。会場の皆様方は、もう聞き流していただいて構いませんので、あしからずですわ」


 その言葉に笑いが巻き起こる。

 上手いな、と思った。

 彼女は人の心理を掴む事ができるのだろう。

 まったく、蓮華の知り合う奴らは皆何か特殊だ。

 俺が言うなって蓮華に言われそうな気もするけどさ。

 周りを見渡すと、初参加の新入生や、俺と同期の奴らがちらほらと居る。

 全員、説明を聞きながらも俺を見据えている。

 こりゃ、去年と違って一斉に俺に来るな。

 良いぜ、相手をしてやる。

 一体誰を敵に回したのか、教えてやろうじゃないか。

 皆が思い思いの場所へ移動を始めた。

 俺はここで良い。

 この闘技場の中心で。


「それでは、試合開始!」


 俺には魔力が無い。

 だけど、それイコール、魔法が使えないわけじゃない。

 いや、魔法は使えないんだけど。

 でも、魔術が使える。

 そして俺も、蓮華と同じように、全属性の魔術が使える。

 だけど、俺はその中で、特に無属性の魔術を磨き続けた。

 蓮華は大精霊の力を借りられる。

 だから、俺は属性魔法にあまり興味を惹かれなかった。

 だって、そんなものは蓮華に任せれば良い。

 蓮華なら、きっと世界一の全属性の魔法を使えるようになる。

 なら俺は、蓮華が使わない、無属性を極めようと思ったのだ。

 無属性には、様々な効果を持つ魔術がたくさんある。

 そして魔法の無属性と、魔術の無属性では、決定的な違いがある。

 魔法の無属性には、限界がある。

 いわゆる重ね掛けができない。

 だけど、魔術は違う。

 使用回数という使い方、それが魔術だ。

 その仕様故に、効果を倍加させる事ができるのだ。

 ただ、世界のマナを通す管に、連続ではなく、同時に負荷を掛ける事になる為、使い手は居ないと母さん、兄貴から聞いた。

 そんな事をすれば、管が使い物にならなくなり、魔術が使えなくなるからだそうだ。

 だけど、俺はその管が尋常じゃなく強いらしい。

 というか、母さんがそうしてくれたんだそうな。

 俺の魔術回路は、母さんと同じ。

 なのに、魔法が使えない。

 魔法の回路を、魔術回路に合成したから。

 だから、俺の管は、魔法回路と魔術回路の二重回路。

 その全ての管を、魔術特化にしてくれたんだ。

 蓮華は世界樹のマナそのものが魔力へと変換される、存在自体が化け物の魔力回路。

 ただ、魔術回路は魔法回路に統合されている。

 俺とは逆だ。

 でも、俺はそれが嬉しかった。

 蓮華とは違う道で、共に強さの上を目指せるんだ。


「ぐはぁっ!!」


 右手の剣で右薙ぎし、一人を場外へ飛ばす。


「どうした!俺は一歩も動いてねぇぞ!掛かってきな!」


 挑発したら、囲うように6人程突撃してきた。

 だけど、場所にバラつきがある。

 俺に到達する速度が違うから、近くに来た順番に薙ぎ払う。


「ぐはぁっ!」


「そん、なっ!?」


「剣筋が、視えない、なんて……」


 地面に転がる奴らを無視して、俺に更に突撃してきた奴らも斬り払う。


「「うあぁぁっ!!」」


 空へ弾き飛ばされ、場外ギリギリに落ちる。


 ドサッ!ドサッ!


 審判であるカレンが近づき、意識を確認する。


「彼らは戦闘不能ですわね。場外へ」


 係員が運んでいく。

 俺はそれを一瞥してから、周りを見渡す。

 全員、俺に攻められずに居る。

 ったく……。


「どうした?俺に勝てねぇなんて分かってたろ?相手してやる、掛かってきな!」


 そう悪役顔をイメージして笑ってやった。


「アーネスト先輩……よぉし!そうだ、俺も勝てない事なんてわかってた!行きます!!」


「俺もだ、そんな事誰よりも分かってた……!行くぜぇぇ!!」


「アーネスト先輩は魔法を使えない、なら、援護するわ皆!」


 おお、手を組みやがった。

 良いねぇ、そう来なくっちゃな!


「そこで笑うあたり、蓮華お姉様とそっくりですわ」


 カレンがそう言うのが聞こえる。

 はは、否定できねぇ。

 そうだよな、蓮華だってきっと、この状況なら楽しくて笑うだろう。


「こいやぁ!!全員ぶっ飛ばしてやるぜっ!!」


 ガン!ゴン!ゴゴン!ガガン!!


 二刀で斬り続ける。

 音はもはや叩き付けてる音だけどな!


「ぐはぁ!!」


「がぁっ!?」


「『ファイアーボルト』!!」


 吹き飛ばした二人の後ろから、魔法が飛んでくる。

 けど、避けるまでもねぇな!


「おらぁっ!!」


 右手の剣から衝撃波を飛ばし、『ファイアーボルト』を掻き消す。


「う、うそっ!?」


 と驚いている彼女に、左手の剣を振り衝撃波を飛ばす。


「きゃぁっ!!」


 直撃した彼女は場外へ吹き飛んでいった。

 次々と来る奴らを双剣で薙ぎ払っていく。


「それまで!!」


 審判の声が聞こえる。

 闘技場の上には、もう俺しか居なかった。


「予選Cブロック通過者、アーネスト=フォン=ユグドラシル!」


 ワァァァァァァッ!!


「「会長ー!!素敵ー!!」」


「「流石です会長ー!!」」


 声を掛けてくれている奴らに、手を振って応える。


「流石ですわね、アーネスト様。あれほどの戦いをされておきながら、息一つ乱しておられないなんて」


「はは、力をほとんど入れてねぇからな。ま、ウォーミングアップ程度にはなったさ」 


「まったく、蓮華お姉様もそうですが、アーネスト様も規格外なお方ですわ。追いつくのが大変ですわね」


「おう、追いかけてこいよ」


 そう言う俺に、はいと笑顔で応える彼女は、大物だと思った。

 そして、光が包み、地下に戻る。


「おかえりアーネスト。遅かったじゃないか」


「お疲れ様アーくん!」


 そう言ってくる蓮華とアリスに、笑って返す。


「蓮華と違って、一人一人倒してたんだよ」


「うへぇ、めんどくさそう……」


 その言葉に笑ってしまう俺とアリスだった。



-アーネスト視点・了-



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